
カタンの星の旅人
Die Sternenfahrer von Catan / Kosmos
一言で言えば‥‥
名作「カタンの開拓」の宇宙版がついに登場!
SFガジェットをたっぷり盛りこんだ「カタンの開拓」です
こんなゲーマーにお薦めしたい
ゲームシステムと密着した素晴らしいギミックを愛する人に
待ち時間を苦にせず宇宙探検を続けられるプレイヤーに
プレイ人数 |
4人 |
プレイ時間 |
2.5〜5時間 |
ルール難度 |
ガジェットの多いファミリーゲーム |
デザイナー |
クラウス トイバー |
入手状況 |
最新作なので現時点はOK |
ついに宇宙カタンが出た!
ドイツのコスモスが発売した「カタンの開拓」は,90年代のレジャータイムゲームを代表する作品の一つと言っても良いでしょう。カタンという未開の開拓地を舞台に,道路を引き,コロニーを建て,治安を守り,物資を交易し,人々と交渉していくゲームです。
しかも驚いたことに,このカタンの開拓の英語版は,どうしたものかオリジン賞のSFゲーム部門を受賞してしまいました。エッ,「カタンの開拓」って,SFゲームだったの?
その後,カタンの開拓はプレイ人数を増やせる大きめの開拓地を作るキットや,海を越えて島々へと版図を広げていく続編(俗に海カタンとか島カタンと呼ばれる)へと発展していきました。そして,その次の段階として予告されたのは,今度こそ根っからSF間違いなしの「宇宙カタン」だったのです。
早くから魅力たっぷりのギミックの写真が公開されるなどして待つこと幾星霜,そしてついに宇宙カタンが登場しました。
いざ宇宙の開拓地へ!

左の画像は,プレイ開始直後のものです。ボードの左上の既存植民地から4色のコロニーシップが一斉に発進しました。
「カタンの星の旅人」では宇宙植民をしなければならないため,資材を使ってコロニーを作っても,それを宇宙船で新天地へと運ばねばならないのです。
ボード上には星系ごとに居住可能な惑星が3つずつセットになっているのがわかると思います。この他に下側に5つの衛星軌道を持った巨大な星が写っているかと思いますが,これは人類以外の他の文明圏を表しています。彼らと交易をするためにこれらの軌道に衛星基地を作ることもできます。
コロニーを建てたところに隣接する惑星に数字が割り振られていて,その数字がダイスで振られると資源が獲得できます。この資源を他プレイヤーと交易することができ,指定の組み合わせになるとコロニーシップや,衛星基地などが作れます。ここらへんのところは,オリジナルの「カタンの開拓」そのままです。
ダイスの目で7が出ると,資源を多く持ちすぎているプレイヤーは半分を失うというルールもそのまま。7を振ったプレイヤーが任意のプレイヤーから資源を1枚奪えるというルールもまんまです。そういう意味では,「カタンの開拓」をやったことがあれば,随分と楽にルールを頭に入れられることでしょう。


見よ,我が造船技術!
「カタンの星の旅人」で新たに導入されたガジェットは,なんと言っても宇宙船に尽きます。
右の画像は,初プレイでわたしが勝ったときの宇宙船の最後の状態です。プレイヤー各自に最初はなんの装備もない宇宙船が配られます。
その後,資源を投資することによって宇宙船を増強することができます。宇宙船の最上部に付いている青いビーム砲は,宇宙船の戦力を増強します。わたしの宇宙船は5門を装備していて当時最強を誇りました。この装備で宇宙海賊の基地を相次いで制圧したことが勝利に直結しました。
胴体部分に銅色の装甲板が嵌め込まれています。少しわかりにくいでしょうか。装甲板は難航路の航海を可能にします。他の銀河種族との交易路の開拓には必須です。また盤上の星域内でも極寒の氷惑星を開拓するにはなくてはなりません。
その下の三脚部分についている黄色いものはエンジンです。生憎とわたしの宇宙船はゲーム終了の時代にあっては高速とは言えませんでした。こちら側から見える三箇所には増強エンジンがすべて付いていますが,反対側の3つは空のままでした。このため,わたしの宇宙船は鈍足で苦戦しました。また,ワープ航法のカギとなるブラックホール航路の航行でも重力の枷を振りきることができずワープを使いこなせませんでした。しかし,海賊との遭遇では武装にモノを言わせる姿勢でしたので,鈍足で逃げ切れないことなど何するものぞという感じでした。
ワープや海賊の話しが出ましたが,これらはイベントカードとして発生してきます。イベントカードは,交易種族,遭難船,海賊などとの遭遇として提示されます。そして,プレイヤーの選択により結果が変化していきます。その中で宇宙船のギミックを使って行動を判定するので,宇宙船の能力が重要になってくるのです。
カタンの星の旅人の難点
なにを言うにもプレイタイムが長く,特になにもすることのない待ち時間が長すぎます。「カタンの星の旅人」の難点はこれに尽きるのではないでしょうか。これを受け入られるかどうかで,このゲームをプレイすべきかどうかも決まってしまいます。
オリジナルの「カタンの開拓」は,良く出来たレジャータイムゲームでした。プレイ人数は4人で,他のプレイヤーの手番にも資源の獲得や,手番プレイヤーを中心とした交易があり,暇を持て余すようなことはありませんでした。
ところが,「カタンの星の旅人」ではガジェットが豊富になり,とりわけイベントカードの解決が入ったことで一人の手番が長くなってしまいました。また,ゲームの序盤ではランダムドローの資源が得られたり,中盤以降では植民地の増加で誰もがそれぞれの資源の産地を自前で持つようになりやすいなど,交易の必然性が低くなっています。このため,他プレイヤーの手番に,手持ち無沙汰で待つ時間が長くなりました。ゲーム全体のプレイ時間も2−3倍に伸びてしまいました。
まだ1回しかプレイしていないので断言は危険かも知れませんが,序盤のワクワク感に比して中盤以降の閉塞感が特に強いです。
序盤は資源も少なく,勝利からの距離も遠いこともあって交易も発生します。ゲーム全体の方針を夢見ることも出来,楽しい一時です。それに対して中盤以降は交易の余地がなくなり,方針転換も容易にはかないません。こうなってからが長く,決着が容易に付かないのは重苦しいものがあります。先行するプレイヤーにブレーキを掛けるバランスルールも,ともすればプレイタイムを長くする改悪にさえ見えてきます。
難点を強く指摘した上で,良い点を評価しましょう。
このゲームはオリジナルの部分部分の良さを損なうことなく新たなガジェットを積み増すことに成功しています。そして新しいガジェットもどれも個々に見れば上手く機能しています。そういう意味では,とても良く練られたサブシステムの集積体だと言えます。
唯一の問題は,それが全体としては機能していないことにあります。このゲームがオリジナルから唯一引き継ぐことの出来なかった良さは,全体としてのバランス,プレイのしやすさ,楽しさなのではないかと思います。
良いサブシステムを積み上げて行ったときに,1+1=2ですし,1+1+1も概ね3でしょう。けれども,1+1+1+1+1とか,1+1+1+1+1+1+1ということになってくると,決して5や7にはならず,却って1を割り込んでしまうこともあるのではないでしょうか。
「ゲームというものの面白さ」や,「ゲームデザインの難しさ」という本質的な考察さえも与えてくれる問題作になっていると思います。
関連ゲーム / 類似ゲーム
オリジナルのカタンの開拓もオリジン賞SFゲーム部門の受賞作ですので,当分科会の守備範囲ということになります‥‥? また、2001年に2人用の姉妹編カタンの宇宙船が登場しました。こちらはプレイアビリティが大幅に向上して広く薦められる仕上がりの佳作です。
ドイツのレジャータイムゲームの宇宙開拓ものとしては,時期を同じくしてアバカス社のアンドロメダが登場しています。
この他にプレイ中に類似ゲームとして名が上がったものとしては,AH社のマーチャント・オブ・ヴィーナスがあります。

