マイフェイヴァリット SF ア〜カ行
アイザック・アシモフ

 アシモフは中学時代に愛読した作家の一人です。
 生真面目なミステリー、正統派社会分析の50年代の代表作家でSFの生真面目でストレートな部分という印象があります。
 ロボット工学三原則で有名なロボット物の代表長編「鋼鉄都市」はSFならではの設定のミステリーです。
 もう一方の代表作、銀河帝国シリーズでは、銀河帝国の興亡の第1部「ファウンデーション」、「宇宙の小石」、長年を経て再開した第4部「ファウンデーションの彼方へ」あたりが好きです。けれども一番好きなのは番外編の「永遠の終わり」です。時間テーマの傑作で、時間線が逸脱しないように管理している組織、永遠のコントロールを終わらせ安心だけれども閉じた歴史を生きていた人類を、銀河帝国へと連なる道へ歩みださせるストーリーです。
 単独の長編としては「神々自身」も面白かったです。
BQSF_GAME
ジョン・ヴァーリイ

 ヴァーリイは高校でSFマガジンで出会ったかと思います。でも本当に凄いと思ったのは大学になって短編集「残像」を読んでからでしょう。
 テクノロジーや社会倫理の異なる未来をヴィヴィッドに描いた八世界シリーズが印象深いです。タッチはペシミスティックで、ときに切なく辛いです。セックスの描写にもテクノロジーや倫理の変化が反映されています。
 八世界の出発点ともいうべき長編「へびつかい座ホットライン」は、ハードカバーで出て学生には手が出ず文庫になるのを長年待った作品でした。閉じ込められた八世界の閉塞から突破していくストーリーです。
 「スティールビーチ」も好きですが、パラノイアに掛かったコンピューターというどこかのRPGのような設定です。
 短編集「残像」は珠玉の短編集です。八世界の様々な切り口が描かれています。
ジャック・ヴァンス

 ヴァンスは高校時代に出会ったかと思います。
 異文化、ことに不思議な響きの名詞を選び出す独特の才能は他に類を見ないでしょう。
 SFマガジンに掲載された短編「月の蛾」がヴァンスの持ち味がいちばん良く出ていたと思います。
 「竜を駆る種族」は、ヒューゴー賞の中篇で日本では独立した文庫本です。ヴァンスの異世界もので単発でまとまりの良いものです。
 「魔王子シリーズ」は長期に渡って書かれ当り外れがありますが、2巻の「殺戮機械」はまとまりの良い作品です。
 シリーズとしては「冒険の惑星」四部作が面白かったです。独特の文化を持つ幾つもの種族が住む巨大惑星の冒険で、1巻ごとに異なる種族の異なる文化が濃密に描かれます。
★ジョン・ウィンダム

 ウィンダムは小学校高学年から中学に掛けて愛読しました。
 重厚で踊らない筆致で、極めて深刻な危機を描き出します。考えさせられる作家でした。
 「海竜めざめる」は破滅テーマの巨匠といわれるウィンダムの代表作の一つです。「怪奇植物トリフィドの恐怖」よりも侵略者が明確にいる分だけわかりやすく、怪獣好きだったわたしは愛読しました。星新一さんの訳文も良かったと思います。
 「さなぎ」はミューターントもので、人類から迫害され離脱していく子供たちの冒険です。とても重い内容です。
 どちらも重苦しい危機の最後に希望の光が射したかな‥というところで終わっています。
ブライアン・オールディス

 オールディスは中学時代にであった作家です。
 多彩な作品を書きこなす器用な作家ですが、器用貧乏でなく素晴らしい作品を書ける稀有な才能です。
 世評の高かった「地球の長い午後」が文庫で出たときには感激して読んだものです。植物が動物的に進化して地球を覆った未来世界で、次から次に出てくる奇怪な植物たちにワクワクして読みました。
 「子供の消えた惑星」はタイトルの通りの状況の一種の破滅テーマです。これも重厚な展開で、最後に希望が見えるところで終わっており、ウィンダムを思わせます。幅の広いオールディスの面目躍如の傑作です。
オースン・スコット・カード

 オースン・スコット・カードは、高校生で出会った作家で、傑作短編を次々に読まされ凄い作家だなと思いました。
 人間に関する深い描写と、人間の力を超えた部分との関わりを冷徹に描く筆致で感動を呼び起こす作家と思います。
 ただ、その後、長編化、シリーズ化が相次ぐ中で、筆力は凄いけれどもSFの醍醐味である斬新なアイデアという部分は薄くなったように感じ、SF作家として凄いというより筆力の凄い作家がSF設定で書いているという感じも受けています。
 「エンダーのゲーム」は長編化された作品で、さらにシリーズ化されました。最初の短編を取りたい気もするのですが、筆力の凄みも考えて最初の長編にしてみました。
 「神の熱い眠り」はカードの原点らしいワーシングシリーズをまとめた二巻本の第一巻です。カードの筆力とアイデアのバランスが一番高いところで取れていると思います。
アーサー・C・クラーク

 アーサー・C・クラークは、中学時代に読んだ作家です。
 科学描写の丁寧な近未来ものと、哲学的な遠未来もののどちらも好きでした。哲学的な部分を併せ持っている分だけアシモフより複雑で、中学生にとっては高尚に感じる作家でした。いわゆるビッグ3の中ではいちばん好きでした。
 遠未来ものでは「都市と星」がいちばん好きで何度も愛読しました。完璧に管理されたかのような未来の都市、そこからの設計された逸脱因子、道化師。その逸脱因子をも越える逸脱となる主人公の少年。都市を越えて広がる冒険。いまでも思い出すとワクワクします。
 近未来ものはこれだというのを選びにくいのですが、「宇宙のランデブー」にしました。地球へ近づいてくる未知物体の中に潜り込む冒険です。謎はこの作品では謎のままに終わるのですが、その浪漫が壊れるのが怖くて未だにパート2以降を読めません‥(^_^;
★マイクル・コニイ

 マイクル・コニイは、このコーナーの好きな作家たちの中でも、ひときわ群を抜いて大好きな作家です。高校時代だったかと思います。
 イギリス作家らしい重厚な描写と、リリカルで甘酸っぱい青春ストーリーが組み合わせられた読んでいて泣きたくなる作家の一人です。同じような作家でここまで甘酸っぱくないのがクリストファー・プリーストなのですが、どちらも英国作家です。
 「ブロントメク!」は加藤直之のカッコイイメカで買って内容が意外だった人も多いのではないかと思いますが、上述したように海洋惑星の重厚な描写に青春ストーリーを絡めた大作です。一気に読むことができてしまいます。重厚なSF版の「たのしいムーミン一家」と言うと返って誤解を招くでしょうか?
 「ハローサマー・グッドバイ」は、青春ストーリーの側面がさらに強い普通の長さの長編です。けれども最後はしっかりとSFらしくなり、苛烈な結末と、最後の最後の希望で終わります。
まいふぇいばりっとSF サ〜ナ
まいふぇいばりっとSF ハ〜ワ