ここは隠しページで、個人的な読書ノートになっています。
2005/1〜
●20世紀SFC接続された女
中村融、山岸真
前に読んだBが抜群だったので期待したが、少し期待過剰だったかも知れない。
「接続された女」、問題作と呼ぶにふさわしい迫力ある一作だが、個人的には少しグロい気がして読んでいて辛い。
「逆行の夏」、SFマガジン時代に読んだ作品だが、当時はまだこの作品の魅力を十分に理解できていなかった気がする。短編集「ブルーシャンペン」なども踏まえて改めて読んで見ると、ヴァーリーの七世界らしさが出た佳作だと思う。
「限りなき夏」、プリーストは大好きな作家なので期待して読んだが不発。イメージだけが先走っていてストーリーになっていない感じ。
「洞察鏡奇譚」、ベイリーらしい奇想天外な話し。林檎の中に巣食う虫の世界観はこうなのかも知れない。我々の世界観もその外側から見れば似たようなものか?
「あの飛行船を捕まえろ」、ヘリウム飛行船が発展したオルタネートワールドというのが魅力的に描かれる。「クリムゾンスカイ」や、「スカイガレオンズオブマース」のイメージもあって個人的にはとても気に入った。現実が剥離していく展開も良いのだが最後は弱いのではないだろうか?
「七たび戒めん、人をあやめるなかれと」、マーティンは好きな作家なので期待して読んだが、どうも良く分からなかった。特に結末が。

●イルカの島
アーサー・C・クラーク
小野田和子
クラークの著名なジュブナイルだが今回初めて読んだ。そもそも創元文庫に収録されたこと自体を最近まで知らなかった。
クラークと言えばハヤカワの青背で「海底牧場」が出たときに読んだインパクトが強い。その後、「渇きの海」、「都市と星」、「幼年期の終わり」、「宇宙のランデブー」など幾多の傑作を読ませもらってきたが、「イルカの島」で海に帰ってきて見ると原点の出会いがまざまざと蘇ってきた。
ジュブナイルの小品で物足りないくらいのサイズなのだが、それでも楽しく読んで最後のページを閉じることができるのは、この原点の素晴らしいイメージがここにもあるからだろう。解説にもあるが海洋SFといったときに、クラークの時代から既に半世紀にならんとするのにこれに替わる作品が出てこないのは残念。日本でなら「ソリトンの悪魔」がテイストは全然違っているが海を舞台にした新しい時代の傑作だと思うがどうか。