BIZZARE レーベルについて(2)
ザッパの描いたユートピア


そもそも、私がBIZARRE レーベルにはまり、散財する事になったのも当時(85年)ミュージックマガジンで広告を見つけて、渋谷のマザーズ レコードに行ってからだ。狭苦しい店内ははっきりいってザッパ一色だった。
マザーズレコードがCISCOのとなりあたりのワンルームマンションの一室にあった時だ。見た事のないアルバムの数々がやけに眩しく目の中に入ってきた。その中でも、レコードの状態がよい、余り見た事のない白いジャケットを見ていると店長が「あー、それお勧めですよ!めったに入らないし。盤の状態もミントですよ。」と声をかけてきた。

こんな風に声を書けて来た場合、安キャバレーの呼び込みの例を出すまでも無く、大抵警戒した方がいいのだが、何故かその時は、そのレコード店の醸し出す怪しい雰囲気に騙されたのか、店長(とおぼしき人物)と しばらく雑談した後、気が付くとそのアルバム(1万円以上もした!)を購入してしまっていた。
それがZAPPEDとの出会いだった。

騙されたと思い、家に帰ってよくアルバムの中を見てみるとこれまた、見た事もないアーティストばかり。ザッパがハーブ・コーエン(敏腕マネージャー。)と組んで
1968年に設立したビザール、ストレイトレーベルのサンプラー・アルバムだったのだ。
ここから、このアルバムに収録されているアーティストのアルバムを集める為に散財生活が始まる事になる。
その内容とは、下記の通りである。
 
 
zapped 
(Side 1) 
1.Aiice Cooper/Titanic Overture 
2.Captain Beefheart And His Magic Band/ 
The Blimp 
3.judy Henske And Jerry Yester/ 
horses On A Stick 
4.Time  Backley/I Must Have Been Blind 
5.Wild Man Fisher/Merry-Go-Round 
6.Alice Cooper/Refrigerator Heven 
7.Tim Dawe/Little Boy Blue 
8.Lord Backley/Governour Slugwell 
(Side 2) 
1.Jeff Simons/Lucille Has Messed My Mind Up 
2.2.Captain Beefheart And His Magic Band/ 
Old Fart At Play 
3.The Mothers Of Invention/ 
Holiday In Berlin, Full brown 
4.The GTO'S/ 
Do Me  In Once And I'll Be Sad, 
Do Me In Twice And I,ll Know Better 
5.Frank Zappa/Wille The pimp
 
簡単に主な収録アーティストを紹介しておくと、アリス・クーパーはいわずとしれたグラム・ロックの代表的なアーティスト。ザッパの元を離れた後、本格的にブレイクする。
ティム・バックリーはシンガー・ソングライターで、かなり評価されている人である。
なんと、ザッパが発掘したらしい。エイドリアン・ブリューといい、ザッパは的確に才能を見抜く眼力がある。そして、いわずと知れたキャプテン・ビーフハート。もちろんザッパを好きな人ならば、ご存知だと思うが、もしまだ聴いた事のない人が
いたら、すぐCD屋に行って「トラウト・マスク・レプリカ」を買ってくる事。今まで、体験した事のない音楽体験を味わえる筈だ。パンクに与えた影響は計り知れず、現在もその影響力は甚大である。
現在は引退して、画家になっているらしい。詳しい事は、DIGという雑誌のバックナンバーに詳しい。ワイルド・マンフィッシャーはストリートで唄っていた人物。
そのアルバムは2枚組みだが、殆どががわめいているだけの代物。
GTOはグルーピー達によるバンド。アルバムはつまらないが、リーダーのパメラ・
デ・バレスを初め、ロックスター達との関わりが興味深い。
ジェフ・シモンズは問題の人物。200モーテルズの撮影の途中で、マザーズを脱退してしまい、 映画のストーリーまで変更させてしまった男だ。その癖、 ちゃっかりロキシーライブではバンドに復帰している。ザッパガ惚れ込んでいたから許したのか。とにかく、普通の人間だったら許さないだろうが、ここにもザッパの寛容さを感じる。(達観というべきか)。

ざっとこんな所がビザール・ストレイト・レーベルのあらましなのだが、そこに感じられるのは変わり者に対するザッパの偏愛である。特にワイルド・マンフィッシャャーやGTOは ザッパに目を付けられていなかったら日の目をみていなかったただろう 。 ダダイストザッパの面目躍如というところか。
また、ワーナーの社長、アーメッド・アーティガンの寛容な精神ゆえか。この時はザッパがある程度好きな事が出来た時期のような気がする。
敏腕マネージャー、ハーブ・コーエンの手腕もあるだろう。(奇しくも日本公演のあと、ハーブはザッパの儲けを横領した疑いで解雇された。この後、ザッパとレコード会社の長い確執が始まる事になる。)
 
ザッパはその頃周りに溢れていたヒッピー達が我慢できなかったのだろう。
ドラッグやフリーセックスや形だけの反戦行動やドロップアウト、そんなものが本当の解放か?俺ならこんなユートピアを描くよ、つまりどんな変わり者、除け者だって自分の存在を主張できる様なレーベルさ。
 
ザッパのこんな声が聞こえてくるようだ。確かに、ビーフハート、ティム・バックリーといった例外的なカルト・アーティストを除いたら、殆ど無視されているレーベル
だが、だからこそそこにザッパの実現したかったユートピアが見えてくるような気がする。アバンギャルドからグルーピーバンド、ただの変わり者までなんでもありのまるでインディーズの様なレーベル。そこにザッパは商業主義と隔絶した「ABSORUT  FREE」な世界を構築したかったのだろう。しかし、それは当然のように長く続くものではなかった。

それでは、まずGTOから話を進めることにしよう。

(次回に続く)

BACK NUMBER          BIZARRE   レーベルについて(1)