レスキュー・フロム・ザ・ハイブ
Rescue from the Hive / SPI - Ares
ショートコメント
●SPI社のSFゲームで定番ともいうべき敵役ハイブとの直接激突!
●融解された星間大使と彼の娘を奪取すべくハイブ宇宙船に乗り込む救出部隊!
The well-known enemy in SPI SF-games, the Hive should be chased by our
Heroes.
The rescue team is now boarding on Hive starship to free our ambassador
and his daughter.
published |
designed |
players |
time |
1981 |
Nick Karp |
2 |
1-2 hours |
「レスキュー・フロム・ザ・ハイブ」は、ハーフマップの雑誌付録ゲームです。
デザイナーは後にVictory Gamesで「Vietnam」をデザインするニック・カープです。ニック・カープは、システマティックで相互作用が面白いゲームをデザインする切れ者デザイナーで、個人的にはかなり評価の高いゲームデザイナーです。この「レスキュー・フロム・ザ・ハイブ」も彼の個性が良く出た作品となっています。
ゲームは、先ず両軍が互いの戦力を選ぶことから始まります。レスキュー部隊は、大使らが拉致されたことは知っているものの、敵艦の兵力を知りません。一方、ハイブ側もレスキュー部隊がどんな編成で乗り込んでくるかなど知る由もありません。この段階から既に作戦と駆引きが始まっており、ゲームを面白くしています。
ハーフマップのボードには、ハイブの宇宙船の内部が描かれています。俗称「ティン・カン」とも言われる円筒形の船内は、円周方向にループを描いて繋がっており、一端にエンジンルームとエアロック、そしてレーザーポッドが配置された構造になっています。
船内マップしかないのですが、ゲームはアブストラクトながら接舷戦闘から始まります。スペースマリーンのダーターと呼ばれる襲撃艇は、ティン・カンのレーザーポッドの射撃を掻い潜って接舷し任意の場所にブリーチングして乗り込んでいくことになります。
このときハイブ側のユニットは初期配置段階で隠蔽してセットアップされており、どこにどんな兵力が待ち構えているかも、大使らがどこに拉致されているかもわかりません。分散してブリーチして早期に捜索を終えるプランを目指すか、あるいは各個撃破のリスクを避けて集中してブリーチするかは作戦の分かれ道です。
また、考慮に入れなければならないいくつかの要素があります。ティン・カンは、ハイパードライブを持っておりワープ準備状態にあります。このため、放置しておくと人類既知宇宙を飛び出して敵の本拠地へとワープしてしまいます。そうなっては帰還は不可能となってしまいます。これを避けるためにはエンジンルームを破壊する必要があります。
もう一つの問題として、ティン・カンにはレーザーポッドが多数装備されています。これらはダーターを切り離して離脱する際に危険な存在となります。このため離脱する前に可能な限りのレーザーポッドを破壊しておくべきです。
拉致された大使と令嬢を奪回せよ!
人類が昆虫型の知的生命体ズノンと遭遇してから対話の努力が開かれた。
しかし、ズノンの過激派が対話のために送り込んだ大使と令嬢を彼らの宇宙船に拉致し、人類に対して脅迫的要求を突きつけてきた。
人類はこのようなテロリズムがペイするものでないことを実証しなければならない。スペースマリーンによるレスキュー隊が直ちに送り込まれた。大使らを拉致した宇宙船がハイパードライブ航法で彼方にワープアウトしてしまう前に人質を奪還しなければならない!

ハイブの組織と、ハイブ・クイーンのマインドコントロール
「レスキュー・フロム・ザ・ハイブ」では、ハイブの生態系が記述されています。彼らは蟻や蜂のような社会組織を持っていて、クイーンを中心に統合された意識を共有しているらしいのです。このためクイーンからの指示を受けられない状態での働きハイブや戦士ハイブは、完全な能力を発揮することができません。
こうした事情があるため、ハイブ側の配置は一定の制約を受けており、それを考慮することでスペースマリーン側も隠蔽された敵のユニットの配置について多少の推理ができます。
またクイーンは、組織を統合するための一種のヒュプノ能力を持っているのですが、これは人類に対しても一定の効果を持っています。このため、スペースマリーンのメンバーの中にもクイーンに操られてしまうものが出てきて、味方に後ろから撃たれるという最悪の事態さえ起こりえます。
また、未知の配置ユニットの中には大使らも含まれているのですが、彼らも催眠下にあるため隠蔽状態では区別が付きません。スペースマリーンは隠蔽されたユニットに対して、確認してから攻撃を行うか、いきなり攻撃するかを選べるのですが、確認していると敵を活性化してしまうことになり苦戦は免れません。けれども、助けに来た人質を撃ってしまってはもとも子もありません。
こうしたハイブのルールが、いわばこのゲームのミソであり、ゲームの接舷、捜索、離脱というストーリー展開ともあいまって、このゲームをいかにもSFアクションものらしく彩ってくれています。
ハーフマップの小品でありながら、戦力選択のバリエーションや、作戦のバリエーションがあってリプレイアビリティも高くなっています。SFアクション映画を髣髴とさせるテイストと合わせて、バランスの良い佳作と言って良いと思います。
さすがはニック・カープというべきでしょうか。

ネガティブ・コメント
雑誌の付録ゲームということで、締め切りに追われたのかも知れませんが、結構、重要な部分の記述が不足しています。
それはクイーンにマインドコントロールされたユニットの移動や戦闘の運用のしかたがはっきりとしなことです。
マインドコントロールのルールは、使い方によっては勝敗を決するほど強力なので、ここのところはしっかりしていて欲しかった気がします。
あと隠蔽セットアップ、兵力選択のゲームですので、展開によっては噛み合わなかったり、ワンサイドになったりもするのは多少、止むを得ない面があります。とは言え、相手の兵力や配置がわからないことによるドキドキの醍醐味の代償としては許すべきところでしょう。
余談になりますが、ニック・カープはもっと高く評価されて良いデザイナーなのではないかと思っています。
彼のAres誌でのもう一つの作品は、星間貿易を扱った「スター・トレーダー」です。まったく別のテイストのゲームですが、こちらでは彼のシステマティックなゲーム作りのセンスの良さがさらに冴えています。