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紋章使い −マジックマスター2−
Emblem Master -Magic Master 2- / 翔企画

一言で言えば‥‥

魔物となり自らの体に魔力を持つ紋章を身につけて戦え

かの「マジックザギャザリング」を先取りした革命的国産カードゲーム

こんなゲーマーにお薦めしたい

手軽にプレイできる魔法バトルカードゲームとして今もなお広く

国産カードゲームの歴史的メモリアル作品として研究者の方は是非とも

プレイ人数 2人〜
プレイ時間 45−90分
ルール難度 カードゲーム
デザイナー 中村 聡
入手状況 オークションをマメにウォッチするしかないか?

紋章使いの設定とシステム
紋章使いの箱
マジックマスターシリーズは、モンスターメーカーシリーズで成功を収めた翔企画の第2のカードゲームシリーズと言うべき存在になるはずだったと思われるものです。ただ、実際にはシリーズの設定などは当初の段階ではどちらもなかったようで、割と自由に個々の作品が出版されていったと思われます。

マジックマスターの名を冠した第一作「マジックマスター」と、「マジックマスター3」とは、一連の翔企画のモンスターメーカーシリーズ的なタッチのカードゲームに仕上がっています。ところが、「マジックマスター2」の副題を持つ、この「紋章使い(エンブレムマスター)」は、雰囲気もイラストもデザイナーもゲームシステムも全然ちがうものでした。具体的には、ホラー的なタッチの魔物の対決ゲームに仕上がっていて、イラストも市川みなみさんのおどろおどろしいものでした。

「紋章使い」では、各プレイヤーは、「忌まわしき者」と呼ばれる魔物となります。そして、他の魔物と戦って生き残ることを目指します。この魔物は、それ自体ではたいした力を持っていません。そこで、混沌の輪と呼ばれる実体に憑依することで実際的な力を得ます。さらに、魔物は(原則として)2つの印を持っており、ここに紋章を刻むことで特定の力を得ることができます。

プレイはプレイヤーターンを順に繰り返すことで進みます。そこでできることは、大雑把に成長、呪文、魔物の力の行使です。成長とは、混沌の輪に憑依したり、紋章を追加したりすることです。その後、呪文という魔物本体の紋章とは別に、呪文カードを唱えることで使う呪文の手番があります。最後に、紋章の力を発揮することで攻撃などを行うフェイズがあります。

忌まわしき者の実例
魔物の実例1
実例を挙げた方がわかりやすいかと思うので、画像を見ながら説明していきましょう。
中央が本体である忌まわしき者です。この例では、「獣」という混沌の輪に憑依しています。これらのカードに記載されている数値は、左から「体力・回復力」、「肉体攻撃力・肉体防御力」、「魔法攻撃力・魔法防御力」です。
「獣」は、あまり良い憑依対象ではありませんが、それでも各パラメーターが少しずつ元よりあがっています。
魔物は二つの印を左右に持っているとされ、そこに紋章を刻んでいきます。
この例では左側に「ペガサスの紋章」を刻んであります。この紋章は、魔物のパラメータを上昇させる働きを持つものの一つです。赤字であるのは、魔法系パラメータを変更することを意味しています。X+1とは、攻撃+1です。F+2は、防御+2です。紋章は、同系列のものだと継ぎ足すことができます。継ぎ足した場合には、2枚目以降の紋章は、括弧の内側の数字の能力と見なします。つまり、もう一枚ペガサス紋章を付けると、2枚の合計でX+1、F+3になるということです。
右側は攻撃能力をもたらす「咬み砕く紋章」です。黒字ですので肉体攻撃であり、D2とあるので攻撃が成功すると2ダメージを与えることになります。さらに、混沌の輪「獣」と、「咬み砕く紋章」は相性が良く(混沌の輪の下に説明があります)さらに+2が加わるので4ダメージとなります。
この先に紋章を継ぎ足してあるのが「バシリスク紋章」です。画素数の都合で見にくいのですが、ダイスの2の目と比較記号がついているのがわかるでしょうか? この紋章は毒を与える紋章で、攻撃が成功したときにダイスを振り、2以下が出ると追加の5ダメージを与えるというものです。もしここまで成功すると、一発で9ダメージが入りうるということになります。この獣の毒牙攻撃は侮りがたいものがあります。
魔物の実例2
もう一つ実例を挙げて紋章の多様性を示しましょう。
左の魔物は、「虫」という混沌の輪に憑依しています。どうもどこかのアニメで見たようなもので、ここらへんが制作年代を感じさせます。この「虫」は攻撃防御こそ特に取り柄はありませんが、巨大であるため体力に自信があります。また大きいため印を3つ持っています。
左の印は、「夢魔の紋章」で相手を眠らせて行動不能にする攻撃を与えてくれます。右の紋章は「一角獣の紋章」で毒に対する耐性を与えてくれます。これさえあれば、前述の獣の毒牙効果は受けずに済みます。
下の印はややこしくて、まず「キメラ紋章」が付いています。これは印の追加紋章です。ですから、「虫」はもともと3つ印があるのですが、さらにもう1つ加えて4つ印を持てる状態です。ですから、この魔物はさらに上側にも印を持っており、まだ新たな紋章を刻んで成長することができます。
この下の追加印に「燭天使紋章」が刻まれています。これはすべての魔物に劫火により毎ターン2ダメージを与える不思議な紋章です。普通は自分も食うので良くないのですが、体力に自信のある「虫」の場合は、他の魔物が先に倒れることを期待して諸共に焼かれていくのも作戦なのです。いわゆるコンボになっているわけです。

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呪文の実例とマジックとの類似
呪文カード
魔物同士の攻撃は主として紋章により行われます。しかし、こうした直接的なものとは別に、独立したカードとして呪文カードがあります。これらは手札から直接プレイして、その瞬間に効果を発揮します。
いちばん左側は、「白銀の癒し手」で、体力の全回復呪文です。次は「言霊狩り」で、他プレイヤーの呪文が発動した瞬間に唱えて、それを無効化するものです。三番目の目玉みたいなのは、「賢者の夢」で山札から10枚を取って、好きな1枚を得るものです。最後は「紋章喰らい」で、他社の紋章をまるごと奪ってしまうものです。

ここらへんまで説明すると、このゲームがトレーディングカードゲームというジャンルを生み出した後年の大ヒットゲーム「マジックザギャザリング」と良く似ていることに気づくのではないでしょうか?

「マジック」では、魔法使いがクリーチャーを召還し、インスタントスペルを唱え、エンチャントを掛けあって互いの本体を攻撃し合います。
それに対して、「紋章使い」では、紋章を刻み、呪文を唱え、混沌の輪をまとって互いの本体を攻撃し合うのです。
様々な能力のカードが飛び交うところも良く似ており、組み合わせにより必殺力の高い戦術が生まれたり、相手の技を切り返するところが醍醐味なのも良く似ています。

こうした優れた先達が日本の国産カードゲームにあったことは、記憶に残して置くべきことでしょう。

もちろん「マジックザギャザリング」は、「ギャザリング」の名の通り、トレーディングカードゲームという新しい仕組みを作りだして、デックを構築するという面白さを、さらに付与しています。「マジック」は、「紋章使い」と類似したテイストを持っていますが、さらに新しいものを持っていたわけで、「紋章使い」の存在でその意義が小さくなるものではありません。

紋章使いの難点

「紋章使い」は,とても面白いゲームで、これと言って難点を挙げる必要はないかと思います。とは言え、どうやらこの分科会の売りは「辛口」であることだという噂もあるので、恒例に従って。

問題点は、こうした特殊能力がぶつかるゲームに共通の問題として、能力の判定順番や、効果同士の矛盾の話しがあります。これは「マジック」の初期ヴァージョンでも深刻だった問題ですから、デザイナーを責められないでしょう。

もう一つの大きな問題は、入手困難だということでしょう。最近、往年の国産ボードゲームが復刻されるようなムーブメントもあるので、このゲームあたりも復刻されて欲しいものです。今なら、トレーディングカードというジャンルがもたらした、「特殊効果のタイミング整理」や、「術語のきちんとした定義と解釈」というノウハウが生かされ、よりコンフリクトの少ないプレイができるものにレヴェルアップできるでしょう。
もちろん当時よりカードの種類を増加させたいところですね、もし実現するとすればですが。

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関連ゲーム / 類似ゲーム

マジックマスターは、タイトルこそ繋がっていますが、内容的には関係ないかも知れません。
むしろ、このゲームより以前の類似のコンセプトとしては、イルミナティの方が近いかも知れません。本体の周りにカードを付けていくところなどは、近しいものがあります。
後年のゲームとしては、
マジックザギャザリングは、いろいろな意味で比較してみたくなるところでしょう。

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