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操り人形
Ohne Furchtund Adel / Hans im GlueckI


一言で言えば‥‥

王国の要職にあるものを操って己の利益のため建物を建築する

百鬼夜行の戦略マルチ,疑心暗鬼の傑作カードゲーム

こんなゲーマーにお薦めしたい

駆け引きと読み合いのマルチプレイヤーズゲームが好きな方に

プレイアブルなマルチプレイヤーズゲームを探している方に

プレイ人数 3−7人
プレイ時間 1−3時間
ルール難度 カードゲームとしては難しい方だが,マルチとしては機能的でシンプル
デザイナー ブルーノ ファイドゥッティ
入手状況 ドイツゲーム大賞ノミネートの最新作で今なら入手容易

操り人形の設定とシステム
操り人形のボックス
一見平和に見え,建設の槌音も高い新王国。しかし,その裏側では己の私腹をこやすため,王国の重要人物を操って自らの権益を拡大する施設ばかりを建設しようとする貴族たちの陰謀が‥‥。

「操り人形」は王国の重要人物を操って己の利益を拡大する一種の政略マルチです。しかし,そのシステムは非常にスマートなカードゲームで形成されていて,ボード上の陣取りをするマルチに慣れた人にとっては,いささか面食らうかも知れません。

ゲームの目的は,早く多くの価値ある建物を建築することにあります。けれども,そのためには資金を集め,良い建築計画を練り,それを実行に移していかねばなりません。こうした作業の様々な部分に影響力を持つ8つのポストが王国にはあります。

プレイヤーは毎ターン,そのいずれかのポストを操ることで自身の権益を拡大し,他者の権益を制限しようと暗躍します。このときにポストの選択は,前ターンに国王であったプレイヤーから順に,選んでいき残りを次のプレイヤーに渡していきます。したがって上流のプレイヤーは良いものを選べます。逆に下流のプレイヤーは残ったものから上流のプレイヤーの選んだものを推測できます。と同時に上流プレイヤーも渡したものから下流プレイヤーが取るであろうものについて,一定の推理を巡らせます。誰が何のポストを操っているのか,毎ターン,状況は変化し,疑心暗鬼のプレイが続いていきます。

1番目のポストである暗殺者は,他のプレイヤーの操るポストを暗殺することで,そのプレイヤーの今回の手番を休ませてしまう強力な妨害ポストです。けれども,彼が指名するのはポストであってプレイヤーではないため,必ずしも思ったプレイヤーを暗殺できないかも知れません。

2番目のポストは盗賊で,他のプレイヤーの資金を奪い取ってしまいます。ただし,彼もまたポストを狙うのであってプレイヤーを直接指名するのではありません。また指名したポストを誰も選んでいなければ,なんの収穫もなくなってしまいます。
操り人形のカード
3番目のポストは魔法使いです。他のプレイヤーを直接指名してお互いの手札をまるごと交換してしまいます。相手の良い建築計画を奪い取ることができ強力です。プレイヤーを直接指名できるので取りはぐれがありません。その一方で,自分の手札が良いときには頭の痛いポストです。自分で使っても役に立ちませんが,他の人にこのポストを取られて交換されてはたまりません。

4番目のポストは国王です。国王は次回のポスト選択で最初にポストを選択することができます。また,金色のマークの王家の建物から余分の収入も受け取れます。

5番目のポストは司祭です。青色の寺院などの建物から余分の収入を受け取ることができ,神のご加護により建物を破壊されることがありません。

6番目のポストは商人です。常に余分の収入を受け取ることができ,青色の商業建築物からも余分の収入を受け取ることができます。もっとも資金的メリットの大きいポストですが,それだけに暗殺者や盗賊の的にもなりやすく,ハイリスクハイリターンのポストかも知れません。

7番目のポストは建築家です。建築家は建築計画のカードを余分に引くことができ,さらに他のポストでは1ターンに1つしか建物を建てられないのに3つまで建てられるという能力があります。資金が既に十分にあるのなら,それを勝利得点に結びつく建物に換えるための最適ポストでしょう。ゲーム終盤の重要ポストですが,資金が足りない序盤では貧乏ポストです。

8番目のポストは傭兵です。赤いマークの軍事建築物から余分の収入を受け取れるほか,任意の建物を一つ破壊することができます。ただし,弁償金を払わねばなりませんが。ゲーム中に発生した強力コンボを崩したり,ゲームの終了のタイミングを遅らせることができれば,弁償金を払ってでも破壊したい建物というのはあります。

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操り人形の長所とプレイ

「操り人形」は,今年行われたドイツゲーム大賞(1999年度分になります)の最終選考まで残った話題の新作です。新作の導入が早いゲームサークルから「面白い!」という声が入ってきてB級SFゲーム分科会でも導入してプレイしました。

その感想は,「なるほど面白い!」でした。往々にして世評の高いゲームというのは,それゆえに期待しすぎて不発になりがちです。しかし,この「操り人形」はそんなことはなく期待に応える傑作でした。

このゲームの良いところは,プレイアブルであるということと,複雑なジレンマがありプレイヤーの思惑が錯綜するということが鮮やかに両立しているところにあります。プレイアブルなゲームは往々にして抽象性が高く,ジレンマも単純になりやすいものです。その一方で,様々なガジェットを取りこんで複雑なジレンマを形成したゲームというのは,なかなかプレイアブルというわけには行きません。

ところが,この「操り人形」では8つの性質のまったく異なるポストというガジェットを取りこんでいながら,その選択は単純に国王から順に選ぶだけ,プレイにあたってもポストに振られた番号順に通常の手順+そのポストの特殊能力を実行するだけという単純さを実現しています。

良くできていると思うのは,この選択について上流側には上流側の,中流側には中流側の,下流側には下流側の悩みがあることです。最初にポストを選べる国王は好きなものを選べますが,その一方で国王以外のポストを選ぶと次回は最初に選ぶ権限を放棄することになります。なまじっかどのポストでも選べるだけに,これもやりたい,あれもやりたいという正対正のジレンマに悩むのです。

中流のプレイヤーになると上流から流れてきた残りポストを見ると,上流プレイヤーが取ったポストの見当がつきます。そうすると,そのプレイヤーが何を狙っているかもわかります。上流で暗殺者や盗賊がなくなっているとなれば,そのターゲットになりそうな有力ポストは残っていても取るのはリスキーです。中流のプレイヤーは上流から流れてきたポストと,下流へ流すポストが見えるため,誰が何のポストについているか(あるいはつきそうか)の情報がもっとも多くなります。それゆえに考えることが多く情報過剰によるジレンマに悩むのです。

下流のプレイヤーはある意味で気楽です。選択肢は限られており,少ない中から「これだけはやりたくない」というポストを除けば自然に決まってしまいます。情報量が少なく考えやすいでしょう。だからと言って不利かというとそうでもないようです。わたしたちのプレイでは利害が衝突して足を引っ張り合う選択順位が上のプレイヤーの間隙をついて,マイペースで進んでいく下流のプレイヤーという構図がしばしば見られました。

わたしたちのところでは,6人でプレイしたのですが,これは非常に良い人数のように思えました。ポスト選択にあっては不確定情報を作るために,最初の国王が選ぶ前にランダムに1枚を抜いてしまうのですが,6人だと,最後に下流でも1枚余ります。このため,上流側のプレイヤーも下流側のプレイヤーも未知数な情報を一定程度もちあうことになったからです。7人だと,下流ではカードを使いきるため,プレイヤーは下流に流したポストは必ず誰かが持っていることを知ってしまいます。そうすると,暗殺者や盗賊にとっては外れることが少なくなり,雰囲気もバランスも作戦も変わってくるように思います。

まだ1回しかプレイしていませんが,今後もプレイする定番ゲームになりそうな予感がします。プレイ人数が変わったときにどうなるのか興味津々です。

いずれにせよ今年(2000年)日本に入ってきたゲームの中でも白眉であることは間違いないでしょう。

関連ゲーム / 類似ゲーム

それぞれやることの違うポストを割り振っていくゲームとしては,SFゲームではありませんが,いくつか思いつきます。

FULL-NELSONブランドの
ザ会社は人事部長,製造部長,営業部長,経理部長,研究部長のポストを割り振って一つの会社を運営しながら次期社長を目指すゲームで,作りが良く似ています。ただし,雰囲気は会社RPGのようなので全然ちがいましたが。

AH社の
クレムリンとその拡張キットレボリューションは,旧ソヴィエトのクレムリン内部での政治闘争を描いたゲームで,自分の派閥の息のかかった人間を書記長にするゲームです。ポストごとに内部での政治的暗闘での権益が異なっていて,書記長が変わると下部の重要ポストを自分の手下で入れ替え,ライヴァルを閑職に追いやってストレスを掛けて潰していくというゲームでした。

この他にファンタジーの王国での権益闘争を扱ったゲームとしては,AH社の
ダウンウィズザキングがあります。未プレイなので詳細は不明です。

他にはウェストエンドゲームズの
JUNTAが陰謀渦巻くバナナ共和国での私腹をこやしあう政治闘争のゲームとして,ちょっとテーマ的に近いかも知れません。

また同じ作者の新作
フィストオブドラゴンストーンズが手軽で近いテイストの佳作です。

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