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イゼルローン要塞
Iserlohn / Tsukuda


一言で言えば‥‥

銀河英雄伝説,帝国対同盟の雌雄を決する戦いへの序曲

冷静沈着なロイエンタールの大艦隊を迎え撃つ伊達と酔狂の第13艦隊

こんなゲーマーにお薦めしたい

銀河英雄伝を好きで,その一つ一つの会戦に思い入れのある方に

手軽な入門用のSFウォーゲームとして銀英伝ファンを勧誘するのに

プレイ人数 2人
プレイ時間 1〜4時間
ルール難度 平明な戦術級ウォーゲーム
デザイナー 加藤 伸郎
入手状況 売れ残り流通在庫を探すことに

イゼルローン要塞の扱う戦い
イゼルローンのボックス
田中芳樹の大河SF「銀河英雄伝説」。その作品世界で,帝国と同盟の間を結ぶたった2つの宇宙回廊。

その一方には中立勢力フェザーンが位置しており,両軍が対峙する唯一の最前線はイゼルローン回廊でした。その回廊に位置する帝国の無敵の要塞。それがイゼルローン要塞でした。この無敵の要塞を計略を用いて奪取したのが同盟軍の魔術師ヤン・ウェンリーです。

もう一方の帝国において旧勢力たる貴族をリップシュタット戦役で一掃した若き天才ラインハルトは,ついに同盟と最後の雌雄を決することを決意しつつありました。

そのため,彼はまず配下のケンプ,ミュラーの両将軍に帝国のガイエスブルグ要塞を機動化して与え,イゼルローンに対して挑ませます。このときの戦いの一つが本ゲームの最初のシナリオ「はばたく禿鷹」です。

結局,ケンプの試みは失敗に終わりますが,ラインハルトはこれに落胆することもなく,さらに大規模な作戦を展開します。それは,イゼルローンを攻めると見せ,その状況の膠着に投入する増援をイゼルローンでなくフェザーン回廊へと送りこむというものです。

この第一段階のイゼルローン要塞への膠着することを折込済みの戦いを指揮するのは,冷静沈着,常に正確無比の指揮を誇るロイエンタール将軍でした。この「ロイエンタール対ヤン」の戦いが,本ゲームの第2のシナリオになります。

この戦いは,予定通りに決着のつかぬままに進みます。状況にいらだったロイエンタール指揮下のレンネンカンプ将軍は,単独での出撃を求め許可されます。しかしながら,彼の一矢乱れぬ艦隊行動の鮮やかさも,伊達と酔狂で戦う第13艦隊のアッテンボローの楽をして勝とうという策にはまってしまうのでした。これが,最後のシナリオ「アッテンボローの罠」になります。

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ロイエンタール対ヤン
ヤン対ロイエンタール1
左の画像は,メインシナリオ「ロイエンタール対ヤン」の第1イニング終了時の状況です。ちなみに全部で6イニングまでプレイされます。

このゲームでは,艦隊指揮官の名称の入ったチットをランダムに引いていき,その艦隊が行動できます。いわゆる「チット引き」システムです。チットの中に「イニング終了」というチットがあり,これが引かれると突然イニングが終わってしまいます。

画面右下が引かれたチットで黒いものがロイエンタールのチットです。帝国軍は画面の左下側から右上のイゼルローンへと進行しています。左翼がロイエンタールの青色の艦隊,右翼がルッツの水色の艦隊,そして後方に紫色のレンネンカンプ艦隊が位置しています。

最初のチットでロイエンタール艦隊は前進し,第13艦隊の右翼(帝国軍から見て左側)の薄緑色のアッテンボロー艦隊に接敵しました。次のチットはイゼルローン要塞のチットでした。要塞は長射程砲トールハンマーを擁していますが,味方艦隊が邪魔でなにもできません。そして,3番目に白い「イニング終了」のチットが引かれて,呆気なく第1イニングは終わってしまいました。
ロイエンタール対ヤン2
次の画像は第3イニング終了時のものです。右側に並んでいるチットを見るとわかりますが,第3イニングは逆に長い長いイニングでした。

両軍は激しくぶつかり合っています。右側ではルッツ艦隊と同盟のフィッシャー艦隊が全面衝突しています。フィッシャー艦隊がやや優勢で,この優位を拡大すべく第13艦隊旗艦ヒューベリオンを中心とした本体も中央を前進してきています。

一方,帝国左翼のロイエンタール艦隊は,前面のアッテンボロー艦隊を粉砕することに,ほとんど成功しかかっています。

帝国のレンネンカンプ艦隊は,いったんルッツ艦隊の右側を抜けようとしたのですが,イゼルローン回廊は狭すぎて抜けきれず,再び中央に戻って第13艦隊主力を受け止めています。
ロイエンタール対ヤン3
最後の画像は,ゲーム終了時のものです。アッテンボロー艦隊は壊滅してしまいました。ロイエンタール艦隊は,同じ青色で見分けにくいのですが,ついにイゼルローン要塞本体と撃ち合っています。イゼルローン要塞のトールハンマーが先に火を吹き,ロイエンタール艦隊の戦力の1/3を撃破,敗走させました。

ロイエンタールは無敵の要塞に挨拶代わりにボディブローを見舞ってやろうかというところでしたが,無念にも3枚目で呆気なく「イニング終了」が引かれてしまいました。

損害の大きさで最後のトールハンマーの先制が効いて同盟郡が勝利を収めました。ロイエンタール艦隊は史実同様,冷静にトールハンマーの射程外で戦うべきだったかも知れません。

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イゼルローン要塞の難点

「イゼルローン要塞」は,手軽でプレイアブルなゲームです。メインシナリオの「ロイエンタール対ヤン」でさえ,不慣れでも4時間ほどでプレイできました。

ただ,その一方で食い足りないところがあるのも事実です。イゼルローン回廊の戦いという題材上の宿命もあるのですが,銀英伝らしい大艦隊同士が展開しての戦いになりません。ルール的にも上級ルールでさえ,本格派のウォーゲーマーであればフラストレーションを感じるでしょう。そして,銀英伝ファンであれば,将軍の評価付けやユニットの評価付けに,それぞれの異論があるところでしょう。

個人的には,上級ルールの戦闘比システムではスタック効果が強すぎ,それ故に防御スタックのユニットを分割して射撃できる集中射撃能力が強すぎるように思いました。

また,トールハンマーの射程が他の宇宙艦と同程度というのも気になりました。私見ですが,射程をもう少し長くしてアウトレンジできるようにし,その代わりに巨大な砲ゆえの鈍重さの再現としてチット枚数を減らした方が良いのではないかと思いました。

とまれ,シンプルなルールのゲームであり,そうした各プレイヤーの意見を入れて改造する余地が十分にあります。そういう意味では,ローカルルールや,ユニットの改造/追加まで視野に入れて,銀英伝ファンとしてプレイして遊んでみて良いゲームであるという気はします。

関連ゲーム / 類似ゲーム

このシステムはシリーズになっており,他に
「アスターテアムリッツア会戦」「リップシュタット戦役」「ヴァーミリオン会戦」があります。上述したように,ルールやユニットの改造/追加まで視野に入れた上で,銀英伝の幾多の会戦を再現してプレイしたい方には貴重な作品群でしょう。

ツクダの銀英伝のブックケースゲームとしては,この他にも戦略級の「ラグナロック作戦」や,筆者未見のため内容不明ですが「ブリュンヒルト」などもあります。

この他にも,小説の出版社である徳間書店から出ていたカードゲームの「銀英伝カードゲーム 帝国の進撃」や,ゲームジャーナル誌の付録ゲーム
「戦略級銀英伝」などもあります。

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