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銀河英雄伝説 帝国の進撃
Die Operation Ragnaroek / 徳間書店


一言で言えば‥‥

銀英伝最大の山場,帝国の同盟領への大侵攻作戦を再現

魔術師ヤンの神出鬼没に怯えながらも帝国諸将は進撃を続ける!

こんなゲーマーにお薦めしたい

銀河英雄伝説をこよなく愛する貴方に是非!

シンプルなシステムの向こうに,原作の大河浪漫を感じられるプレイヤーに

プレイ人数 3−6人
プレイ時間 30分〜45分
ルール難度 初級カードゲーム
デザイナー らいとすたっふ
入手状況 店頭で見かけなくなった

銀河英雄伝説 ラグナロック戦役の状況
帝国の進撃ボックス
「銀河英雄伝説」は,銀河の未来史を描いた田中芳樹の大河SF小説です。銀河は,皇帝をいだく帝国と,共和制の同盟とに二分されています。この2大勢力に同じ時期に軍事的天才が登場して歴史を大きく動かします。

世襲制の皇帝を自らの才覚で廃して新皇帝となったラインハルト フォン ローエングラム。彼は戦略的優位を築いてから戦いを仕掛けることに長け,いつも戦果を収めて立身出世を果たし常勝のまま帝位にまで登りました。

一方のヤン ウェンリーは,歴史を趣味とした道楽人に見えて,いざ戦場で状況が彼の才能を必要とすると,綿密な洞察で敵の作戦と心理を看破し,その虚をついて最小の出血で最大の戦果を上げ魔術師と呼ばれ,本人にとっては不本意ながら軍の最重要の地位に登りました。

そして,ついに両雄は互いの勢力の軍事的トップとしてぶつかり合うことになりました。それがラグナロック戦役です。

圧倒的な兵力を持つ帝国は,諸将のもと同盟領を深く深く進撃していきます。これに対して同盟の頼むヤンは広大な同盟領を使ってのゲリラ戦で帝国諸将を撃破して抵抗します。

皇帝と帝国諸将
諸将
このゲームでは,プレイヤーは全員帝国側となります。帝国の将として,誰が同盟首都ハイネセンを先に制圧するかを争うのです。

いちばん左側は,若き皇帝ラインハルトです。金髪をなびかせた豪奢な美青年で軍事的天才であるだけでなく,帝国のあるべき姿について理想を描いており,良君としての資質を持っています。彼も万能ではなくその欠点を補える友人がいたのですが,惜しくもこのラグナロック戦役の前に彼を失っています。

その隣の二人は帝国の双璧と呼ばれる二人の上級大将です。左側のロイエンタールは,左右色違いの眼を持つ冷徹な将です。その指揮は派手さや奇をてらったところがなく地味に見えますが,自身のことさえも徹底的に客観的に判断する冷静さで誤るということを知りません。右側のミッターマイヤーは,熱血気味の愛妻家の青年将軍です。疾風ヴォルフと呼ばれ,敵も味方も驚くほどの機動は,しばしば敵の作戦計画を白紙に戻し,味方の戦略的優位を作り出します。

こうした帝国諸将のカードは残念ながらデックの中からランダムに引かれるので,この内の特定の誰かを演じてプレイするという訳には行きません。しかし,彼らは帝国艦隊を束ねて有効に働かせる役割を担っており,ゲーム中で重要な存在です。

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帝国の進撃のシステム
進撃
このゲームは,カードゲームで良く用いられる俗に言うミルボーンシステムを採用しています。ミルボーンというのは,レーシングカードゲームで,走行距離カードを出して進みながら,互いに他のプレイヤーに対して妨害カードを出し,その妨害を排除しながらゴールを目指すものです。

この帝国の進撃では,プレイヤーは帝国の一方面艦隊となり,進撃カードを出して光年単位で進んでいきます。他のプレイヤーから妨害カードとして同盟艦隊が送りこまれてきますので,これを撃破して前へ進みます。もし同盟艦隊に敗北すると,進撃カードを失って後退することになります。この時に,進撃過程で星系を確保していると,星系に撤退することでそれ以上の後退をしなくて済みます。つまり,拠点確保の効果があるのです。

いちばん右のカードは工作カードと呼ばれる特殊なカードで,この場合は皇帝の軍事参謀であるオーベルシュタイン将軍の命令で他のプレイヤーを転進させ最短距離を進ませないようにしてしまうものです。

ヴァーミリオン会戦は再現されるか?
決戦
このゲームは基本的には光年をためていくゲームで地味なゲームです。これを銀河英雄伝説のラグナロック戦役のゲームたらしめているのが,敵将ヤンの存在です。いちばん左がヤンのカードで,これはヤン艦隊発見というカードによってプレイヤーの前に忽然と立ちはだかります。その戦力20というのは,帝国の各艦隊を撃破するにたいていは十分な艦隊で,帝国諸将を演じる各プレイヤーは史実同様に魔術師ヤンの前に痛い目に合うことになります。

これと戦うために帝国艦隊のカードがあり,それに対する戦力修整として諸将のカードがあります。ヤンの右にいるのは,ラグナロック戦役の決定的な場面であるヴァーミリオン会戦でヤンを皇帝から救った鉄壁ミュラー将軍です。先に紹介した皇帝や上級大将と異なり数字が括弧付きになっているのは,その指揮修整が一艦隊だけにしか適用されないことを表しています。皇帝や上級対象の指揮修整は率いている全艦隊のそれぞれに適用されるので大きいのです。しかしながら,ミュラーの+3というのもかなり高い評価です。

最後のカードは工作カードの一つで,同盟の腐敗した指導者トリューニヒトによる同盟艦隊への追撃中止司令です。史実では,帝国諸将を各個撃破して最後に皇帝の首に手が掛かるところまで来たヤンが,勝者となることを阻んだのは同じ同盟の最高指導者でした。このゲームでもトリューニヒトは同じ役割を担っており,それは帝国諸将の役を果たすプレイヤーたちにとっては,他力本願ながらもヤンの脅威を取り除く最善の手段となっています。

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銀河英雄伝説 帝国の進撃の難点


小説が完結してから久しく,これを元にしたヴィデオも完結してかなり経ちます。出版元である徳間書店の事情もあって,小説,ゲームともに店頭で見かけなくなりました。

実を言うと,わたし自身,レンタルビデオでビデオ版をすべて見ていますが,原作小説も,このゲームも持っていません。わたしがビデオを見て気に入ったという話しをしたところ,ゲーム仲間の友人のYさんが,このゲームを教えてくれたのです。この紹介に使ったセットも,Yさんのセットをご厚意でお借りしました。

この場を借りてお礼もうしあげたいと思います。ありがとうございました。

このゲームは,銀河英雄伝説のラグナロック戦役の雰囲気をとても良く捉えていて紛れもなく傑作ゲームと思います。小説やヴィデオでラグナロック戦役に造詣の深いプレイヤーなら,プレイしていて一人一人の将軍,一枚一枚の特殊カードに思うところがあるのではないでしょうか。

しかし,その一方で,基本的にはミルボーンという比較的汎用のカードゲームシステムを使用したゲームであり,原作とのマッチングの良さという要素を取り除いたときにゲームとして斬新さがあるわけではありません。

そういう意味では,原作のこの戦役に造詣の深いプレイヤーが減ってくるということが,今後のこのゲームが楽しんでもらえる機会をも減らしてしまうのではないでしょうか。そのことがこのゲームの最大の難点でしょう。ただし,ゲーム自体も姿を消しており,この難点がその売れ行きに響くことは幸か不幸かないでしょうが‥‥。

関連ゲーム / 類似ゲーム

「銀河英雄伝説」は,人気のある作品だったので,ゲームもそれなりに作られています。

その中でも比較的あたらしいものとしては,GJ誌の付録ゲームとして出版された
「戦略級銀英伝」があります。これは,付録ゲームのみで最近も復刻されたのでもしかするとまだ手に入るかも知れません。

そのほかにはツクダからいくつかゲームが出ていました。その中では,このゲームと同じ戦役を扱った
「ラグナロック」が比較的評判が良いようです。会戦級のゲームとしては,「ヴァーミリオン会戦」「イゼルローン要塞」が,この戦いの個々の会戦を扱っています。

また,ミルボーン系のシステムのゲームでB級SFゲーム分科会的なものとしては,翔企画の「モンスターメーカー」が挙げられます。

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