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ソーサラー
Sorcerer / SPI


一言で言えば‥‥

6つの色の魔法がぶつかり合う世界での魔法使いの戦い

シンメトリックでエキセントリックなゲームシステム

こんなゲーマーにお薦めしたい

ゲームシステム自体が何を語ることができるかに関心を持つゲーム研究家に

サイモンセンという存在を理解するための重要な手がかりとして

プレイ人数 1−6人
プレイ時間 1時間〜
ルール難度 シンプルだが非常に特殊なウォーゲーム
デザイナー レドモンド・サイモンセン
入手状況 海外中古ゲームショップを当たられたし
ソーサラーのボックス
ソーサラーの設定

「ソーサラー」は,6つの色の魔法がせめぎ合う世界を舞台にしている。そこでは,人々のほかに,それぞれの色の魔物が行きかう。色の魔法をよくすることを覚えた魔法使いは,それぞれの色の魔物を召還して操ることを始めた。

やがて魔法使い同士の力の争いが起こり,各色の魔法がぶつかり合う戦いが繰り広げられていくようになった‥‥。

「ソーサラー」は,独自の世界設定を持つ異色のファンタジーゲームです。色と色とがそれぞれの属性を持ってぶつかり合うというと,中国の五行思想や,近年だとトレーディングカードゲーム「マジックザギャザリング」を思わせます。

しかし,このゲームの6つの色はシンメトリックな力関係を持っているだけで,それぞれの個性付けがされていません。そのため,「マジックザギャザリング」のような白は裁き,黒は死,赤は破壊,緑は生命,青は風水というような豊かな個性付けはありません。そのため,シンメトリシティをどう運用するかを考えるプレイは,ファンタジーというより数学や物理の問題を解いている印象を与えます。

最初の魔法使いペリアングレンの学びの旅
ペリアングレンの学びの旅
このゲームには,ソロプレイシナリオから,二人対戦シナリオ,さらにマルチプレイシナリオまで豊富なシナリオが用意されています。この流れはそのままソーサラー世界の魔法史をなぞっています。

左は,最初のソロプレイシナリオ「ペリアングレンの学びの旅」のプレイ結果の画像です。始めて色の魔法を使うことを身につけたペリアングレンの力は,後世の魔法使いに比べるとごくごく限定されていました。彼の力は緑の悪魔を一匹だけ呼び出すことができたに過ぎません。

彼はこの力を利用して多くの色がせめぎ合う世界へと学びの旅に出ました。この世界の限られた場所に,どの色の魔法も使えない灰色の土地があり,そこに人々の住む街があります。この世界にあるすべての灰色の街を旅することで,ペリアングレンは世界の姿を学び取ろうとしたのです。

プレイは,緑の魔法使いペリアングレンと,従者たち(人間の歩兵)だけで始まり,世界を旅する中でランダムに彼らの周囲に各色の魔物や,竜巻が登場して行く手を阻みます。

画像の左下がペリアングレンの生地です。画像は,ここを出発してすべての灰色の都市を訪れ再び帰還したところです。盤上の各所に散らばっているコマは,あるものは敗れあるものは地付きとなった各色の魔物たちや,竜巻です。

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バルトとドナイ
バルトとドナイの諍い

右の画像は,時代が進んで二人対戦シナリオの時代に入ったものです。年長の魔法使いバルトは青と黄の魔法をよくしました。

それに対して,年下の魔法使いドナイは緑と橙と紫の三色の魔法を使いこなせました。2色の魔法しか使えぬくせに年長であるが故に上に立つバルトを,ドナイはこころよく思いませんでした。

バルトは西の街,ドナイは東の街に住んでいました。両者の間に白の土地がありました。ドナイは己の力を広げるため,この白の土地を己のよくする魔法の色に塗り替え始めたのです。

これは魔法使い同士にとっては宣戦布告を意味しました。バルトもまた白の土地へと赴き,両者は互いの色の魔物を呼び出して激突することとなりました。

画像は,5ターン目の状況です(シナリオは全8ターンです)。上部の白の都市で青と黄の魔法使いバルトと,緑と橙と紫の魔法使いドナイが直接ぶつかりあっています。このヘクスはバルトにより青に塗りかえられていましたが,多くの色をよくして力に勝るドナイは,バルトに有利な青の土地でさえバルトを圧倒してしまいました。

左下ではそれぞれの弟子の単色の黄の魔法使いと橙の魔法使いが灰色の街を争っています。ここでもドナイの陣営が強力なトロールを呼び出してバルトの陣営を圧倒しています。

この結果は,概ね史実(?)通りで,続くシナリオでは,年老いたドナイに対して,青と黄に加えて赤の魔法を身につけたバルトの息子ウッサが挑むことになります。

ソーサラーのシステムと難点

前述した通り,「ソーサラー」は数学か物理の問題を解いているようなシステム運用が特徴です。このため,特にルールを読んだ第一印象は,非常に無機的で無味乾燥なものがあります。

実際にプレイしてみると,それぞれのルールは上手く機能していて,無味乾燥なシステムは運用することで物語を語り始めるのですが‥‥。

たとえば,戦力の強い魔物は機動性に欠け,機動性の高いものは戦力が弱くなっています。それぞれの色の魔物は,自分の色では強く,他の色に対しては相性に応じて戦力が変化します。また,自分にとって相性の良いヘクスに対しては,結びつきが強く,いったんそういったヘクスに配置すると,そこを離れるのが難しくなっています(通常のウォーゲームと異なり,ヘクスを出るために移動力を払うシステムになっています)。

その一方で自分の色のヘクスでは,魔物はエネルギーが活発化しすぎるためか,消耗が早くなってしまいます。また,魔物を召還できる魔法使いの人数は少ないため,呼び出した魔物は貴重な存在です。このため,能力をフルに発揮できるが消耗の早い得意の色に配置するのか,能力は低下しても長く生き残れる他の色に配置するのかはジレンマがあります。

魔法使い同士の色の相性により,おのずと力関係や作戦も導き出されてくるため,単なるシンメトリックなじゃんけんにはなっていません。このため,プレイしてみると,ルールを読んだ印象よりずっと豊かな作品世界があることが実感されてきます。

とは言え,非常にとっつきが良くないゲームであり,特に近年の「マジックザギャザリング」のような芳醇な色の対立の図式を見てしまってからでは,このゲームに魅力を感じるのは難しいかも知れません。また,部隊の召還/移動/消耗などのシステムが既存のウォーゲームと異質なので,頭に入れて使いこなすのに時間が掛かるのも事実です。

その一方で,いったん把握してしまえば,魔法使いの人数が少ないため召還される魔物も無尽蔵ではなくプレイアビリティは非常に良好なゲームです。そして,繰り返した通り,プレイしてみると第一印象よりずっと物語性もあるのですが‥‥。

ここらへんの機能優先なシステマティックなデザインと,プレイして運用したときに始めてわかるバランスの良さと,そこから生まれる物語性は,このゲームのデザイナー,サイモンセンの特徴かも知れません。同じサイモンセンの「ワールドキラー」がやはり似たような第一印象とプレイ後の印象のギャップを持っていました。

関連ゲーム / 類似ゲーム

各色の魔法がせめぎあうという設定において,WOTC社の傑作トレーディングカードゲームマジックザギャザリングと比較されるのは必然かも知れません。ただし,「ソーサラー」が1975年の作品であることはハンディとして頭に入れておいていただいた方が良いでしょう。

サイモンセンのシステマティックなデザインの他の例示としては,Ares誌の創刊号の付録ゲームワールドキラーが挙げられます。

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