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ワンスアポンナタイム
Once Upon a Time / Atlas Games

一言で言えば‥‥

むかしむかしあるところに‥‥,即興でメルヘンを語り継ぐ不思議なカードゲーム

勝つことよりも素晴らしい語り手となることを目指して

こんなゲーマーにお薦めしたい

おはなしを作ることが好きなプレイヤーに

勝敗よりも皆で楽しむことを重視するプレイヤーに

プレイ人数 3−7人くらいまでか?
プレイ時間 1〜2時間
ルール難度 レジャータイムゲーム
デザイナー ランバート,リルストーン,ウォリス
入手状況 マイナーメーカーのため見つけにくいがまだありそう
ワンスアポンナタイムのボックス
カードは語る「むかしむかし‥‥」

カードの語り部としての可能性は,かなり昔から人々の気付く所だったと思います。タロットカード占いは,その一例のように思えます。人の過去,現在,そして未来を暗に示すカードの配列は,神秘的で魅力的です。

カードの優れた効能としては,簡単な乱数発生器として誰にでも扱え,また自在に配列しなおすことができます。この機能が人の運命を暗示したり,物語を語ったりするのに向いているのでしょう。

カードの語り部としての可能性を非常に強く機能させたカードゲームが,この「ONCE UPON A TIME」です。このゲームは,物語の結末と,小道具とをプレイヤーに与えて,結末にいたる物語をプレイヤーたちに組立てさせるゲームです。ゲームタイトルを和訳すれば,むかしむかし‥‥という物語の語り起こしの決まり文句となります。

プレイヤーは一枚のハッピーエンドカードというのをまず受け取ります。そこには様々な物語の結末が書かれています。プレイヤーは,これから皆で語る物語の結末を,その与えられたカードへと導くことを目標とします。
ワンスアポンナタイムの小道具
同時にプレイヤーは,数枚の物語の小道具のカードを受け取ります。これらは寓話や童話にいかにも出てきそうな小道具が描かれています。プレイヤーは話しの進行中に手持ちの小道具のすべてを物語に登場させなければなりません。

小道具には5種類があります。左からアイテムの本,アスペクトの秘密,イベントの恋に落ちる,プレイスの洞窟,キャラクターのおばあさんです。

かくして物語は道具立てと,結末を与えられるのですが,そこへ至る過程をどのように辿るのかはプレイヤーたちの駆け引きに委ねられます。

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話しは佳境へと入っていく‥‥

あるプレイヤーが手札の一枚をプレイしながら,その物語をそのカードに示されたガジェットから語りはじめます。そして,話しを自分の手持ちのさらなるカードを登場させられるように進めていきます。

それに対して他のプレイヤーは自分の手持ちのガジェットがストーリーに登場してきたなら,それをプレイして物語の語り手の役を引き継ぐことができます。そして,物語は新たなる語り手の元で進んでいくのです。また,話しをとぎらせてしまって続けられなくなった場合にも,隣りのプレイヤーに語る権利は移り,罰として新しいカードを手札に引き加えます。

こう書くと,他人の持っていそうなカードを話しに出さないようにすれば良いではないかという気もします。しかし,実際にはカードにはいかにもこういうストーリーに出そうなものがほとんどありますので,避けて通りきれません。なによりそんなことをしていては話しが作りにくくて途切れてしまうことになり,元も子もありません。むしろ,お互いにどんどんいろいろなものを登場させて話しを膨らませた方がゲームも盛りあがります。
ワンスアポンナタイムのエンディング
また,同じ語り手が長くなりすぎないための工夫として,インターセプトカードというのも用意されています。これは,語り手がいずれかの小道具をプレイしたら,それに対応するインターセプトカードで語り手を引き継げるものです。このカードは避けようがありませんので,必ずタッチ交代されてしまいます。左側の2枚が,それぞれキャラクターと,アスペクトに対応するインターセプトカードです。インターセプトカードは,自分の手番であれば普通の小道具として使うことができ,その場合には下側に書かれた小道具になります。

こうして物語が進んで行くと,やがて誰かがすべての小道具を使い終えて,自分の手持ちのエンディングカードへと話しを収束させるときがやってきます。物語のエンディングが語り終えられたなら,それが整合性のあるものであったかどうかをプレイヤーは話し合います。あまりに理不尽であれば受け入れられない場合もあります。

右側の3枚がエンディングカードの見本です。それぞれ,「彼らがどんなに苦労しても二度とそれを見つけることはできませんでした」,「彼はそれからは母親の忠告を良く聞くようになりました」,「かくて予言は成就されたのでした」といったところです。それぞれにどんな話しが展開されていなければならないか想像がつくと思います。

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ワンスアポンナタイムの難点

このゲームは,おはなし作りのセンスのあるプレイヤーが集まってプレイすると,大変に賑やかな,そして記憶に深く残るものとなります。わたし自身も忘れられないプレイがあります。

その一方で,競技性のゲームとしては,ややルール構造が柔弱なので,メンバーのセンスや技量が合わないと,上手く機能しない場合もあります。一人が延々と喋りつづけたり,折角,順番が回ってきてもドギマギして何も出てこなかったりすると,少々,困ります。

経験からすると,勝つことよりも素晴らしいおはなし,楽しいおはなしを作ることを目指す顔ぶれが揃っているのが良いようです。残念なことですが,率直に言って,勝つために強引な話しを作り,それが筋が通っていると強弁するような人とは対戦しないのが無難でしょう。

そうした問題はあるにせよ,このゲームは,カードというものが持っている可能性を強く感じさせてくれる傑作ゲームと思います。向き不向きはあるかと思いますが,カードゲームが好きな人であれば一見の価値があると思います。

関連ゲーム / 類似ゲーム

ストーリーを作っていくカードゲームとしては,ケイオシアム社のクトゥルフのトレーディングカードゲームである「ミソス」が近い要素を持っています。ただし,このゲームは一人一人がそれぞれクトゥルフなアドベンチャーをしているという形態になっています。

全員で一つのストーリーを作っているという点では,バンダイの
「エヴァンゲリオンカードゲーム」があります。補完と言う結末を目指してストーリーを捻り合うという点では似ています。ただし,「ワンスアポンナタイム」を陽性のゲームとすれば,「エヴァンゲリオンカードゲーム」はダークサイドのゲームと言って良いほど雰囲気は違います。またシステムも複雑でプレイヤー間の相互作用も難解です。

また,ボードゲームになりますが,ウェストエンド社が出していた
「テイルズフロムアラビアンナイト」というパラグラフブックの親玉のような作品も印象に残ります。アラビアンナイトのエピソードに満ちた世界を冒険する作品で,「おはなし」を作る,「おはなし」に出会うという違いはありますが,モチーフが近いこともあり雰囲気は通じるものがあります。

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