新世紀エヴァンゲリオンカードゲーム
Neon Genesis Evangelion The Cardgame / バンダイ
一言で言えば‥‥
アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の本質を捉えたカードゲーム
襲い来る使徒と戦いつつ,自身のキャラの補完を目指して暗躍する
こんなゲーマーにお薦めしたい
新世紀エヴァンゲリオンの愛憎劇を好きな方に
複雑なルールと手間の掛かるデック構築を苦にしない方に
プレイ人数
3−5人
プレイ時間
1−3時間
ルール難度
上級トレーディングカードゲーム
デザイナー
−2D6−(デザインチーム名)
入手状況
国内発売中(映画終了後,入手が徐々に難しくなってきている)
「新世紀エヴァンゲリオン」の設定
このゲームの題材は、社会現象とも言われる熱狂を作り出したアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」です。
セカンドインパクトと呼ばれる未曾有の地球規模の変動を体験した近未来の世界。この地球規模の異変は、死海文書(実在する死海のほとりで発見されたという古文書)に予言されており、使徒という謎の存在との遭遇に起因すると言います。
生き残った人類は,セカンドインパクトで得た知見を元に,次なる使徒を迎え撃つ試みをしています。しかし、この試みは非公式な部分が多く、さらに非公式なこの組織の表の部分に携わっている人々が知っているのとは別に、さらにそのまた裏の部分があるようです。そしてもっと複雑怪奇なことに、この裏の部分を利用して別の個人的な妄執を実現しようとしている人物もいます。
物語は新たなる使徒の侵入とともに始まり、非公式組織NERVが使徒迎撃に動き出すところから始まります。
一見、使徒を倒していくロボットヒーロー物のように見えて、そのパイロットたちは苦悩する思春期の少年少女であり、表向きの戦闘とは別の様々な思惑を含んで暗躍する大人たちがいて難解な進行をしていきます。
これ以上の説明は,ビデオなどになっているアニメ作品を見てもらった方が良いかと思います。
エヴァンゲリオンカードゲームのシステム
「新世紀エヴァンゲリオンカードゲーム」は,この多層化した難解なアニメを題材としたトレーディングカードゲーム(各自が自分のカードコレクションからカードを選抜して使用するタイプのカードを共有しないタイプのカードゲーム)です。そして、この難解な題材を見事に再現しています。
プレイヤーの目的は、主要登場人物の誰かを演じその補完を達成することにあります。補完というのは、今の人間は不完全な姿なので、その足りない部分を満たすというような意味です。これは補完カードを選ぶことで示され、各プレイヤーは自分のデックを組み立てるための最初の作業としてこれを選びます。補完条件には様々なものがあり,プレイヤーの利害は衝突することもあれば合致することもあり、まったく影響しあわなかったりもします。
補完条件の基準は大きく2種類に分かれ、主要登場人物の人間関係を意図する状態にした時に達成されるものと、使徒をエヴァで倒すことで達成されるものがあります。他にも極めて特殊な条件もあります。左上に示したものは,物語で暗躍する碇司令の補完カードで,自らが神を目指すものです。その隣は,人気ナンバーワンキャラであった綾波レイの補完カードの一つで,主人公の碇君(碇司令の息子)と二人むすばれたいというものです。
プレイは、主要人物の行動や状態の変化、そしてセリフを現すカードを使って実施されます。プレイの主要な部分を成すのは、エヴァを用いて使徒と戦う戦闘フェイズと、主要登場人物の人間関係を変化させるメインフェイズからなります。これらのフェイズをコントロールすることで、自身の補完条件の達成を目指すのです。
補完は自分のターンにしか実施できないので、手番のプレイヤー以外は支援や妨害に当たるということになります。勝敗を争っているのですから、妨害する理由はあっても支援する理由はないように思えますが、実際には人類全体として使徒の侵攻と戦っているので、支援しなければ人類が滅び全員が敗北する危険もあります。とは言え、人類を多少の危険にさらしても自身の目的を優先するプレイヤー(登場人物)も出てきます。ここらへんは、アニメの雰囲気を非常に良くとらえています。
使徒との戦い
最終的な補完条件はともかくとして,ほとんどのキャラクターはその過程で使徒との戦いをくぐり抜けなければなりません。
謎めいた存在であり,一体一体が個性豊かな存在である使徒は,ゲームの展開を左右する存在です。
いちばん左の使徒は,TVの第一回に登場したサキエルです。ゲーム的には倒すのに手ごろな使徒の部類ですが,TVの逸話通り1回目はやられたように見えて活動を再開し,2回目に本当に撃破されます。
その隣の使徒は,基地にコンピューターウィルスのように侵入してきたイロウルです。この使徒は,通常の戦闘では倒すことができず,TVのエピソード通りに特殊な方法でのみ倒せます。
最後のものはアラエルです。この使徒は,エヴァンゲリオンの操縦者に対して精神攻撃を仕掛けてくるという独特の攻撃をする使徒です。このため,操縦者のキャラとしてこの精神攻撃を打ち破らねばなりません。
この他の使徒もそれぞれに独特です。どの使徒を自分のカードの山に選択して入れておくかは,自身のキャラの補完のための作戦や,他のプレイヤーへの妨害効果を考えて決定することになります。こうして登場してくる使徒によって,ゲームの展開は多様に変化します。
ガジェットの豊富さとプレイの難解さ
このゲームのカードの特徴として、カードを上下反転させることで、二種類の用途に使い分けることがあります。これにより、カードとしての種類を増やすことなく、2倍のガジェットを取り込んでいます。また各自の手札やデックとしても、手持ちの枚数の2倍の選択肢がある訳で、これがプレイの幅を広げています。その一方で、最初のカードの選択や、プレイ中の判断を複雑にしているという難点があります。
このため,このゲームは原作アニメを見てプレイの指針や,豊富なガジェットへの理解を持っていないと,なかなかハードルを越えてプレイしきれないゲームになっています。率直に言って,難易度としては上級者向けのゲームでしょう。この難易度の高さが,このゲームの最大の難点でしょう。
映画版を踏まえた第2弾
このゲームは,1998年の夏に発売された第2弾で,映画版の内容を踏まえたカードが追加され,世界が広がりました。ゲーム的にも,プレイの手順が明確になり、補完条件も難度が低いものから高いものまで選べるようにバリエーションが増えました。単に映画版の世界を追加しただけでなく,ゲームとしてもパワーアップされています。
いちばん左側は,第2弾のボックスです。その次のものは,メインキャラクターの一人,赤城リツコ博士の新しい補完カードです。碇司令と無理心中をするものです。最後のものは,映画で新たに追加された本当の最後の使徒「ヒト」です。人類は第18番目の使徒であったのです。
映画版は,TV版以上に血の匂いが濃く,業にさいなまれるようなアニメですが,このゲームの第2弾のカード内容もそれを採録しています。ここまで辿り着いてプレイするのは,新世紀エヴァンゲリオンの世界にどっぷりと浸かったプレイヤーでしょうから,もはや敢えて血塗られた道を避けることもありますまい。
このゲームは,その独創性の高さと、複雑でありながらかなり良く練られている点とで,日本のゲームデザインの中でも賞賛に値すると思います。しかしながら,あまりにも濃い題材を,あまりにも鮮烈に描き出しているため,多くの方に薦めるのには二の足を踏んでしまいます。
ともかく強烈なゲームです。
関連ゲーム / 類似ゲーム
物語性の強いトレーディングカードゲームとして,題材はまったく異なりますがケイオシアムの
「MYTHOS」
があります。複雑なキャラクター間の闘争のカードゲームとしては,AHの
「ダウン ウィズ キング」
というゲームもあります。
いずれも濃密なカードゲームです。ですが,いちばん強烈な存在は,この「新世紀エヴァンゲリオンカードゲム」なのではないかという気がします。
また、カードダスマスターズの後輩として仮面ライダーを題材とした
「ライダーズレジョンド」
も登場しました。