ここは隠しページで、個人的な読書ノートになっています。
2001/11〜2002/12
●チェンジ・ザ・ルール
エリーヤフ・ゴールドラット
三本木亮
コンピューターシステム版の「ザ・ゴール」と思わせるが、「ザ・ゴール」より確かに一歩スケールを踏み出しており続編として満足するに足る出来栄え。惜しむらくは中盤でTOCを勉強している人でないとわからない用語が何の解説もなく出てくるのは不親切。勉強して読め‥という趣旨なのかも知れないが、オリジナルの「ザ・ゴール」は入門者にも納得の行く書きぶりだっただけにマイナス点は否めないところ。
・コンピューターは限界を取り除くことのできるツールである
・限界を取り除くと仕事のやり方が変わるので、それに応じたルールの変革が必要になる
・ルールにシステムを合わせて導入するのではなく、新たに導入するシステムとともにルールも変革する
・部分最適化が全体にとってベストソリューションではない
・そのことは誰しも一定の理解をしているのに実際には部門の壁や情報の限界があって部分の中で最適化をしている
・結果として他の部署にツケを回したりしていて全体としてはすごく無駄なことをしていたりする
・誰もがそれに不満を持っていて、問題のある点のいくつかを指摘することができるのに、直すことができない
・TOCでは全体に観点を移して新しい尺度を持ち込むことで問題を整然と組替えることができる
・古い尺度はしばしば部分最適化を目的としているので、尺度を見直すことを考えよう
圧巻はやはり257ページから始まる大芝居なのだが、そこに至る過程がなくては有り難味が薄いのでやはり全体を通読する必要があると思う。全体を通読してTOCの威力を痛感してから成書で要点を把握して実際に自分で運用すれば良いのだろう。
肝の部分はドラム・バッファー・ロープであることは「ザ・ゴール」と変わらない。しかし、その運用のスケールは数段階に渡って広がっており、そのためにルールや尺度、コンセプト、哲学の変更が伴ってくる。尺度の変更の威力は、276ページのところで痛感される。
以上、多少の難点はあるものの、非常に優れた強力な本であることは間違いない。
●天使は結果オーライ
野尻抱介
ロケットガールの続編。SSAは既に打ち上げの実績を積み上げているが相変わらずのタイトロープ。その結果、なんとゆかりは母校に着地。ここらへんまでは美少女アニメ風なファンキーな展開だが、その後、今回の主人公とも言うべき後輩の茜が登場、その成長物語に。そして軌道上での冥王星探査機オルフェウスをめぐるエピソードは、宇宙開発ものの原点とも言うべきロマンスと感動を呼び起こす。不覚にも「これが宇宙の浪漫だよなぁ」と目頭が熱くなる思いさえした。
●反在士の指輪
川又千秋
川又千秋の「反在士の鏡」にさらに3編が加わった完全版。
「反在士の鏡」は作者のあとがきにもあるが若書きな未熟な部分も感じられるが、それでも川又千秋の個性と魅力の出た良い中篇。
「夢界の虜囚」は銀英伝を思わせるシチュエーション、いかにもゲーム的な展開、そして第1作より水準の上がった描写で作中でも印象に残る一編。
「虚人の領域」は前三部作の最後で、夢界で翻した叛旗も飲み込まれて続くゲームの中でのあがきを描く。悪夢な展開から世界の綻びが示唆されて世界は闇に溶け始める。
「反在士の帰還」は一瞬シリーズ冒頭に帰ったかのような傭兵再就職シーンから始まりながら、世界の脆弱な構造の中で現実の不安定さで不安な幕切れを迎える。
「鏡人たちの都」これまで謎の存在だったゲームプレイヤーに少しだけ近い者が現れてくるが、かれらこそは脆弱な世界構造と関係した存在だったと言う小品。これまでの脆弱な反在士の現実と相対する現実に強く執着する存在と見られた戦いのゲームプレイヤーが実は同じ側の存在だったと言うのは意外性はあるが、少し座りが悪い展開のような印象も。
「反在士の指輪」はエピローグ的な小品。目を覚ますたびに世界が様相を変えていく悪夢から悪夢へ渡るイメージでシリーズは幕を閉じる。
ウォーゲーム、不思議の国のアリス、鏡像、夢、さまざまな現実を非現実化するイメージで重ね書きしていく川又千秋の個性の良く出た傑作連作集と思う。
●月は無慈悲な夜の女王
R.A.ハインライン
矢野徹
ハインラインのクラシックとも言うべきヒューゴー賞受賞作。
残念ながら個人的にはハインラインはあまり好きでなく、それ故にこの作品も今にいたるまで読んでいなかった。今回ようやく読んでみたが、やはり印象を改善するには至らなかった。
悪くはないと思うのだが、キャラクターが類型的過ぎて魅力が薄い印象、ストーリー的にも描写的にもこれだけ分厚いにも関わらず肉厚な印象を受けなかった。単語は大量にあるのに実効が薄い感じがすると言っては厳しすぎるか?
巨大コンピューター「マイク」の存在も、ポストサイバーパンクの現代では浅く平板な印象を免れない。
25年前に読んでいたらどう感じたのかは想像しにくいが、それでもあまり高くは評価できないかも知れないという気がする。文章としての相性も良くないのだろうか?
●宝島(上)(下):グインサーガ外伝
栗本薫
イシュトヴァーンサーガと呼んでも良い一連のイシュトヴァーンの若き日を描く外伝の新作。なんと上下巻。
作者の後書きにもある通り、イシュトヴァーンが本編で狂王の道を歩む上で、その心の闇の起源を求めるこの外伝は必然として感じられさえする。
グインサーガの版図の最南方の海賊の版図での宝島というタイトルの冒険は、その夢を感じさせるタイトルとは正反対の凄惨な現実で血塗られる。そして、宝島にはついに辿り付くのだが、その結末は空しい。終幕はグインサーガ本編の冒頭に繋がるモンゴールの傭兵への示唆で終わっており、ひとまずイシュトヴァーンサーガも終わりなのだろうか。
イシュトヴァーンの強烈な魅力と、それに魅せられてしまったものたちの狂騒は、本編のアリストートスまで続くことになるが、この宝島のそれは短く激烈で純粋で心に突き刺さる点で本編のそれを上回り、これ以前の外伝をも上回っている。あまりに鮮烈で目を背けたくなるが魅力的な一作。本編よりも素晴らしいと言っては本末転倒か?
●ハリーポッターと秘密の部屋
JKローリング/松岡佑子
一年ぶりに読む第2作。前半は第1作の懐かしいガジェットと伏線。正直に言ってガジェットの新鮮さでは一作目のインパクトが強かったので、少し物足りない感じも。しかし、秘密の部屋が開き、怪事件が続くあたりから俄然盛り上がり後は一気呵成にエンディングまで。
ヴァルデモートとの第2ラウンドの対決のカラクリは少しデビルマン的な妖奇色も帯びて傑作。ホグワーツの過去が語られ、若かりし日のダンブルドア校長や、ハグリッドの隠された過去が明らかになる。特に一旦、解けた謎の裏側にさらなる真相がある当たりはさすがというばかり。シリーズの2作目ということを抜きにして単独の作品としても素晴らしい出来栄え。
この水準がさらに3巻以降も続くのかどうか期待とともに待ちたい。世評からすると、3巻、4巻と順調なようなので非常に楽しみ。
●80年代SF傑作選(下)
小川隆/山岸真 編
「胎動」は、なるほどリバーワールド冒頭を思わせる小品。「焔の眼」でも感じたが生活感ある一方でSFらしさが薄いかも。
「祈り」は、ヴァイキングに襲われる話しで重みのある作品だが、「SFかな?」という印象も。
「間諜」は、スターリングらしい小品。どことなく士郎正宗風というと、話しが逆か?
「確率パイプライン」は、サイバーなサーフィンストーリー。コミック版サイバー・ヴァーミリオンサンズと言うと褒め過ぎか?
「ペーパー・ドラゴン」は、ブレイロック的なスチームパンク色の小品。「ホムンクルス」でもそうだったが個人的には波長が合っていない印象。
「血をわけた子供」は、本巻中でもっとも印象深い作品。異星生命体との共生を選び、卵の床として子供の身体を貸すという話し。そして、そのもっとも生々しい部分を描写した小品は、長さ以上に重量感がある。少し「ゲゲゲの鬼太郎」の「地相眼」を思わせる。
「ぼくがハリーズ・バーガー・ショップをやめたいきさつ」は、「中継ステーション」を思わせる小品。個人的には大好きなシチュエーション、大好きなテイストの作品で楽しめた。
「おう(鹿金)戦」は、バリントン・ベイリーもかくやの前衛な設定の未来作品。岩石型の惑星で進化した地球人の末裔が、古くからのガス系惑星で進化したセネクシーと戦い続けるようになって久しい。そのために人類は戦闘に特化した形態への進化を自ら進めている。その両者の間でのわずかな理解の兆しは‥。極めてSFらしい中篇で印象深い作品。問題作にして傑作。
「帝国の夢」は、「ドリームマスター」を思わせる夢と医療の結びついた一作。違うのは夢に結び付けて肉体的な治療をするというあたりで、サイバーパンク的な人体の調整と改造を連想させる。
上下巻を合わせて見たときにいくつか思うところは、
1:未来テクノロジーが人体に介入して既存の人体や兵器、医療、戦闘のイメージを変革する
2:非欧米文化、歴史のエピソードやテイストを取り入れたエキゾチックなイメージが深まっている
3:SFらしい宇宙人や宇宙戦争はいまなお健在
といったところか。
●運命の糸車:グインサーガ86
栗本薫
アムネリスついに死す。個人的には冒頭の辺境編から彼女のファンだったので非常に残念。侍女のフロリーとの再会もならず、ついに幸せになることもなく去ってしまうのは余りに寂しい。
後半は一転してグインがイシュトに胸を貸す合戦絵巻。イシュトが暗転していくのかと思っていたが、そう単純でもなくイシュトにも未来の可能性が見える印象。そして最後に休戦条件を蹴ってアッと言わせて、さて続きやいかに???
●80年代SF傑作選(上)
小川隆/山岸真 編
「ニューローズホテル」は、ギブスンらしいイメージがキラめく小品。ただし、イメージ先行かも。
「スキンツイスター」は、SF的な新しい職業のミステリーなエピソードの小品でなかなか。
「石の卵」は、わかりにくい。わからないところはないのだが、これのどこがそんなに評価されるのかがわからない。
「わが愛しき娘たちよ」は、ワイルドなセックスねたの作品。オチがどういう意味か良くわからず消化不良。
「ブラインド・シェイミイ」は、スタイル先行ではあるかも知れないが個人的にはゲームの醍醐味と、SFならではのニューゲームの描写が噛み合っていてなかなかの作品と思う。
「北斎の富嶽二十四景」。ゼラズニイは好きなのだが、この作品については何を目指していたのかも不明だったし、語り口としても今ひとつなように思う。日本ネタのものを日本で読んでいるのでアラが目に付くのか?
「みっともないニワトリ」は、SFらしくないとも言えるトールテイルだが面白い。オチは半分分かっているようなものの、それでも最後に至るまで「もしかすると‥」と奔走に付き合って夢中になって読んでしまう。
「竜のグリオールに絵を描いた男」。これもわかりにくい。竜を殺すために絵を描くという本題からそれて竜のまわりの集落が時代とともに変遷していくという話しなのか? それなら逆にもっと長く手厚く人々を描写しないと味が出てこないように思う。それとも全然ちがう意味合いのある話しなのだろうか?
「マース・ホテルから生中継で」は、火星ならではのバンドが火星から離れてアイデンティティを失い、また戻ろうとするが悲劇に終わるという話し。悪くないと思うが。
「シュレーディンガーの子猫」は、スタイリッシュな多元宇宙ものの中篇。イスラムな世界と、ワールドウォー2の核兵器開発の交錯のコントラストも鮮やかなキレの良い中篇。
●時間蝕
神林長平
SFミステリー系の4中篇を集めた作品集。
長年の神林ファンなのだが、実は告白するとミステリ色のものは魅力がわからない。著名な「敵は海賊」もどこが良いのか良くわからなかった。神林作品はタッチとしては重い方ではないかと思うが、ミステリ色のもので意識されているテンポや掛け合いがどうもピンと来ない。
「渇眠」は、コールドスリープ中に眠りを食われそうになる話し。どうもわかりにくく、わからないままに終わってしまった。
「酸性雨」は、上述したテンポと掛け合いがピンと来ない一例。
「兎の夢」は、「帝王の殻」へと繋がるPABという第2自我のガジェットが秀逸で中ではいちばん面白い。
「ここにいるよ」は、イメージは理解できるが、それの厚み付けは短すぎて不足しているように思う。
●プラスティックのしゃれこうべ
草上仁
いつもながら洒落た短編を書く草上仁の第6短編集は、各編に作者のショートコメントが付いたスタイル。
作風にあった懐かしい形式で、これも気が利いている。
「虫食い」は、果物をどうやって虫に食われずに運ぼうかと苦闘した末に、客が望んでいたのは‥という話し。言ってしまえばそれだけのことを、SF的な苦闘を存分に書いている。SF版落語という感じか。
「予約制」は、あらゆることに予約が必要な社会では予約機が人間に代わって調整をしてくれているという話し。そこで予約機が壊れると‥。これもその結果をトコトン描いて見せてくれる。
「ハデスの牧場」は、近年のSFらしい遺伝子ハイテクものなのだが、それが牧場の牛を爆撃から保護する話しになってしまうところが草上流。
「プラスティックのしゃれこうべ」は、さすがは表題作。機械体に生体部品を使用している時代に、かつて生体のみで構成されていた人間の化石を求めるというシュールな話し。SFらしさ、独特のテイスト、申し分ない。オチはいかにも草上SF落語。
「タイムカプセル」は、時間テーマで、なんとタイムカプセルが後世に与える影響をトライアンドエラーで改善していこうという作品。ラファティの「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」や、「レインバード」に通じる。ただし、草上さんの方が洗練されているかも。
「チキンラン」は、古代文明の残した遺物の意味がわからず曲解されて使われている未来の話しの一例。独特のテイストで面白い。これもいかにもSFらしい感覚で、草上さんの素晴らしいセンスが伺われる。オチは少し無理があるか?
●推定恋愛
森浩美/絵:望月玲子
洒落た現代風女性視点ラブエピソード集
「注ぎ足し」は男性側からすると身に積まされるかも。「ツボ」はマッサージというスキンシップコミニュケーションの効果を改めて痛感。「ごみ箱」は生活の一角にいるごみ箱にスポット。「おんぶ」はいかにも微笑ましい。「夏畳」はいかにも現代風だが結局のところ恋愛は良くも悪くも面倒なものか。「こたつ」も現代風だが、こういう観点もあるのかという驚き。
●ビジネスマンが交渉に強くなる本
谷川須佐雄
非常にアグレッシブでマインドコントロール的な駆引きを含んだ交渉本
・ポジションを確保せよ、自分からポジションを下げるな
・交渉、調整であって、哀願してはならない
・統合的交渉でWIN−WINを作るために創造力を発揮せよ
・相手を良く調べた上でのプレストローク、成果を固定するためのアフターストローク
・ストローク効果を上げるには、モノを単なるモノでなくする心理戦略
・相手を圧倒する既成事実法、業界慣習法、良い子悪い子法
・交渉にぶっつけ本番など厳禁、準備しすぎるということはない
・交渉の絵は立体的に多分岐に考えて置く
・YES−BUTを止めて、WHY−BECAUSEに切り替えよう
・声音も仕草も交渉のツールである、相手の心理を読むのに使い、相手に心理効果を与えるのに利用する
●時間衝突
バリントン・ベイリー
大森望
ベイリーらしい奇想の詰まった一作。時間線が川の流れのようなもので、分岐したり、蛇行したり、還流したりするというのは、眉村卓の「トグシノ(短編集「遥かに照らせ」)」にもあって面白い設定。
しかし、ベイリーはそんなものでは済ますはずはなく、時間線が衝突するに当たってお互いの時間から見て相手の文明の遺跡が時間逆行するというところからスタート。遺伝子浄化戦争を戦った人類の末裔タイタンが、外敵エイリアン実証のための考古学調査として、これを調査するという設定で導入していく。さらに、時間線を操る技術を進化させた中国系の末裔の二分割都市という奇想天外なアイデアを加えて、時間線の衝突、遺伝子浄化戦争、分割都市の階級闘争という三つの紛争を並行して進めていく。極めつけは時間に対して斜行する存在が登場して事態を一つ上のレベルから仲裁してくれて‥。
長編が数冊は書けそうなアイデアがぎっしりと一冊に詰め込まれた読んで嬉しい一作。
ワイドスクリーンバロックの「キャッチワールド」の名前が解説ででてくるが、確かに類似するところあり。もしかしてこちらの方が上か?
●ロケットガール
野尻抱介
太陽の簒奪者が良かったので購入してみたロケットガール。女子高生が夏休みのひょんなアルバイトで宇宙飛行士に。彼女の父親は現地の酋長になっていて腹違いの妹がいて彼女がバックアップで‥。
軽快で楽しいジュブナイルSFに仕上がっていて気持ちよく読める佳作。科学的な考証は結構ちゃんとしている‥ということになっているもののロケットに呪いを掛けるかどうかで打ち上げの成否が決まるって言われても。
とまれ一件落着かと思いきや、最後の一行でひっくり返して続編に続いてくれるのは結構、嬉しかったりもする。続編にも期待したい。
●地衣騒動
ジョン・ウィンダム
峯岸久
ウィンダムのハヤカワ銀背から文庫に収録されなかった一作。
寿命延長薬の開発をめぐる発明者たちの苦悩と、社会的騒乱、そんななかでのラブストーリー。
ホットなトピックでありながら、抑えた描写で、主人公周りを厚く描き上げている。いかにもウィンダムらしい。エンディングが希望的なのも彼らしい。ただ、トリフィドの日や、海竜目覚めるに比べると、やや軽い印象は免れない。ラブストーリーとしても地味すぎるし、エンディングは少し唐突な印象も。
●チャイナ・インパクト
大前研一
今をときめく中国について、大前研一がスパッと切ってくれた会心の一作。
中国の持つ強み、その可能性、そして現在進行形の状況を分析。その成功モデルのコアを抉り出しているように思える。その分析がどれほど妥当かは、時が証明してくれることになろう。ただ、現時点で実際に中国を肌で感じていないものとして、信頼のできそうなソースとして、説得力に満ちた筆致で描かれており、とりあえずこれを信じるに足るように思う。
そして、次の中国の問題点である一人っ子爆弾についての指摘は、興味深い。中国が世界経済でアメリカと双対するような極になるであろうという分析が事実だとして、その中で自分はどうしていくのか改めて考えさせられる。
日本という十分な大きさのある市場に近接してその利点を生かして日本でやっていくのか、あるいは自分のスキルを生かすために職種が必要とされる国に移り住んでいくのか、あるいは中国のメガリージョンとのメガコネクションを築くような大前提案のスタイルを実現できる地が日本の中に生まれるようならそこに移り住んでそのコネクションの一角を担うようなポジションを見出していくのか。
いずれにせよこれから5年、10年、15年くらいのレベルで人生をプランニングする上で、中国が無視できないとなると、それを考えるための良著であることは間違いない。
●ゲイルズバーグの春を愛す
ジャック・フィニィ
福島正実
サインなどしなくても作品の方から誰が書いたか自然にわかる人というのがいる。ジャック・フィニィはその一人だろう。
独特の情緒と、日常から顔を覗かせる異世界への入り口。
「ゲイルズバーグの春を愛す」は、街が変化に抵抗するリリカルな怪異の物語。
「クルーエット夫妻の家」は、昔の設計図通りの建物を建ててそこへ住むことで、その家だけその時代に呑まれていく話し。
「もう一人の大統領候補」は、虎に立ち向かう勇敢な少年のタネもシカケもあるお話し。
「独房ファンタジア」は、独房に描かれたリアルな扉が脱走に使われるのでは‥という重圧を看守ともども読者も追体験するが、最後まで脱走は行われない。そして‥。
「時に境界なし」は、ちょっと初代ルパン3世の魔毛狂介のエピソードを思わせるようなタイムマシンで人を過去に送り込むエピソード。
「コインコレクション」は、「夢の10セント銀貨」に繋がる短編。ある意味、理想の多元宇宙夫婦生活ストーリーか。
●蜃気楼の彼方:グインサーガ85
栗本薫
前巻ではいよいよナリスの終わりかと思わせたが、しぶといしぶとい。正直に言ってあまり好きなキャラではないので、ちょっとクドい気も。
とまれ、ついにグイン対イシュトヴァーンの激突が前哨戦を開始し、クライマックスに入ったことは確か。軍事描写についても、シリーズ開始当初と比べると随分と重みも出てきて、それなりに納得の行くものに。作者自ら「収穫のとき」に入ったというが、それも頷ける重厚なドラマの積み重ねになってきた。
それにしてもルードの森から草原への逃避行をともにした4人のいかに立場が遠く離れての再邂逅であることか。
●おもいでエマノン
梶尾真治
カジシンのリリカル短編の中でもベストの一つ「おもいでエマノン」。
それがこんなにシリーズを重ねていたとは、最初の短編をアドベンチャーで読んだ後、フォローしていなかったものとしては驚くばかり。そして、それが短編集になり、今になってデュアル文庫で再録されて出会えるとは長生きはするもの。
とは言え読んでみると、「さかしまエングラム」は結構エグいし、「とまどいマクトーブ」と「うらぎりガリオン」は結構な未来SF。実はエマノンシリーズは、カジシン版「火の鳥」かと思わせる。
表題作以外では、現在に足が地に付いていてしんみりさせてくれる「しおかぜエヴォリューション」が良い。
●続生産現場がやさしく分かる本
浅見芳男
高圧ガス保安協会
その一言が安全を守る
変更があったら電話をください→電話をいただけますか? 相手に返事をしてもらって責任を感じてもらうだけで違う
記憶は事故のとりで
小さなトラブルの記憶は2年、大きな事故でも10年で記憶がなくなり、その反省と対策は失われ再発する
トラブルは時間軸で追う
時間軸による整理は有力な武器、トラブルシューティングを時間軸表に書き、現場を自分の目で観察する
ヒューマンエラーは結果であって原因でない
その上流にある作業現場や組織の問題を説明することが必要
回覧幻想
緊急、重要なものにマーク、ポイントの抜き出しアンダーライン、返信必要の有無、処理して欲しい人の名指し、不特定多数に頼むのは誰にも頼んでいないこと
圧縮空気
圧縮空気は皮膚に傷をつけて体内に進入し、場合によっては毛細血管を破裂させる
遊休配管、設備の危険
スラッジ堆積、危険物の吸着など、遊休で置いておくだけで危険である
先生であり生徒
教え教えられることがもっとも強い繋がり、教えるためには学びつづけなければならない
●彼はロボット
草上仁
いつもながら軽妙洒脱にしてSF短編集らしい作品集。今回は中ほどはショートショート群になっている。
「キーブの墓堀」は高速進化して最強遺伝子だけ生き残る惑星に宣教師が行ったら‥。宗教的なテーマながらも楽しくまとまっている。
「夢よもう一度」綺麗でないということもあるが、これはイマイチかも。
「キャンペーン虫」SFらしく現代風のSS。
「空白の一日」政治的なネタで、核戦争アルマゲドンを扱ったシュールなコミックSS。草上仁以外が書くとこう軽くは読めないかも。
「レッドアンドブルー」モダンタイムズ的なSSで、さらにシュールな世界。ゲーム的でもあり、秀逸。
「あてようか?」ちょっと怪談風の作家ネタSS。
「いたずら電話」これはイマイチ。
「暗号」乱数から意味を創作するコンピューターの話し。古典的なタッチもあってニュークラシックか。
「魂の問題」うーんなんと言ったものやら。
「かれはロボット」営業ネタにロボットものの古典のロジックを当て嵌めた傑作。ビジネスマンものというのは、ある意味で草上仁のおハコであり、彼の個性が良く出ていて、かつ面白い作品。表題作になるだけのことあり。
●太陽の簒奪者
野尻抱介
非常に異質な文明とのファーストコンタクトを描いたハードSFの力作長編。
日本作家の筆でこうした作品が読めるようになるとは。
力強さとヴィヴィッドな描写を感じるものの、中身の割には少し短すぎるかも。
とは言え存分に満喫させてもらった。
若手作家の力作シリーズという企画が、あの「あなたの魂にやすらぎあれ」や、「夢魔の降る夜」以来、20年ぶりと聞くと隔世の感を感じるとともに、己の年齢を改めて痛感する。
●レッド・マーズ
K.S.ロビンスン
大島豊
科学&社会ディティールに厚いKSロビンスンの代表作、マーズシリーズ第1弾。
ついに読んだという感じ。原書で読んだ「ANTARCTICA」も良かったが、こちらはそれに勝るとも劣らない。
前半の探検と開発の時代から、後半の政治と破綻の時代へと、いずれも厚い描写で迫力ある作品になっていると思う。第1弾で此処まで行ってしまうのであれば、第2弾、第3弾ではいったいどうなるのか? 次も楽しみな作品。
●賢いはずのあなたがなぜお金で失敗するのか?
Gベルスキー、Tギロヴィッチ
鬼沢忍
心の会計の問題:すべてのお金を平等に扱えない問題
その金額を苦労して稼いだものだと考えてみよう
損失の忌避の問題:損したことは手痛く記憶に残る問題
事前に損失にどこまで耐えられるか考えよう、総合的な視点で考えよう
保守的であることの問題:なにもしないことも選択の一つである
チャンスを逃したら後悔する事になるかどうか考えよう、リセットベースで考えてみよう
数字の持つ底力の軽視の問題:時間は偉大であることに無理解である
平均への長期的な回帰の力、複利の圧倒的な力
自信過剰であることの問題:無知の知は多くの人にとっては難しすぎる
人の意見は取り合えず聞いてから判断しよう、わからなかったら手間や面子を惜しまず調べよう
トレンドはフレンドではないという問題:上がり始めた株で儲かるのは上がる前から持っている人
トレンドに遅れまいとしてはいけない、トレンドの先に乗るか、さもなければ市場平均に頼るべし
●劫火
グインサーガ84
栗本薫
いよいよ佳境なので当然と言えば当然なのか俄かに風雲急を告げている。
死にそうで死なないナリスに最後に引導を渡す役はイシュトヴァーンなのか。
いまや風前の灯火のマルガ、次の巻でついにナリスの命運は尽きるのか???
●敗者のゲーム
チャールズ・エリス
鹿毛雄二
投資戦略の発想法で推奨していた一冊
かなり辛口の本で投資の実状とそれへの対処法をまとめている
失敗例は、複雑すぎ、保守的過ぎ、自社株志向、手数料軽視
運用機関は市場に勝てない、投資はいまや敗者のゲームであり、そこでは運用機関コストは無視できない
市場タイミングに賭けるのは悪魔の囁き、長期保有による平均への回帰を利用せよ
骨太の長期方針はパニックに対する予防薬で、これは投資家の責任範囲
長期計画が短期的に上手く行かないとき、まず打つ手は二倍まで買い増すこと
相場変動は気になるが、本当の問題はインフレの脅威である
世代を越えた運用をすれば年齢による戦略の変更など必要ない
一年に特定の一日を「あなたの」運用を考える日にしよう
お金に関することをオープンに時間をかけて納得がいくまで議論することは難しいが必要で有用
●帝王の殻
神林長平
第1長編「あなたの魂にやすらぎあれ」と繋がっていると言う三部作の第二弾という
火星、機械知性、暴走する少年、現実世界と心理世界の交錯
ディックと神林長平の典型的な要素が濃厚に重畳する満足感の高い一作
●戦士志願
LMビジョルド
小木曽絢子
ビジョルドのこのシリーズはバラヤーに続いて2冊目。読みやすく好感を持てるがもう一つ物足りない。
BQSFらしいハチャメチャなガジェットより人物描写を志向しているからか?
SFである必然性が薄いような気がする。
●ザゴール2
エリヤフ・ゴールドラット
三本木亮、稲垣公夫
TOCは現場の合理化だけのものではなくリストラの道具ではないという信念を篭めて書かれたか?
売却されそうな3つの会社をビジネスモデルの再構築で再生させるほとんどマジックストーリー
コンフリクトをもう一段大きな枠で共通目標へ定義しなおすクラウド
複雑に見える問題の因果関係を詰めて根本原因を突き止める現状問題構造ツリー
さらに未来のあるべき姿を描いて、それを実現するための問題を抽出していく未来問題構造ツリー
このほかに移行ツリーなどもでてくるが、ここらへんから具体性が落ちてくる
これは入門編で、この先はちゃんとしたTOCの書籍や講座を買いなさいということか?
●嵐の獅子たち
グインサーガ83
栗本薫
いよいよクライマックスで盛り上がってきている。
今回はイシュトヴァーン軍にスカールが襲い掛かっての大激戦!
一騎打ちで傷ついたイシュトヴァーンに近づくヤンダル・ゾック
パロ深く入ってしまいながらカレニア政府に歓迎されないゴーラ軍の決断やいかに?
●君が結婚前にしておく50のこと
初対面の人も一生付き合うかもしれないと思って接しよう
丁寧な返事より、早い返事
所有欲より行動欲
友達が行けなくなっても一人で行ってみよう
別れ際は「ありがとう」に加えて「楽しかった」と次の約束
パーティーに行ったら知らない人と話すのがマナー
会話が昔話ばかりなら、今日や明日の話しをしよう
自分で料理を作らない人は作ってもらう喜びがわからない
聞き上手は無口ではない、聞くボキャブラリーを増やそう
コピーを取るだけでも性格が出る
●投資戦略の発想法
木村剛
まずバランスシートを作ろう
自分の生活水準を管理できない人に投資などできない
個人投資家のメインエンジンは仕事と節約
生活支出の2年分の生活防衛資金を貯めよう
家は買うべきでなく借りるべき
株式は長期的には12%/年
個人投資家の強みは長期で見られること
大暴落でも平静で強い意志で戦略を貫けるか?
勝つと自分の実力、負けると運が悪いせいにする人は危ない
国内株式、国債、外貨預金の3本立てで考えよう
シンプルで換金性の高いものだけにしよう
個別株を自分で選ぼう、コツは自分が転職したいような会社を狙おう
デフレは怖くない借金をなくして現金や貯金を守れば良い
怖いのはインフレ、あっという間に現金が紙屑になる、これに備えて生き残る企業の株を
●インターネットで株取引
小山哲
内容はともかくとして、その内容を読みやすくまとめてある点では特筆に価する。
見開き2ページ、左にわかりやすい図解、右に1ページにまとめた本文、これでワンコンセプト。
決してそれ以上に詰め込まないし、どんな重要なことであろうが複雑なことであろうがこの量にまとめる。
複雑ならエッセンスと、それを修飾する他の因子に分けて、それぞれをワンコンセプトとしてまとめれば良い。
入門書というものの書き方のお手本を見るような良著。
●50時間で会社を変える!
水島温夫
儲かっている会社とそうでない会社の差は紙一重、違いは1%
あなたの会社はラッキョウ型か? それともきちんとコアがあるか?
現場の優秀さに支えられてきた日本企業、明快な旗印があれば現場は動ける
重要なのは事業の領域ではなく繁殖パターン、技術レベルと顧客価値の座標で自社を見直せ
余談だが当分科会は典型的なこだわり型
現場を動くようにするには定量目標を立てろ! 例:パスポートサイズ、翌日配達(顧客から見える価値であることが重要)
知能的金縛り集団から昆虫型反射集団へ
そのためにエース級社員を集めた50時間の場を
まとめに掛かるな、自社の顧客から見た本当の旗が見えるまで突っ込め
組織は誕生と同時に陳腐化を始める、事業企画提案を量産する仕組みが必要、ポールポジション制度
●金持ち父さん、貧乏父さん
ロバート・キヨサキ/白根美保子
優秀で真面目に働いているのにお金に一生困る人が多い
お金が増えても消費生活がその分アップすれば、結局お金に困り続ける
資産とはお金を生んでくれるもののこと、負債とはお金を食っていくもののこと
そう考えれば持ち家は資産などではなく負債であるのは自明のはず、なのに‥
会社を作って法律を味方に付けよう、会社は売上から経費を引いてから税金を払える
強い目的意識、毎日自己判断する、良い友人を選ぶ、新しい方法を仕入れる、自身への支払いをきちんとする、神話を持つ
●魔法の国ザンス3:ルーグナ城の秘密
ピアズ・アンソニイ/山田順子
ルーグナ城に住む幽霊のミリーとゾンビー。その二人はどうして幽霊やゾンビーになってしまったのか?
代替わりして主役は幼いドオア、タペストリーの中の800年前のザンスに飛び込んでの大冒険。
当時はゴブリンもハーピイも血気盛ん(?)、王座をめぐって奇妙なライバル闘争も。
そして若かりし日の生身のミリー。すべてがルーグナ城の命運を巡って交錯する。
収束性の高さでは前2巻をしのぐ傑作第3巻。ドオアの友人となる蜘蛛のジャンパーが良い味を出している。
●しびれるブランドを作ろう
中谷章宏/ダイヤモンド社
お客様の選択基準は「世界一」と「私一」の二つしかない
現場の人間は必ず仕方がないという、でもリーダーがそうだよねと諦めてしまったら終わり
サービスは突き詰めればスピード、お客様は二番目に来る人は必要ない
人間を相手にする仕事はいちばん難しい、だから結論は人間は素晴らしい!
●ザ・ゴール
エリヤフ・ゴールドラット/三本木亮:ダイヤモンド社
生産計画を扱った小説とは奇なり。しかし読んでみると成程と唸らされる。とりあえず実用性の高い「ハイキング」と「ハービーを探せ」の2章は必読、広く読んで欲しい。どんな仕組みも、できた途端に陳腐化を始め、実勢に合わなくなってくると逆にマイナスを生み始めるのかも知れない。気が付くとルールを守ることで一生懸命、生産性を下げていることがあるのかも。
そんなときに、
1:ボトルネックを探せ
2:ボトルネックをどう活用するかを決めろ
3:ほかのすべてを2の決定に従わせろ
4:ボトルネックの能力を高めろ
5:1に戻る
の思考プロセスは汎用的に役に立つように思う。
実際には1の前に0があって
-1:組織の本当の目的はなにか?
0:本当の目的を基準に考えると何を指標として選ぶか
1:その指標でみたときにボトルネックはどこか探せ
という感じか。このときに陳腐化したシステムが抵抗勢力になって本当の目的を隠して当座の目的(往々にして本当の目的のためになっていない)という物差しで反対意見の論拠となってくるという感じか。示唆に富んだ世評に違わぬ良著。
●グインサーガ82:アウラの選択
栗本薫:ハヤカワ文庫
ついにグインがクリスタルパレスの中へ! 暗黒の存在、王太子アモンはレムスさえも恐れる不気味な存在。そしてグインはついに古代機械と遭遇し物語りは一気に動き始める。グインはリンダを助けてなんと古代機械を使って脱出に成功! 衝撃の展開の一冊となった。
●火星軌道一九
谷甲州:ハヤカワ文庫
航空宇宙軍史の短編集。開戦初期の内惑星の航空宇宙軍の様々なポイントでの外惑星部隊との接触での苦闘を描いている。火星の貨物ランチャーで、そして外惑星から内惑星に向かう重水素タンカー軍をめぐって金星の貨物回収作業で、小惑星帯の会戦で、さらに軌道上から大気圏内への偵察が敢行されたタイタンで、そしてそこに潜む外惑星のフリゲートと遭遇してしまった旧式艦、そのフリゲートの進路に当たってしまった通信基地で。
谷甲州の小太刀の冴えが満喫できる一冊。
●去年を待ちながら
フィリップ・ディック/寺地五一、高木直二:創元推理文庫
星間戦争の劣勢の側の同盟軍にうっかり引っ張り込まれてしまった地球。その最高指導者の移植医と、異星人のドラッグに中毒してしまったその妻の話し。中期のディックらしさに溢れる作品。ドラッグ、古き良き日への追憶、錯綜する陰謀、タイムトリップによる状況からの脱出の試み。出来栄えという意味では、もう一つ物足りないがディックファンを満足させるものは揃っている。
●あなたもいままでの10倍速く本が読める
ポール・シーリィ/神田昌典:フォレスト出版
フォトリーディングのスキル本。個人的には完全なフォトリーディングが身についた感じではないが、読書に関するパラダイムシフトが生じて確かにかなり高速化した。
自分で生かしているなと思う部分を中心に要約すると、
1:読むということは一語一句を順に追うことを必ずしも意味しない
というよりほとんどの場合はそんな必要はまったくない
2:読書開始時点で目的意識を持つ
3:とりあえずどんどん読む、必要なら終わってから少し時間を置いて必要そうなところだけ読み直す
4:複雑な内容をきちんと把握する必要があるならマッピングして読む
●「嫌われる奴」ほど仕事ができる
谷川須佐雄:オーエス出版社
サラリーマンに関するさまざまな幻想を払拭する小気味の良い本。
サラリーマンの基本機能は仕事ができることであって、仕事時間が長いことや、人生をすべて会社に捧げていることではないというのは、当たり前なのだが一向に世の中で当たり前にならない不思議なこと。同じ仕事量をこなしている二人の人間がいるときに、残業して遅くまでやっている方が高く評価されるという時代は果たしていつまで続くのか?
この本に言わせれば、実はもうとっくに終わっているということになる。ただ、抵抗勢力があちこちに非常に多数いて、昔の基準に固執しているというのが現状だろうという分析。
21世紀に生き残れるサラリーマンには2種類しかないという結論は明快で痛快。会社が絶対必要とする技術や能力があるか、会社を辞めても通用する市場価値の高いスキルがあるか。
抵抗勢力に対する挑戦的な姿勢が強すぎる嫌いも感じるが、このくらい書かないとわからない(いやここまで書いてもわからない)人が少なくないということなのだろう。
●スピード意識改革
中谷章宏:ダイヤモンド社
中谷本のキーワードはスピードだが、この本では以下の4つがキーセンテンス。
「同じことを二度考えると寿命は半分になる」
「このスピード時代に時期尚早ということはない」
「3倍働くより3倍のスピードで働こう」
「2歩進んで2歩下がっても前進だ。これをゼロと数える意識をまず変えよう」
最後にスピードではないが本についての一言がなるほどと思わせる。
「あなたがあの本にあって感銘したという本は本もさることながらそのときあなたが悩んでいた問題が大きかったということ」
●グインサーガ81:魔界の刻印
栗本薫:ハヤカワ文庫
この巻ではパロを目前にしたイシュトヴァーンのゴーラ軍とグインのケイロニア軍が国境沿いで龍頭たちの工作でぶつかり合いそうになる。いずれ三国志の二巨頭としてぶつかるのは必至だが、ついにかと思わせながら、呆気ない肩透かしで第1ラウンドは終わってしまう。グインとヤンダルゾック・レムスの会見がついに実現し、グインは招きに応じて敵の心臓部クリスタルへと赴くことになる。クライマックスへの長い長い序幕がさらにムードアップして続いている感じ。
