記録メディアの記録

2001/08/22


 デジカメ百花繚乱。店頭には多くのデジタルカメラが陳列され、毎月のように新機種が発表されている。そんな中、巷の人々はとっくに理解している(?)のかもしれないが、僕がいまひとつ理解できていない物がある。それは、デジカメで撮影された画像を保存する記録メディアの種類だ。

 いろんなところで名称を目にしたり、店頭で実物に触れたりもするのだが、はっきり言ってどれがどれだが良く分かっていないのが現状だ。分からなくても別に困りはしないのだが、昔から分からないものを分かりたいという性格なので、ここ最近どうも気持ちが悪いの。

 という訳で、現在主流になっている様々な記録メディアについてまとめてみることにした。完全に自分の為である。


スマートメディア

 東芝によって提唱されたメモリカードの規格。当初は「SSFDC(Solid State Floppy Disc Card)」と呼ばれていたが、1996年10月からスマートメディアの呼称に変更された。東芝を始め160社を超えるメンバが参加するSSFDCフォーラムにて規格の管理・運営が行われている。

 メディアの大きさは45ミリ×37ミリ×0.76ミリ。縦横はコンパクトフラッシュ(後述)と変わらないのだが、厚さが極端に薄いのが特徴。重さは約2グラム。現時点での最大容量は市販品で128MB。

 カード内部にフラッシュメモリチップを数個内蔵し、カードの片面に装備された平面電極端子(22ピンに相当)によって、各種機器とデータのやり取りを行なう。この端子部分が剥き出しなっているので、取り扱い面で多少不安がある。

 フラッシュメモリそのものがプラスチックカードのなかに埋め込まれているので、構造が簡単で薄く、安価に製造できるのだが、データの書き込みなどを制御するLSIなどは搭載されていないので、その機構をカードを挿す機器(デジカメ本体など)に実装する必要がある。

 ちなみにスマートメディアには電圧が3.3Vのものと5Vボルトのものがあり(カード外観の切り欠きの位置が異なり、電極端子のある面も逆)、使用するにはそれぞれの電圧に対応した機器でなければならない。現在出回っている8MB以上のカードは概ね3.3V駆動である。

 パソコンなどスマートメディア・スロットを持たない機器とのデータ交換用としてPCカード型(ATA準拠メディアとして認識させる)、フロッピーディスク型(フラッシュパス)などの専用アダプタが用意されている。


マルチメディアカード

 Siemens社が考案し、SanDisk社と共同開発したメモリカード規格。1998年に両社とNEC、日立、Motorola社、Nokia社などで業界団MMCA(MultiMediaCard Association)を設立し、規格の策定など行っている。

 メディアの大きさは32ミリ×24ミリ×1.4ミリ、重さ1.5グラムと市場に出回っている中では最小かつ最軽量のメモリカードである。現時点での最大容量は64MB。仕様上は512MBまで拡張可能となっている。また、マスクROMを使用したROM仕様のカード、セキュリティ機能付きのカード(後述)も存在し、小さいながら様々なポテンシャルを持っている。

 スマートメディアと同じく、PCカード型、フロッピーディスク型のアダプタが製品化されている。


セキュアマルチメディアカード

 日立製作所、三洋電機、富士通によって開発されたメモリカードの規格。マルチメディアカードに著作権保護機能(セキュア機能)を付けたもので、この秋に開始される予定の音楽配信サービス「ケータイdeミュージック」向けとして投入された。

 大きさ、厚さは通常のマルチメディアカードと全く同じ。異なるのはデータを暗号化・復号する機能と、暗号化の際に必要となるライセンス鍵を安全に格納できる領域を持っていることだ。

 それ以外は基本的にマルチメディアカードと同じ仕様。既存のマルチメディアカード対応製品と互換性があるので、セキュア機能を必要としないデータならば問題なく読み書きできる。もちろんセキュリティを伴うデータはマルチメディアカードには移せない。


SDメモリカード

 松下、東芝、SanDiskの3社が共同開発した新しいメモリカード規格。マルチメディアカードにSDMI(デジタル音楽著作権保護協会)の規格に準拠した著作権保護機能を付けたものである。前述の三社を中心としたSDアソシエーションによって標準化活動が進められている。

 メディアの大きさは32ミリ×24ミリ×2.1ミリ。マルチメディアカードと厚さだけが異なる。現時点での最大容量は128MB。仕様的にはマルチメディアカードの上位互換となっているので、SDメモリーカード用スロットの多くは、マルチメディアカードも利用できる。

 SDメモリカードの著作権保護機能はセキュアマルチメディアカードのそれとは互換性は無い。例えば、セキュアマルチメディアカードを使って「ケータイdeミュージック」からダウンロードしたコンテンツはSDメモリーカード・スロットのある機械に挿入しても音楽を聴くことはできない、って事になる。どういう経緯があったのかは不明。

 また、カード内にコントロール・モジュールを内蔵しているので、カードにさまざまな制御機能を持たせることができる。I/Oカードとしても使用可能なのでBluetoothやデジカメ、FM/TVチューナー、GPS、ボイスレコーダーなど様々な用途が考えられる。ただ,登場して間もないこともあり。メディアの価格が64MBで10,000円程度と高価なのがネックか。

 閑話休題。だんだん頭が混乱してきた。ここで一回整理しよう。マルチメディアカード、セキュアマルチメディアカード、SDメモリカードの3つは同じ系列である。最初にマルチメディアカードありき。その後、セキュリティー機能(主に「ケイタイdeミュージック」向け)を付加したセキュアマルチメディアカードが登場。それとは別にSDMI(デジタル音楽著作権保護協会)に準拠したSDメモリカードが登場。セキュアマルチメディアカードとSDメモリカードはそれぞれマルチメディアカードの上位互換になっている。但し、セキュアマルチメディアカードとSDメモリカードではセキュリティー機能に互換性が無い。う〜ん、分かったような分からないような・・・。

 もっと良く分からないのが東芝の動きだ。スマートメディアを開発しておきながらSDメモリカードにもコミットしている状態はどう理解すれば良いのだろう。東芝の西室社長曰く「スマートメディアも並行して販売する。従来のメディアとの最大の違いは著作権保護機能にある」だそうで。どうなることやら。


コンパクトフラッシュ

 SanDisk社が提唱し、独自開発した小型メモリカードの規格。早くから各社で利用され、最も一般的なメモリカードの一つである。メディアにはType IとType IIの2種類が存在し、大きさはそれぞれ43ミリ×36ミリ×3.3ミリ、43ミリ×36ミリ×5ミリ。現時点での最大容量は1GB。著作権保護機能は持たない。

 カード内部にフラッシュメモリと、外部との入出力を受け持つコントローラ回路を搭載。外部入出力はATA規格に準拠しているので、多くのOS(DOS、Windows、OS/2など)から標準的に扱うことができ、パソコンからは通常のハードディスクと同じように認識される。また、理論的に扱える最大容量も膨大となる(FATの場合、理論的に2GBまで)。

 コントローラーがカード内に搭載されているのでI/Oカードとしても利用可能。既に様々なI/Oカードが発売中である。さらに外部端子の構造はPCカードに準拠しているので、専用のアダプタを介することでノートパソコンなどに容易に接続することができる。このアダプタは単に配線を延長してカードの長さをPCカードに合わせるだけ(制御回路を持たない)なので、他のメディアのアダプタよりずっと安価である(1500〜2500円程度)。

 正にその名の通りコンパクトなフラッシュカードと言える。そういう意味では汎用性は高いのかも。


メモリースティック

 1997年にソニーによって開発された、フラッシュメモリを使った小型のメモリカード規格。ソニーから発売されている多くのデジタル家電製品(デジカメ、ビデオ、パソコンなど)にはメモリースティック専用のスロットが搭載されている。例えばハンディカムで撮影した映像をメモリースティック経由でVAIOに取り込む、なんてことが簡単にできてしまうのだ。デジタル家電包囲網とも呼べる囲い込み作戦が進行中である。AIBOのお尻(の穴)にもスロットがある。メモリースティック自体、家電関連の商品として多くの電気店で販売しており、入手が容易であるというのも大きな強みだ。

 メディア大きさは21.5ミリ×50ミリ×2.8ミリ。縦長のチューインガって感じだろうか。現時点での最大容量は128MB。色はお馴染みのVAIOカラーだ。

 メモリースティックもコンパクトフラッシュと同じく、カードの中にフラッシュメモリ、コントローラなどが搭載されている。異なるのはデータ転送にシリアルインターフェースを採用していることだ。データを一列に並べて次々に送信するという単純な方式であるため、カード端子の数は10ピンと少なくて済み(ちなみに端子には直接さわれない構造になっているので故障しにくい)、データの送り方さえ決めておけば異なる機器間での互換性を容易に実現できるのだ。将来、大容量のメモリースティックが出たり、周辺機器が登場しても柔軟に対応できるだろう。

 実際にメモリカード以外の用途にも使えるようにインターフェイスの拡張フォーマットが策定されており、モデムやCCDカメラ、GPSユニットなどが発表(参考出品レベルではあるが)されている。

 唯一の不安材料は、今のところ殆どソニー製品でしか採用されていない事だろう。ベータマックスの悪夢を思い出すまでも無く、必ずしもスペック=デファクトにはならないのが世の常である。今後の動向に注目したい。


MGメモリースティック

 前述の汎用メモリースティック(VAIOカラー)のとは異なり、白い色をしているのがMGメモリースティックである。

 MGメモリースティックは、MagicGateという仕組みによって著作権保護された音楽データの記録が可能になっている。要はデジタル携帯プレーヤー機能を使うための仕組みを備えたメモリースティックなのだ。それ以外は普通のメモリースティックと全く同じ。

 MagicGateは1999年にソニーによって開発・提案された、SDMIの規格に準拠した著作権保護機能である。機器とメモリースティックの両方がMagicGateに対応していれば著作権が保護された音楽データを保存したり、その音楽を聴くことができる。しかし、どちらか一方でも対応していないと著作権が保護された音楽データを保存したり聴いたりできない。要は機器とメモリースティックとの間で「MagicGate対応」であることの相互認証をしているのだ。更にデータ自体も専用のチップによって暗号化されている。

 少し話は逸れるが、MagicGateの機能をパソコン上で利用するための仕組みとしてOpenMGというものがある。これはMagicGate対応機器に搭載されている専用チップの処理をソフトウェア的に実現することで、パソコンを(見かけ上の)MagicGate対応機器にするための機構である。OpenMGを利用すると(MGメモリースティックと同じく)データは暗号化された状態でパソコンのハードディスクに記録されるので、ネットワークなどへの不正な配信を防止することができる。また、パソコンは見かけ上のMagicGate対応機器になっているのでパソコンからMGメモリースティックへセキュリティ情報の付いたデータを記録することもできるようになるわけだ。(もちろんパソコン上でも閲覧・再生が可能)。

 さあ、またまた頭が混乱してきた(笑)。もう一度、整理しよう。メモリースティックにMagicGateというSDMI準拠の著作権保護機能を付けたのがMGメモリースティック。MagicGateとは対応機器の間で相互認証(とデータの暗号化)を行う技術。さらにパソコンでMagicGateの機能を利用するための技術がOpenMG。パソコンを見かけ上のMagicGate対応機器にするためのソフトウェアで、パソコンとMGメモリースティックとの間でセキュリティー情報付きのデータが転送できるようになる。ふぅ。なんてややこしいんだ!。


メモリースティックDuo(仮称)

 現在開発中のメモリースティックの最新バリエーション。メモリースティックを着脱可能な小型のメディア部(20ミリ×31ミリ×1.6ミリ)とカートリッジ部に分けた、さらに小さなサイズのメモリカードである。小型化されたメディア部は、携帯電話、PDAなどの小型端末向けの展開を見込んでおり、従来のメモリースティックとの互換もは維持される。デジカメに搭載してくるのは時間の問題だろう。著作権保護機能なども装備される予定。


まとめ

 結局、現状は小型記憶メディア覇権争いの真っ最中だということだ。松下vsソニーというどこかで見たような図式に多くの企業が入り乱れてのバトルロイヤル状態に成りつつある。今後、どれが主流になっていくかは誰にも分からない。生き残るってのと主流になるってのは根本的に違うのだ。

 今回まとめた内容も数年後には無用の長物になっていることだろう。下手すりゃ全滅している可能性だってあるのだ。でも、数年後に見直したときに「ああ、そんなのあったなあ」と懐かしく思い出せれば、それで良いような気もする。まあ、取り合えず個人的にはスッキリした。デジカメなんぞを購入するときの参考になれば幸いである。



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