ワンダースワン危うし



 少し前にニンテンドーゲームキューブが発表されたのはご存じの通り。長い間「ドルフィン」という開発コード名で知られていた任天堂の次世代ゲーム機が遂にベールを脱いだ瞬間であった。Apple社のPower Mac G4 Cubeが発表されたばかりということもあって、そのデザイン的な影響を指摘する声もチラホラ聞かれたが、まあこれは偶然だろう。個人的には形状よりも搭載するチップがどちらもPowerPCであることの方が興味深い。PowerPCが発表された当時はパソコンだけじゃなく、いろいろな用途に展開していくって予定だったけど、結局はMacにしか使われてないもんねえ。ゲームキューブは100万台単位で売れるだろうから、チップ市場はちょっと面白くなるかもしれない。

 前にも書いたが僕はこの手のゲーム機にあまり興味は無い。スペックだけどんどこ膨れ上がって使い勝手がないがしろにされるゲーム機の現状にどうしても馴染めないのだ。年食ったのかも知れん。どっちにしろPS2でさえ購入する予定はないのだがらキューブだろうがなんだろうが同じ事である。興味が無いものに対してはトコトンまで興味が無いのだ(言い切り)。

 てな訳で僕が注目したいのはゲームキューブではなく同時に発表されたゲームボーイアドバンスである。ドルフィン騒ぎでちょっとインパクトが薄れた感もあるが、なかなかどうして意欲的なマシンである。筐体の大きさは82mm×144mm×24.5mm。液晶スクリーンは2.9インチで32000色の表示が可能。重量は約140g。駆動時間は単三アルカリ電池2本で15時間。既存のゲームボーイカラーよりも一回り大きくなっているもののそれなりに挑戦的なスペックではある。

 そんな中、まるでタイミングを見計らったようにバンダイがワンダースワンの新機種、ワンダースワンカラー(ネーミングひどすぎ)を発表した。こちらの大きさは74.3mm×128mm×24.3mm。GBAに比べてかなり小さい(たかが2cmと侮るなかれ。携帯ゲーム機においてこの差は大きいのだ)。液晶画面は2.8インチで同時発色最大241色(総色数4096色)を表示可能。重量は95グラム。駆動時間も単三アルカリ電池1本で20時間といろんな意味でGBAを凌いでいると言えるだろう。ベストバランス追求したというだけあって、今までのWS精神を踏襲した素晴らしい仕上がりだ。画面のカラー化という難儀な機能追加にも係わらず、大きさや重さが今までと殆ど同じというのは特筆に価する。「変わらない」ってのはとても大事なことだと思うよ僕は。その他にUSBへの対応や汎用メモリモジュールの利用などいろいろなフィーチャーも紹介してはいるが、個人的には携帯ゲーム機の拡張性などどうでも良い。携帯ゲーム機は「如何に携帯できるか」という点が最大の争点になってもらわなきゃ困るのである。

 僕が現行のワンダースワンを購入したのは約一年前。当時、既にカラー化を果たしていたゲームボーイではなくモノクロ表示のワンダースワンをあえて選択したのであった。とにかく小さい。そして軽い。単三電池1本で驚くほど長持ちするし、本体サイズに対して画面の比率が大きいのも良い。携帯ゲームという特性をとことんまで追求し、あえ機能を絞り込んだという潔さに感服したのである。この一年間、ちょっと遠出をするときには必ずカバンの中にワンダースワンを忍ばせていた(埼玉在住なので常に遠出になるのだが・・・)。僕の想像通り、ワンダースワンは携帯ゲーム機として非常に満足できるものであった。

 しかしそれは僕がそんな風に思うだけであって、実際の市場においては新しいワンダースワンを投入しようともかなりの苦戦を強いられるのではないかと予測する。現行のワンダースワンは累計で150万台以上出荷されている。僕の記憶が確かならば、100万台を突破したのはあっという間だった。ゲームボーイカラーが全盛を極める中、モノクロ画面のゲーム機が(個人的には素晴らしいゲーム機だと思っていたにせよ)これほど成功するとは思っていなかった。驚いたってのが正直なところである。ところが100万台を突破したあたりからどうも雲行きが怪しくなってくる。どんなに多めに見ても「泣かず飛ばず」というのが今の状況だろう。(それでも累計で150万台というのは立派ではあるが)。

 原因ははっきりしている。「ソフトのラインナップが貧弱」。これに尽きるのだ。今でも毎月のように新作は発表されるのだが、その多くが一部のマニアックな層にターゲットを絞ったゲームなのである。いくらバンダイが得意なキャラクター戦略とは言えガンダムを題材にしたゲームばっかり発売されてもねえ。 隣の芝生のピカチューは魅力的なのかもしれないけどさ(苦笑)。ハードウェアは携帯ゲームの特性を追及した良いものに仕上がっているんだからソフトウェアも同じように知恵を絞って欲しいんだよね。結局、僕なんか「グンペイ」と「クレイジークライマー」しか持ってないもんね。欲しいゲームが見当たらないってのはゲーム機にとって致命的だよ。

 このまま終わっちゃうのも可哀想なのでちょっと希望の持てる話を最後にひとつ。ワンダースワンカラーは12月に発売予定だけどそれと同時にファイナルファンタジーがカラー対応ゲームとして発売されることになってるのだ。これこそ僕が以前に主張していた「過去に人気のあったゲームを移植していく」という方法論ではないか!FF自体には全く思い入れは無い(生まれてこの方FFシリーズをやったことない)けれど、こういう路線が成功すれば第二弾、第三弾っていう可能性が出てくるはずだ。その暁には、しつこいようですが「平安京エイリアン」とか「エレベーター・アクション」の移植をお願いしますね。