デザインワールドふたたび



 WEBページを作成しているうちに、デザイン全般に興味を持つようになった。前々からデザイン的な要素の多い絵画(ウォーホール、へリング、リキテンシュタイン等)に興味を持っていたのだが、本格的に嵌まったのはこれが初めてである。

 小さい頃から絵を描くのは好きだったし、短い期間ではあったが絵画教室にも通っていた事がある。その頃においても風景画よりはよりデザイン色の強い題材を描いている方が断然楽しかった。静物画や風景画はその対象となる正解データが存在しているので、その技量や完成度は一目瞭然である。初心者にとっては描いたものが正解データにそっくりかどうかが完成度の分かれ目となる。訓練すればそれ以上の表現に楽しみを覚えるのかもしれないが、基本技術の伴わない子どもにとってはそんなことに興味が無い抽象画はあくまでも抽象的な表現で構わないわけで、極端な話、目茶苦茶に描いたとしても「これで完成」と言い切ってしまえばそれでOKという部分がある。美術の先生に誉められたのもほとんどがそんな正解データの無い題材のものだった。昔からフェィクが好きだったんだねえ。

 元々、そういう類のものが好きなのであるということに薄々気が付いてはいたのだが一度、その事を認めてしまってからは怒涛のごとく突き進んでいる。少し前までは本屋に行くと音楽とPC関連の所を巡っていたのだが今では美術関連に直行、何時間も居座るようになった。AXISやアイデア、design plexなどの雑誌にしてはちょっと高価なデザイン専門紙も購読するようになった。また、各種デザイン展にもちょくちょく顔を出すようになった。巨匠とよばれる著名な画家の展覧会と比較すると、その規模は小さいものばかりだが、そこで発信されるカウンターカルチャー的なイメージは非常に刺激的だ。WEBデザインなんかはその代表的なメデイアである。

 結局、音楽でも何でもそうなのだがその作品と接する事によって独自の世界観を垣間見せてくれるようなものが圧倒的に好きだった。僕のすべてはこの部分に帰結する。イメージの固まりが好きなんだねえ。とにもかくにも今はいろんなデザインに接しているだけで楽しいのだ。

 単にデザインといってもその範囲は広く、プロダクトデザインや建築関連、ポスターやCDジャケットなどさまざまである。その中でも今一番興味があるのがタイポグラフィーである。情報を伝えるために発明された文字という素材を使って独特なイメージを構築するという潔さがなんとも気持ち良い。タイポグラフィーという形態は文字が主役なので、結果的にシンプルになることが多い。服でも何でもシンプルなものが好きな僕にとっては好都合である。また、文字はそれ自体意味を持つ素材なのでその表現が見ているものにダイレクトに伝わる。小難しいコンセプトを振りかざすような作品に比べてそのわかりやすさは非常に魅力的だ。

 普段の生活の中でタイポグラフィーに最も接する機会があるのはレコードのジャケットではないかと思う。それもブルーノートを筆頭にジャズのジャケットはタイポグタフィーの宝庫だ。その歴史もさることながら数も膨大に存在する。ジャズレコードのジャケットだけをまとめた写真集が出ているほどである(もちろん即購入!)。さまざまなフォントを用いてジャケットいっぱいに表現されるアルバムのタイトルとアーチスト名。記号的にはたったそれだけの意味しか持たないのだがそのイメージも多様性は目を見張るものがある。タイポグラフィーの強みとして文字情報としてもアート作品としても成り立つことが可能であるという点が挙げられる。レコードジャケットとしてこれほど御誂え向きのものもないだろう(また旨い事にその形状は真四角なのである)。

 自分でも少しタイポグラフィーの真似事なんぞをしている。文字さえ使っていればとりあえず何かそれっぽいものは出来上がるので、休日など何時間もいろんな文字をとっかえひっかえして遊んでいる。敷居が低いってのは素人にとっては重要なファクターである。やってて楽しくない事は誰もやりたがらないに決まっているし、その楽しみにたどり着くまであまりに時間がかかってしまうものは、途中であきらめてしまう事もある。僕のような飽きっぽい性格の者にとってはちょうど良いおもちゃが手に入ったような感覚である。

 また、作った作品がただのマテリアルとして存在するだけでなくWEBとして公開することで実際に利用する事ができるというのが他の物とは大きく異なる点である。最終的な目的とまでは思わないが、その行き先に宛てがあるって言うのは何かを作る上での動機としては充分ではないだろうか?結局、物を作るっていうのが好きなんだよねえ。

 美しいデザインを見て、なぜ「美しい」と思うのか、なぜそれに惹かれるのかと興味は尽きないが、しばらくはデザインにどっぷり漬かった生活が続きそうである。G3Macに買い替えようかなあ。ひょっとしてPhotoShopとIllsuratorも必要か?ってことはプリンタもグレードアップするってことになるのか。音楽がどんどん遠くなっていくなあ。

「デザインは人生だよ、君」ブルース・ハナー