IE 4.0決別宣言



未来の技術

 男の子ってものは未来を予感させてくれるような新技術に目が無いのだ。スペースシャトルの打ち上げや火星探査衛星にわくわくしたり、Appleのエージェント技術であるナレッジナビゲーター構想に苦笑したり、本田技研が作った生々しい動きのロボットに目が点になったりと期待するしないに係わらず、そういう試みを垣間見るのが好きなんである。男性の皆が皆そうであるのではないだろうし、逆に女性にもそういう人たちはたくさんいるのかもしれない。どっちにしろ僕としては20年前の未来像(「動く歩道」とか「立体テレビ」とか)的な現実離れした発想(というか怪しさ)が好きなのである。また、そういうものに人生を賭けるという馬鹿馬鹿しさ、無邪気さに非常に興味を惹かれる。こういうものを開発している人はお金や名誉の為にやっているのでは無いと思う。その実現させようとしている何かを実際に「見てみたい」だけなのだ。開発者に於いてこれ以上の欲求が存在するだろうか?

 コンピューターってのはそういう物の代表と言えるのではないだろうか? 元を正せばただの計算機みたいな物なのに、今や注目度No.1である。筐体の中で何がどう動いているのかが分からないところがその注目度を増しているような気がする。 「よくわかんないけどなんかすごい」みたいな・・・。それに駄目押しをするのが昨今のインターネット技術だ。「世界と繋がる」というキャッチコピーのなんと夢のある(うさん臭い)ことか(笑)。Java, VRML, Dynamic HTML, ActiveX, Castanet ・・・怒濤の如く発表される新技術の数々。みんな口をそろえて「今はインターネット黎明期、これからはこれが業界標準になる」といって自信満々。どれもこれも非常に興味をそそられるではないか。やっぱり「よくわかんないけどなんかすごい」って感じで(笑)。どうでもいいけど「インターネット黎明期」と言われてから結構経ってるような気がするんだけど気のせいか?

ずーっと黎明期だったりして...

IE4.0登場!!

 今度発表されたのInternet Explorer(IE4.0)はプッシュ技術を導入、デスクトップ上でのチャネル情報表示と今までのバージョンアップとは比べものにならないほど(今までのが酷過ぎたという話もある)新機能盛り沢山である。JavaやJavaScriptにもようやくまともに対応したようで(今までのが酷過ぎたという話もある)いよいよ勝負に出たというところか。Netscapeも同様に機能追加してバージョンアップしたのだがなんとなく地味な印象を受ける。どちらも今は一歩も譲れないという感じで激しいシェア争いを繰り広げているが、数字的には着実にIEが伸びてきているようだ。やっぱり無料ってのが強みか?

今、本当にヤバイのはAppleじゃなくNetscapeだという話もある。

 で、ご多分に漏れずやっぱり試してみた訳です、IE4.0。インストールして最初に目に止まったのが,ウィンドウのリアルドラッグ機能(っていうんだっけ? ウィンドウドラッグ時に透明にならないでそのまま移動できるってやつ)。これが気持ち悪いんだな、「無理無理〜っ」って感じで(笑)。CPUの悲鳴が聞こえてきそうだ。そしてTreeViewコントロール(エクスプローラの左側)の描画処理がなんだか変更になったようでフォルダとかをクリックすると「シュルシュルシュルッ」てな感じでそのアイテムが伸び出てくる。見た目処理が速くなってる「ような」気はするのだが実際はどうなんだろ。ここまではインターネットと全然関係ない。ブラウザをインストールしただけでOSのインターフェイスが変わっちゃうというもの如何なものかとも思ったが、まあそれはそれ。IE4.0はデスクトップとの融合ってのがキーワードだから必要なことだったのであろう。すごく小さいレベルでのOSバージョンアップと思えば別にどうということはない(何がアップしたのかは知らないが)。

 いよいよ肝心のブラウザ機能を使用してみることにする。アクティブチャンネルだのアクティブデスクトップだの見なれない機能が追加されていてなかなか面白そうである。早速いくつかのニュースチャネルを登録しデスクトップに表示してみた。デスクトップに情報を直接表示する(というか張り付いている)っていう状態は、奇妙というか奇抜というか無理矢理というか、なんとなく違和感を感じる。と同時に「どうやってるんだろう?」と思ってしまうのはソフト屋の性か。(自社のOSだからなんでもできて当たり前なのだが・・・)しかし、僕は会社から接続できるから、ある程度高速に、また長時間繋ぎっぱなしにできるのだが、自宅からダイアルアップで接続してる人はこんなもの利用するのだろうか?

それにしてもブックマークは相変わらず「お気に入り」っていう表記なのね(苦笑)。

 まあ、それは良しとして「大幅に機能アップした」との下馬評のブラウザだが基本的な機能は前と大差ないような印象を受けたのは僕だけだろうか。いろいろボタンやらなんやら付いているが、やっぱりよく使うのはいつもの機能になってしまう。「履歴」の情報もURLで表示されるのでどれがどれやら探すのに苦労してしまう。「戻る」ボタンを連打したほうが速いんではないだろうか? あと、やっぱりページのロード待ち時間はどうしようもない問題である。やはりソフトウェアだけではこれ以上の高速化は望めないんだろう(とっくに分かってはいるが)。結局ユーザが一番何とかして欲しい部分は何も解決されていない。ソフト開発者の限界がここに見える。

そして事件は起きる

 どんなソフトでもそうだが一番気になっていたのは「機能」よりも「安定性」である。はっきり言って今のところ安定しているブラウザってものは世界中どこにも存在しない。ブラウザはたまに落ちる、というのが当たり前になっている。残念ながらIE4.0も例外ではなかった。実際問題としてどのくらい困難な処理を行っているのか分からないのでなんとも言えないのだが、とにかく安定しない。なんでブラウザソフトって安定しないんだろう。まだ試していないがNetscapeの新しいやつもこれに関しては同じなのであろう。まあ、それでも「OSを作ったメーカー」なんだからそのOSに最適化されているんだろうという希望的観測のもと、IEをメインに使用することする(と言うか、していた)。

 がしかし、しばらく使っているうちに Windows 終了時にエクスプローラ(IEではない)がページ違反エラーを頻発するようになった。エクスプローラはエラーが発生すると自動的に復旧するようになっているようで、(つまりOSは再起動しないんだけどエクスプローラ自体が再起動する)いくらやっても Windowsを終了できないという状況になってしまう。はじめは何らかのシステムファイルがこわれたのかと思ったが、試しにIE4.0をアンインストールしたらその現象は全く再現しなくなった。犯人はこいつと断言はしないが限り無く黒に近いグレーである。「何か怪しいなあ」と思ったのだが新し物好きの虫が騒ぎ、性懲りもなくまた再インストールしてしまった。このときはこれが地獄の始まりだとは想像するわけもなく・・・

 再インストール後は、比較的(あくまでも比較した場合という意味)快調に動いていたのでアクティブチャンネルをバンバン追加、デスクトップにニュース画面を表示したりといろんな機能を次々と試して遊んでいたわけです。調子に乗り過ぎたのか、またもやIEがハングしてしまい「ありゃりゃ」と思いつつ Ctrl+Alt+Del を叩いた。

 いつもと違うことが起こっているのに気づいたのはそのときだった。「Explorer 一般保護違反 0x00*****」という見慣れぬメッセージが突然表示され、目が点になった。Windowsアプリが出すようなメッセージボックスではなく、ドライバとかが表示する背景が白くて大きめのあれだ。結構厳しいエラーが発生したようだ。でも、まだこの時点でも「今回はいつもより酷い落ち方だなあ」位にしか思ってなかった。でまた、「ありゃりゃ」と思いつつ Ctrl+Alt+Del を連打連打!! => リブート。画面が暗くなってリブート処理が走り、煙草でも一服するかと思って立ち上がったそのとき、画面に表示されたメッセージを見てサーッと血の気が引いた。

"Non-System disk or disk error"

 Windows95が起動しない。なぜ?  頭の中は何が起こったのか分からずパニック状態。調べてみるとWindows95がインストールされているハードディスク(パーティション領域)自体を認識していないようである。認識しないんだからシステムディスクが無いと言われても仕方ない。「やってもた・・・」と呆然としながらも思いつく限りの復旧作業を試みる、が全然駄目。身体中から力が抜けて行くのが分かる。

 たまたまこの事件の前日、仕事の都合上NT4.0を一日がかりでインストールしたばかりだった。こちらは違うパーティションにインストールしていたので何の問題も無く起動するのだ。NTから95のインストールされている領域(C:\)を見てみると、特に何の問題も無く普通に見ることができる。ファイルへも普通にアクセスできる。これでは何が悪いのか尚更わからない。とりあえず重要なデータをNT上からバックアップをとり(これができるってのも変だ)、その問題の領域をフォーマットして95を再インストールすることにした。そして次の悪夢がやって来た。もうお気付づきの方もいらっしゃるでしょう。

そう、NT.4.0からWindows95はインストールできないのだ。

 つまりどういうことかというとNT上から95の領域(C:\)は見える、しかし95の起動ディスク等で立ち上げて、その領域に95を再インストールしようとすると「このディスクは無効」と言われてしまう。認識しないんだからインストールできる訳が無い。NTから95の領域は認識できるがそこからはインストールができない。つまりNTの領域も含めて完全にハードディスクをフォーマットし、パーティションの切り直しからやらなければならないのだ。生きる希望を失うとはこの事だ(涙)。幸い、仕事上のデータは助かったのだが、95、NT環境を完全復旧するまでに丸2日かかってしまった。すっかりWindowsインストールのプロである。

笑ってお仕事

 なぜかWindows3.1が発売されたときのキャッチコピー「笑ってお仕事」という言葉を思い出した。あのときは「こんなOSじゃ笑って仕事するしかないなあ」と思った記憶がある。そして今回もあのときと同じようにもう笑うしかない、確かに。社運をかけたソフトが自社のOSにとどめを指すとはいったいどういうことなのだ。こんな腐れソフト二度と使うか!!  あんたらこそ世界一の

Too Much Monkey Business!

だ、こんにゃろめ!!。

 謹んでIE4.0をご使用中の皆様に警告させていだたきます。僕の様になる前に急いでアンインストールしたほうが良いかと思います。確実にこのような結果になるとは言いませんが、少なくとも「可能性」は間違いなくあるわけです。特別必要でなければ IE3.02 でも事足りるのではないでしょうか? (こっちの方がまだ安定してる)アクティブデスクトップは使えませんが、似たような機能を実現するものにIBMの NewsTickerやPointCastなどがあります。リアルタイムでニュースが見たいのであればこちらをお勧めいたします。

 くだらないシェア争いのおかげで余計な機能ばっかり増やして、重くて安定性の悪いブラウザになっちゃうんだったら本末転倒もいいところだ。つまらん争いに巻き込まないで欲しい。最初にも書いたけれどインターネットなんて、もはやインフラが整わないとどうしようもないんだから。でも、よくよく考えるとあそこの会社のソフトって

みんなそんな運命を辿りはじめてるんじゃないのだろうか?

 未来の夢を追求するのはもちろん重要なことである。そうやって数々の技術が僕達の暮らしを便利にしてきたのだから。しかし、いくら素晴らしい技術でも現状に適合していなければ全く意味が無い。自動車にロケットエンジンを積んだってどうしようもないのである。そういうのをマッチポンプと言うのだ。現状を踏まえた形でのインターネット環境を使いやすくするといった基本的なことが出来ていないのに、新しい技術がどうのこうのなんて言っている場合では無い。ユーザーが今一番欲しいのは何なのかをもう一度考えるべきではないだろうか。

P.S

どこでもいいからシンプルで軽くて安定してるブラウザを出してくんないかなあ・・・(Lotus, Novel, Sun, SGI, あんたらならできるだろ。指を加えて見てるだけなのか!!)