2000/08/04・福島オフミ報告[5](2000/07/29-30)

最終章・秘められた本性(07/30(日):競馬結果報告[2] & 総括)

 長いようで短かった、短いようで長かった、そんな中身が濃密に詰まった福島での2日間も、いよいよ佳境を迎え、メインR・吾妻小富士OPの発走が近づいてきた。土曜の午後から参戦し、結局ここまで見せ場すら作れずに来てしまった私としては、何としても一矢を報いたい。のんくんの呼びかけで、一旦、消えかけた闘争心に再度、火が着き、ハヤカゼジョーアンブラスモアに本当に最後の賭けに出ただけに、胸がドキドキしてきた。昨年のこのレースで単勝万馬券、馬連3万馬券を見事に的中させたのんくんは、その時、お世話になったタマルファイターから・・・と思いきや、「もうあれは去年のこと」とあっさり割り切って、今年はモンレーブ(!?)から。そんなのんくんに代わって今年はやえちゃんがタマルを狙ってきた。朝からオッズとにらめっこして出した結論だ。印刷されたオッズを見せてもらいながら、その根拠となるオッズの不可思議な変動を見ていると、妙に説得力がある。チャーさんはケープリズバーンの一発を狙っている。しかし、彼には既に切迫感などなく、一仕事終えての余興といった雰囲気があった。そりゃ、そうだろう。万馬券的中を含め高配当連発・・・これ以上、何を望むというのだ(笑)。すえちゃんはカートゥーンから。土曜を一人勝ちし、この日も前半は独壇場であったすえちゃんにとって、午後のチャーさんの快進撃には少なからず、動揺していたに違いない。誰にも優しく、心が広く、懐の大きさを感じさせてくれたこれまでのすえちゃん。しかし、その内には、誰にも負けたくないという自尊心/闘争心が秘められていることもまた、朝一番に起きての新聞をチェックする姿勢、更にはその人となりを見極める意味で最も重要と考えている瞳の輝きから、感じ取ることが出来た。そしてそれが初めてここに顔を出すことになった・・・。
 いよいよスタート。予想通り、アンブラスモアがハナへ。1コーナーまでは地方馬勢もあわよくばハナをと果敢に喧嘩を売ったものの、スピードの違いで行ききった。この攻防もあって、速い流れで進む。最近、差しに徹してきた◎ハヤカゼジョーもここでは好位を進む。流れが緩むことなく早くも3コーナーから4コーナーへ。後続が徐々にペースを上げ、ニッポーアトラスあたりが外から一気に捲りをかけてきた。ハヤカゼジョーはこのあたりで多少後退気味。ああ、もう終わってしまうのか・・・。半ば諦め気分になりつつあった。そして直線、アンブラスモアが突き放しにかかる。これはかなりセーフティリードに近い。さあ、問題は2着争い。早めに捲った組が意外と伸びを欠くなか、内ラチ沿いの経済コースを廻ってきたハヤカゼジョーが差しかえして2番手に上がってきた。一気に興奮状態に。「よし、粘れ、粘れ!」。渾身の絶叫だ!。そこへ外から一頭、襲いかかってきた。カートゥーンだ。うわー、まずい。「粘れー、粘れー」、悲鳴に近い絶叫を続ける。と・・・「4、差せ!、差せ!」・・・と、今までに聞いたことのない大絶叫が・・・一瞬、怯んだ。一体、誰だ!・・・な・な・なんとそれは、すえちゃんだった。これまで一度たりとも叫ばなかったすえちゃんが、何とここで絶叫しているのだ。うぉーーー、負けてなるものか、「粘れー、粘れー」「差せー、差せー」・・・まるで場内全体が両者の絶叫対決に呑み込まれたかのように、他には何も耳に届かなかった。時間にしておよそ10秒弱のこの攻防であったが、非常に長く感じられた。そしてゴール!・・・この対決を制したのは、すえちゃん・カートゥーンだった。「うわー、差されたー」・・・思わず背もたれに寄りかかってしまった・・・。
 「いやー、やられました」・・・とすえちゃんに語る間も与えず、即座に「小倉をちょっと買ってくる」と言って、発売機へと向かってしまった。一瞬の沈黙・・・皆、今の対決に圧倒されたようで、誰もがこの沈黙を破るタイミングを失っているようだった。そこで、後ろを振り向き、3人に対して一言・・・「今の、今回一番の対決じゃなかった?」・・・。「凄かったね」「あんなすえちゃん、初めて見たよ」「ありゃー、相当、張り込んでいたんだろう」・・・一気に言葉が溢れた。その後、席へと戻ってきたすえちゃん。しかし、なんか妙に、気まずいような、他人行儀のような、雰囲気が漂っていた。明らかに先程までの空気ではなかった。
 私は今回のオフミのなかでも、このすえちゃんの姿に出会えたことは、1・2を争う大きな収穫だったと感じている。よく、「弱い犬ほどよく吠える」と言われる。私の絶叫なんてまさにこれだ。自分の弱さ、言うなれば馬券の下手さをカバーする一つの防衛手段が絶叫なのだ。だから、私は僅かでもチャンスがあればすぐ絶叫する。しかし、馬券を、競馬をシビアに捉える真の勝負師は決してそういった姿を表に出さない。チャーさんがまさにそうだ。チャーさんはその感情を露骨には出さない。そりゃ、多少は出すが、そのほとんどを内面に押しとどめている。だからきっと、私が想像する以上に、土曜は悔しかっただろうし、これまでのオフミでも悔しい思いをしていただろう。すえちゃんも恐らくチャーさんと同じタイプだと思う。だからこそ、このレースでのすえちゃんの絶叫は非常に価値があったと思う。すえちゃんに理性の壁を破らせ、「本性」を引き出せたのだから。実際、あの絶叫対決に敗れた私、今までに無い悔しさを感じた。いつかこの借りは返す・・・そう心に誓ったのだった。
 小倉のメインはサマーS。私はタガジョーノーブルの前残りに期待したものの、まだ本調子に戻りきれていないのか、敢え無く失速。エイシンエーケンルールファストの争いに外から軽ハンデ・チアズビューティが突っ込んでくるのを見て、この馬に◎のチャーさんらが「差せー」と叫んでいたものの、馬群の真ん中を割ってきたヴィエントシチーに粉砕されていた。この叫びも、私にはどこか突き刺さるようなものがあった。先程の絶叫対決の敗北に続き、ここでは狙い馬が叫ぶチャンスすら与えずに失速・・・かなりこれは堪えた。
 そして、とうとうオーラス・12Rを迎えた。既に思考回路はオーバーヒート寸前。理性的な判断能力が欠如していた。もうこうなりゃやけだ。一撃で取り戻してやる!。残り少ない正常な回路をフル稼動し、展開を読み、奇跡の大逆転を、「差し差しのズブズブ」に賭けることにした。昨秋のここ福島でデビュー戦を追い込み勝ちした◎タイキソニックと、決め手だけなら最上位の○メルロースウィートの本線馬券につぎ込んだ。配当は100倍を越えている。これが決まれば土・日の競馬代+新幹線代を一気に取り戻せる。まさに最後の大勝負だ。チャーさんは余裕の表情で素直にブライティアリーフを、のんくんは連闘のユーワアクトレスで勝負を賭けていた(やえちゃんとすえちゃんは何だったかな?・・・ミスヒテンのようなウイニングシチーのような・・・あれ?やえちゃんはユーワアクトレスだったかな?)。さあ、いよいよ最後のレース、場内のターフビジョンに注目する。そこにはレース条件が映し出されていた。芝1000・・・(心の声「があぁぁーーーーーーーーー」)・・・実は私、このレース、芝1200だとばかり思っていたのだ!。だから、ウイニングシチーユーワアクトレスといった逃げ馬が人気になり、追い込み馬であるメルロースウィートの人気が一息だったんだ・・・。メルロースウィートの単勝が何で8倍もつくのだろうと不思議に思っていたのだ。何という愚かなことを・・・。やはり思考回路は壊れていたようだ。しかし、この場では決してそれを表には出さなかった。こんな心の動揺があったことは、さすがに誰も気付かなかっただろう。皆が最終Rを心待ちにしていた僅かの時間、私の心の中では大嵐が巻き起こっていた。レースは大方の予想通り、行った行ったの競馬でユーワアクトレスが逃げ切った。タイキソニックは4コーナーで失速、メルロースウィートは大外を豪快にぶっ飛んできたものの3着が精一杯だった。この最終Rで、ようやく、本当にようやく、のんくんがびしっと的中!。終わり良ければ全て良し・・・のんくんらしい痛快な的中であった。
 とうとう終わった・・・しばらく競馬は忘れたい・・・と思えるほどどっぷり競馬に浸かった2日間であった。駐車場へ向かい、通路を歩く皆も疲労困憊で、言葉少なだった。にも関わらず、その途中、閉まりかけていた売店で立ち止まり、ソフトクリームをご馳走になってしまった。これは一週前に福島に参戦していたtoshi-pさんからの情報(ソフトクリームが美味しかったらしい)を憶えていてくれての計らいだった。最後の最後まで本当に気遣いを忘れないお二人には本当に頭が下がる思い。バニラ&夕張メロンのミックス、最高に美味しかったよ!。駐車場に着き、ここでお開きとなった。ここで、すえちゃんとやえちゃんとはお別れ。もうこれまで語り尽くしてきていたため、最後の挨拶はあっさりしたものであったが、それで十分であった。
 私とチャーさんは駅まで、のんくんに送ってもらった。駅までの道中、皆、一様に静かであった。やはり疲れがたまっていたからだろう。ネット上では長い付き合いではあるものの、実際は初対面である。そんなメンツが5名揃い、1日半、ずっと一緒だったわけである。意識しなくとも精神的な負担はそれぞれ大きかっただろう。しかも競馬で脳も使い続けだったのだから尚更だ。さすがの私も気の効いた言葉が出てこなかった。しかし・・・この状態は私が良く言うブルーとはちと違う。これははっきり言っておきたい。ブルーの状態というのは、自責の念から、精神的に自分を追いつめている状態であり、こんなもんじゃない。この時は、肉体的疲労が大きかったし、自責の念など全く起きていなかった。ただし、のんくんから「次はリベンジしなきゃね」の言葉に即座に反応できず、「今は考えられません」と答えたのは事実である(笑)。あくまでこれは、思考回路が壊れていただけ。駅に到着し、とうとうのんくん、そして、福島ともお別れ。「またやりましょうね」・・・この言葉のなかに、今回のオフミを計画してくれたすえちゃん、のんくんへの感謝、出会うことが出来た仲間との友情、一人の予想家としてのプライド、その全てが凝縮されていた。福島、最高!。オフミ、最高!。仲間、最高!。

  −−− 完 −−−