■オフミ回想録
■more and more (Episode.1 命の次に大事なもの 『2004/06/12(土)・午前の部』)

 はじまりは一通のメールからであった。予想大会でもおなじみ、Skyさんが、仕事の関係で、しばらく上京してくるとの連絡を受け、これはもう、『やるっきゃない!』ということで、夏競馬目前、府中最終週のこの土曜、久々に『オフミ』を開催することとなった。

●プレ・オフミ
 実は、この日以前、05/08に、こっそりというわけではないのだが、急遽、『プレ・オフミ』とも言える府中参戦を敢行。これは、Skyさんから、うちのHPに集う以前から付き合いのあったnoriさんと、先に顔を合わせたい、という申し出と、たまたま、私とごとっぴさんで、府中に行く予定があったのと、noriさんから「この日にやりましょう!」というお誘いが、見事に偶然、重なったことから、決行の運びとなったのだが、肝心のSkyさんが残念ながら、仕事の都合で欠席。ということで、この3人で行うこととなった。  この時は、noriさんの『3連複』攻撃が見事に炸裂!。一人勝ちを決めた一方、私は予想通りの結末。ごとっぴさんに至っては、最後の最後の京都最終で、慣れない3連複での3点大勝負の賭けに出たのが裏目に出て、馬連で普通に買っていれば万馬券的中という衝撃に、本人・撃沈モード、他人・爆笑モード、であった。勿論、終わった後の『ビール』が主役となったわけであるが・・・(笑)。

●最多メンバー
 『関東オフミ』といえば、チャーさん、うっきさん、ナンチさん、KARLさん、やえちゃん、ごとっぴさん、といった面々が常連。これに今回、Skyさん、noriさんの『マウチュウ』組に加え、以前から一度、お目に掛かりたいと思っていた予想大会の常連、まるさん(経由で黒ちゃんも)、のび太さんにも、『ダメもと』で大量お誘いメール発信。すると、これまでで最多、うっきさん、Skyさん、noriさん、まるさん、のび太さんから、出席の連絡が。更に、都合で出られないものの、ナンチさん、KARLさん、ごとっぴさんからは、『携帯メールでの参戦』を表明。「いやー、当日は大変だなー」と嬉しい悲鳴を上げることとなった。

●早くも到着
 いよいよ当日、早くもうっきさんから『1Rから気合の参戦』宣言が出されていたものの、もう若くない体が言うことを聞かず、のんびり昼前あたりに参戦しようかと、家で支度を整えているところへ、早くもTELが。誰かと見れば、なんと、のび太さん。気合満点で、1Rに間に合うよう、府中に到着したらしい。初対面ながら(実際、会ってはいないが)、「まだ家です」とのこちらの答えに、「なにー!?」という、痛烈な不満声が鼓膜を振るわせ、(会ってもいないのに)のび太さんの猛烈な不満顔が脳裏を掠めたのだが、それと同時に、その気さくな声に、「これは息が合うな」という安堵感を持ったのも、事実であった。・・・この後、想像以上に、『気が合う』こととなるとは、この時にはまだ予想だにしていなかった・・・。TELを切った後で、「そういえばうっきさん、もういるはず」と思い、今度はうっきさんに速攻でTEL。事情を説明し、まずはうっきさんとのび太さんで、先に会っててもらうようにお願いし、JR武蔵野線に乗り込んだ。

●飲んでやがる・・・
 電車のなかでは、特に新聞を開くこともなく、英気を養い(要は爆睡)、到着するや、早速、二人の待つ競馬場へ。週始めからこの日を狙い撃つかのように北上続けた台風は、土壇場で温低に変わり、強烈なバナナカーブを掛け、関東への直撃を避けてくれたおかげで、朝から湿気を伴う好天。気温はどんどん上昇していた。「今日は暑くなるな」と感じながら、ちょうど4Rのパドックがターフビジョンに映っていたので、『うっきさん探し』の前に、とりあえず馬券を購入。狙うは初出走・エイユウだ。レースが近づきつつあることで、ぞくぞくと観客がスタンド前に出てくるのを見て、きっと、その中にうっきさん達もいるであろうと、TELで場所確認する前に、見つけてやろうと、探したのだが、意外に苦戦。仕方なくTELしてみると、レース目前だというのに、何故か、パドック横のベンチにいる、とのこと。『何でそんなところに・・・』、嫌な予感が・・・。流れに逆らうように、パドックへと向かう。人がまばらになった横のベンチに視線を走らせると、、、発見。わかりやすいその姿は今だ健在、うっきさんだ。ということは、隣にいるのが・・・。「どうも、どうも」、やにわに立ちあがり、右手を差し伸べてきた、のび太さん。まるでどこぞの首脳会談でも開かんばかりの、がっちりとした握手を交わしてきた。そういえば、岩ちゃんも最初、握手から入ったな・・・。我々よりもう1つ大台越えをしているとはいえ、同世代と言っても差し支えない若々しさを醸し出すのび太さん。顔を見て、速攻、『のび太さんが何故『のび太』なのか』、あっさりと解明できたわけであるが、そんなことより気になったのが、妙にうっきさんとのび太さんが意気投合し、『ほんわかムード』となっていること。何故・・・。しかし、その答えも、あっさりと解明された。ベンチの脇に、我が『オフミ〜第一部〜』には場違いなものが。白と青のツートンの紙コップ・・・「こいつら、飲んでやがる(心の声)」。来たーー!、オヤジモードだーー!。場内に4Rのファンファーレが鳴り響くなか、なんだこの雰囲気は?。「俺は6Rからなんだよ」と、さも普通に答えるのび太さん。だったら何故、1Rから・・・(オフミだから気合入れて来てくれたのですね。失礼しました)。一方、うっきさんも、そんなのび太さんに歩調を合わせている様子。まずい・・・今日の『オフミ』は違うぞ・・・。飲まれてはいかん、、、二人を置いて、近くのモニターに掛け込み、4Rをチェック。ここで的中して、流れを引き戻してやる!・・・と、気合は良かったものの、肝心の◎エイユウは道中揉まれまくりで、撃沈。ありゃりゃ・・・『今日のオフミは波乱模様』、そんな印象を強くしたのだった。

●自信満々
 5Rは3歳500万下、芝二三という特殊な条件。これはパドックへ行かねば・・・。相変わらず『のほほんムード』の二人を置いて、一人、パドックへと向かった。現在の府中の傾向が今一つ掴めないまま、乗り込んだ手前、馬の善し悪しというより『好み』という物差しでしか、実質、判断できないという悩みを抱えたまま、二人のもとへ戻ってくると、何と二人、早くも『昼飯』の相談。一体、こいつら・・・。しかし、ただただ、ボケボケしていたわけではなかった。何気にのび太さんが、1枚の馬券を目の前に差し出す。そこには、17.プレディクターの複勝馬券が。どうやら、うっきさんの推奨馬らしく、それにあっさり乗っかり、「これでビール代にする」と豪語。間違い無い!と二人とも、妙に自信満々。うっきさんも、17からの馬単で勝負に出てきた。ここで弱気の虫が疼く。確かにパドックは悪くなかったな・・・。ただ、5ヶ月ぶりの前走を快勝しての叩き2戦目。馬なリ調教で、典型的な『2走ボケ』パターン。こんなのくるわけ・・・と、蹴飛ばせばいいものを、何故か手の中には、◎ダークマターとプレディクターとの厚め勝負の馬券が・・・。我ながら、己のしょっぱさに涙・・・。

●大外れ
 そんなやり取りを交わしていた最中、携帯が鳴った。まるさんからだった。どうやら午後のレースに間に合うよう、やってきたようだ。携帯でそれぞれの場所を確認しながら、それぞれの服装の特徴などを伝えながら、パドック脇で初対面となった。我がHPの開設した時には、既に一時代を築いていたまるさん。それだけに、以前にもいろいろと話しは聞いていたはずなのだが、頭の中では、既にいい歳いった『オヤジ』をイメージしていたのだが、目の前に現れたのは、ベッカムばりに髪を短く刈った、精悍な顔立ちの兄ちゃんだった。まるさんに気づかれたかどうかは定かではないが、そのあまりのギャップに、一瞬、戸惑いと驚きの表情を見せてしまったような気がする。少なくとも、心の中では、『えっ!』であった。とりあえず軽く挨拶を済ませ、早速、二人のところへ向かった。

●真の娯楽
 奏効するうち、いよいよレース。全員がハッピーになれるか、注目の集まったプレディクターは、敢無く『2走ボケ』。伏兵・ヒカルキドウセイが内から抜け出て、波乱の決着に、全員がドボン。気を取りなおし、午後に向け、そそくさと、『昼飯』にすることにした。普段なら適当にジャンクフードで済ます昼も、今回は、新館の3Fだか4Fにある中華レストランに突撃。前記オヤジ連は当然、ここでも『ビール』を。まるさんと私は、午後の戦いに向け、アルコールを入れる暴挙には出ず、チャーハンにマーボー飯をチョイス。やたら愛想はいいが、要領の悪そうな担当のおばちゃんにチケットを渡し、一息ついたところで、何やら、のび太さんが、カバンからA4の印刷物を取り出し、我々に配ってきた。やたら数字が埋め尽くさんばかりに羅列されたそれ。タイトルを見て、驚いた。それは、のび太さんが、有志の面々と集計しているという、膨大なデータの、ごく一部を印刷したもので、そこに乗っていたのは、全騎手の過去1年間の『出遅れ』回数と、その際の着順・勝率・連対率・複勝率、や、2003年1月から現在までの全競馬場の全レースを対象にした、3連複、馬単における、人気の組み合わせ別出現率・回収率・平均配当、などをまとめたものだった。
 例えば、『出遅れ騎手ランキング』で言えば、1位・池添で、135回出遅れ、その時の着順が[8-6-5-116]、勝率5.9%、連対率10.4%。以下、2位が蛯名、3位が四位、、、といった感じ。『3連複組み合わせランキング』で言えば、やはりというか、1位は1-2-3番人気で出現率は8.6%、回収値は74円。一方、1-4-5番人気は出現率では6位でも、回収値で言えば94円、といった感じで、そういったデータが、A4用紙10枚以上に渡って、ずらーーっと、印刷されているのだ。さすがにこれには目がテンになった。確かに、これまでも、のび太さんが理論武装して、競馬に挑んでいることは、薄々感じてはいたが、まさか、これほどのことをやっていたなんて・・・。しかも更に驚いたことに、こうしたデータを導き出すためには、その数倍もの基礎データが必要になるわけであるが、それを何と、毎週、手打ちで入力しているというのだ。想像を絶する労力と根気、そして、情熱、、、。
 単なる『ビールオヤジ』と思わせておいてのこの強烈な一撃。膨大なデータを十分、見せつけ、こちらが衝撃を受けたのを見計らったところで、今度はのび太さんの講釈が炸裂!。まるで我々をどこかの『宗教団体』へと誘い込むような、巧みな話術で、とうとうと、データの重要性、馬券の組み立て方、それらを含めての、競馬への想い、を語るのび太さん。吸い込まれるように聞き入るまるさん、『騙されては行けない』、心のどこかで敢えて防波堤を作り、身構える私。既に、合流する前に、サシでこの講釈を聞いたのだろう、我関せずとばかりに、ビールをあおる、うっきさん(笑)。『自分のペースを崩しては行けない』、、まるさんがのび太さんの言葉に引き込まれそうになるたび、己をも叱咤するように、「騙されちゃ行けませんよ」とチャチャを入れ続けた私ではあったが、のび太さんの言葉には、十分すぎるほどの説得力があった。そんなのび太さんから最後に出てきた言葉・・・『命の次に大事なものを賭けているのだから・・・』。ただただ当たればいいのではない。熟考に熟考を重ね、厳選に厳選をして、導き出した、究極の結論。確固たる根拠に裏打ちした予想だからこそ、『命の次』に大事なものを賭ける価値がある・・・。真剣だからこそ味わえる真の娯楽・・・。
 予想通り、要領の悪い担当のおばちゃんが、後ろに座っていた中年夫婦のメニューを取り忘れていたことを、全く懲りない表情で、口だけの侘びを入れるのを、視界の片隅に捕らえ、おばちゃんが去った後も、ぶつくさ文句を言い合う夫婦の会話を耳にしながら、レストランを後にする我々。これも本人の緻密な計算通りなのか、ファーストインパクトのイメージを払拭することに成功した、のび太さんの『してやったり』の爽快感と、実は6Rのパドックを見たかったであろう、まるさんの、口にはしていないが、微妙な焦燥感を、密かに思いながら、既に締め切り間近になってしまった馬券売り場へと、向かった・・・。

・・・いよいよこれからが本当の勝負!。午後の部に続く・・・