1998/05/03 天皇賞(春)の見解(日刊競馬・柏木集保氏)
 明け5歳になって良くなってきたジャスティスメジロブライト。この2頭が評価を受けて、文句無しだと思うんですがね。ただその、さっきもテープ(昨年(1997)の菊花賞、今年(1998)の阪神大賞典)を見ていただいたように、とにかくこの2頭、超スローペースの競馬ばかりしかしていない。で、菊花賞というのはスケールと底力と将来性の試される競馬で、あれ、負けたあたりがね。例えば、あの、昔で言うとライスシャワーだとか、メジロマックイーンだとか、サクラローレルだとか、ああいうスケールにはないと思うんですよ、まだね。なれる可能性はありますけどね。で、ここも、ですから超スローペース。スローだからといって3200mの天皇賞、実はまぎれないんですがね。
 私、買って面白いかなというのは、全く力は下でも、ファンドリリヴリア。なぜかっていうと、明らかに能力落ちるんでね、南井騎手がね、普通のペースでいけば。飛ばさないで普通の天皇賞らしい、例えば前半1600m1分40秒ぐらいの。あの、ブライトとかジャスティスはいつも1分43秒とか4秒という、千六通過ですよ、それを後方からついていく馬ですからね。ファンドリリヴリアが南井騎手が、わざわざ南井騎手がのって、普通のペースで行けば、ひょっとすると20馬身も30馬身も離れてしまうんではないかという・・、まあ、これ、全くの夢物語というか、希望的観測なんですが。あの、例のメジロパーマーが逃げ切った有馬記念とかプリティキャストの逃げ切った天皇賞ってみんなそうなんですよ。Hペースで飛ばしているわけではないんですよ。普通のペースでいってるのに、何故か離れてしまうグループというのは。一旦離れたら最後なんです。だって、誰だってペースなんかわからなくなっちゃうから、ねっ。で、そうなるとね、動けないんですよ・・・。いや、そんなこと、ないと思いますけど。私は、ちょっとだけ、ファンドリリヴリアが南井騎手で、普通のペースでぐんぐんいってくれれば、恐らく、まあ、4コーナーでも10馬身ぐらいまではリードがあるだろうと。捕まって納得という逃げに賭けます。・・・いや、でも明らかに能力は下ですよ。

  [予想から受けた衝撃]
これほど魂を揺さぶられた予想は見たことがない。印が目に飛び込んできた瞬間の衝撃は言葉では形容しがたいほど。この予想と、その後の私の文章を読んで、共感するものがあれば幸いである。

奥深い柏木集保氏(当時の[はんせい]より)
 土曜の夕方にコンビニに東スポを買いに行った時に、日刊競馬・柏木氏の印を見ようとちょっと覗くと、な・な・なんとファンドリリヴリアに◎を打っているではないか。思わずその場で身震いしてしまった。この時点では、まだ自分の予想が固まっておらず、思い切って素直に一点勝負にしようかなとも迷っていた私の淡くて軽い考えをぶっ飛ばした。もう会計を済ませていた私はその場から逃げるように離れたのではあるが、チャリを転がしつつも頭の中は????の嵐が吹き荒れていた。
 そして翌日、WINSから戻って、関東ローカルで放送される競馬中継にチャンネルを合わせた。そして運命の14時35分。柏木氏の天皇賞の見解を聞くことができた。
 彼は予想の中で、ファンドリリヴリアを「明らかに能力は下」と述べていた。ならば何故そのような馬を軸にしたか。展開のあやに期待したのか。いや違う。見解の中で、「3200mの天皇賞はまぎれがない」といっている。では何故か・・・。彼は、現在のトレンド、スローな流れによる上がりの競馬に警鐘を投げかけていたのだ。だからこそ、能力が下のこの馬を本命に推したのだ。つまり、メジロブライトシルクジャスティスが真に強い馬になるためには、これまでのような競馬を続けていてはいけないという事を示し、また周りもそのようなレースにしてはいけない、歴史ある天皇賞を駄目レースにしてほしくないという願いを込めての本命だったと思う。
 このような予想をつけられる人が他にいるだろうか。スローな流れでの瞬発力勝負になるということでイシノサンデーを本命にした自分の予想では、足元にも及ばない奥深いものであり、穴予想に徹する自分のあさはかな考えが恥ずかしくさえ感じた。
 美化しすぎじゃないの?と思われるかもしれない。確かに多少はおおげさに書いている部分もあると思う。しかし、彼はレース後のコメントで、「私なんか、南井騎手が引っ張ってくれると普通の競馬になるんじゃないかと思ったんですがね・・まさかこんなスローになるとは思わなかった・・・、良くない。良くないと思います」と嘆いていたのを見ていたら、納得してもらえると思うのだが。