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■蘭の会2004年2月号 服部剛さんからのおてがみ■■■■■■

この「お手紙」が
みなさまのパソコン画面に現れる頃 ・・・

僕の部屋では
読みきれない詩集の山の頂上で
もらったいくつかの「義理チョコ」が
うすく開いたふたから薫りを放ち

子供のままの寝顔で眠る
僕の空いた口や鼻孔に吸い込まれ
布団から起き上がる青春の影は
部屋の襖(ふすま)をすり抜け
月明かりの射す階段を降りてゆく気配を
おぼろに聞いているでしょう

いつかの幸せなクリスマスの晩餐を夢見ながら

朝日が昇るまでの安らかな冬眠の内に



最近は老人ホームの仕事を終えた休憩室で
下手くそなぎたあをつまびいております

最初に覚えたのは
「Happy Birthday To You」

新年早々風邪をひき声のかすれた僕は
生まれてはじめてのお年玉を
2歳の姪の小さい手に握らせ

姪が生まれた夜の祝福を
6弦を撫で奏でておりました

♪♪♪

しゃんかしゃんかしゃんかしゃんか
「おーめでーとう○○ちゃーん!」

と僕が歌うと
お年玉を手にして 君は踊った

初仕事の朝
老人ホームのおじいちゃんが亡くなり、
勤務終了後
まん丸い月の下
震えながらお通夜に参列し
やさしい遺影に手を合わせた

帰りの夜道で白い息を昇らせて、
冬の満月を仰ぎつつ
ふと 自分の人生について考えると
北風が「ぴゅう」と吹き

遺影のおじいちゃんの面影が
「おい、若いの!人生は、短いもんじゃよ」
と言っている気がした



昨日、約5年間共に働いた同僚が
「寿退社」すると聞き、
仕事帰りの駅の構内で、「祝婚ノ詩」を書きました。
周囲にいる人が人生の岐路に立つのも、
感慨深いものですね。



さあて、このお手紙をキーボードから打ち込んでいる僕は
この部屋を出て、ちょっくらおんぼろぎたあをとってまいります。



今、僕が弾けるたった2つの歌
「Happy Birthday To You」 と 「さらば青春」
をなんとか弾き語ったところです。

このとりとめのない散文を読んでくださった方、
心より感謝します。

「蘭の会」が

女流詩人の皆様の感性で

時に生の声として、
時に懐かしむように

青春を

青春の先にあるものを

詩の言葉として生み出し続けていく

「言ノ葉の宿る母胎」でありますよう、

皆様の御健筆をお祈り申し上げます。

 ’04 2月  服部剛


■服部剛さんって、どんなひと?こんなひと?■■■■■■■■■



1974年・10月生まれ
地元・鎌倉FM(82.8)で詩の番組「ヴォイスパ!」の
製作兼パーソナリティーを勤める。
(毎週月曜日・22時10分〜22時30分)
去年の上半期は雑誌「湘南文学」や「詩学」の
投稿欄に詩作品が載るも、その後「壁」にぶつかり、模索中 。
今年の2月号で久しぶりに「漏声」が掲載。
・今年出版予定の「ネットの中の詩人達・第3集」
・同人誌「母衣(ほろ)」創刊号に詩を掲載予定。



リーディングイベントでは、
「T-シアター〜すとんとね〜」・「コトバオンザラン」
・「過渡期ナイト・年末スペシャル」等に出演。
1月に出演したライブハウス「青い部屋」のステージに
再び立てるよう、充電中。

人間の姿を「低い目線」でみつめ、
やわらかい言葉を響かせる詩世界を培っていけるよう、精進です!


追伸:

詩の番組「ヴォイスパ!」では、 随時詩作品を募集しております。
投稿先は gou@viola.ocn.ne.jp にお願いします。
作品紹介、またはご出演を願う時は、こちらから連絡させていただきます。



■服部剛さんの詩を読んでみよう■■■■■■■■■


「きせきのひ」


         
昨晩瞬いていた満天の星屑が
ねむってた間に降ってきて
昼の七里ヶ浜の海にきらきら光る

昔々
女がりんごの実をもいで
男に蜜をあげました
  
人祖の罪で失われし楽園も
秋晴れに江ノ電乗れば 
極楽寺へと向かいます

古びた駅のゴミ箱に
きれいに揃えた赤いハイヒールが棄ててあり
浜辺には憂いの女がゆれており
遠いヨットの群れ眺め
空飛ぶトンビと話しています

「 天国は あった ここに 」

凪いだ波間に きらきら光る 真昼の星屑


■ふみばこ■

毎月、蘭の会に寄せられたおてがみを
すべてご覧くことができます。
そっとふみばこを開けてください。
そこには素敵な言葉とか気持ちがこぼれだすはず

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著作権は作者に帰属する/最終更新日2004.2.15/サイトデザイン・芳賀梨花子