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■蘭の会2003.12月号ワタナbシンゴさんからのおてがみ■■■■■■

VOICE

今年ももうあとわずかになりました。
毎年のこと、何かと忙しく師走は過ぎていきますが、
やはり年の終わりをひとつの区切りとして
この一年を改めて省みてみるということは
自分自身の足元を見つめなおすという意味でも
とても大切な行為のひとつだと感じています。

このお手紙の依頼を受けてから、
この場をおかりして、自分は何を伝えようかと考えていました。
今年一年、社会においても、ぼく自身にとっても、
本当にさまざまなことがありました。
そのような一年のなかで、上でも触れたように
ぼく自身の足元を見つめなおすということからも
このお手紙では、あらためていま「平和」について、
ぼくの書けることを文字にして届けてみたいと思います。

今年の3月18日、イラクへの戦争をブッシュ大統領が宣言し
アメリカのイラク侵攻がはじまりました。
その後しばらくしてフセイン政権は倒れ、
アメリカの占領統治下、イラクはいまだに戦争状態にあります。
今でも、テロの事件と死傷者の数が
ニュースで伝えられない日はありません。

一貫してぼくは、個人の声として、
アメリカのイラクへの侵攻には反対してきました。
そもそもの発端を振り返ってみれば
フセイン政権の大量破壊兵器保持、隠蔽を理由に
国連の査察団の調査が続いているにもかかわらず、
安全保障理事会の決議を取り付けず、侵攻を開始したのはアメリカでした。
そして、未だその大量破壊兵器が発見されていないばかりか
そのこと自体、まったく問題視されていないのが現状です。
むろん、ぼくらが住んでいる日本は、当初からアメリカを支持し
先日に至っては、小泉首相がアメリカを支持するためだけの理由で
何の必要性があるのか全くわからない自衛隊を
平和憲法を掲げる国の元から派遣する閣議決定をしたのでした。

ぼくは、自身の経験として、戦争を知りません。
また、イラクという土地へ実際に行った経験もありません。
しかし、たとえ戦争は知らなくとも、イラクが物理的に遠い国だとしても
権力を持つものが、その権力を利用し、
対話を排した暴力による正義を捏造していくことに対して
反対の声をあげないということは、
自分自身の正義を放棄するということに繋がっていくと思うのです。
この声は、ぼく自身の生の尊厳にかかわる問題です。
そして、この個々人の存在を成り立たせている正義の要請が、
イラクで日々起きている出来事を、遠い世界での出来事ではなく
ぼくらの側にも続いている問題としてひきつけていくと思うのです。
対話による粘り強い解決を無視した、一方的な権力や暴力によって、
生存を脅かされたり、否定されたりすることは、
どんな土地に住む、どんなひとびとに対しても
決して許されてはいけないことだと。

「平和」とはきっと、
ひとひとりひとりの存在を、決して否定しないルールのことではないでしょうか。
争いの種は、その場のかなしみとともに、
その後も多くのかなしみを植えつけていきます。
不条理のなかで死んでいった人々は、その将来を永遠に失い、
たとえ争いが終わったとしても、そこに残った人々は
その出来事の記憶を一生抱えて生きていかなければなりません。
たとえニュースから記事が消えたとしても、
かなしみは、人の心から完全に消え去ることはありません。

世界中で起こっている多くのかなしい出来事は、
ぼくらと関係ないところで起きていることではなく
ぼくらの生の尊厳として、ぼくらの声とひとつづきにあることだということを
一時の感傷的なものからの声ではない
ぼく自身が立っている、この足元からの声として
ぼくは言葉を届けていきたいと、思うのです。

                                    
                                    2003.12.12 ワタナbシンゴ


■ワタナbシンゴさんって、どんなひと?■■■■■■■■■




ワタナbシンゴ

1976年生まれ ブルースマン

大学中退後、農家や山小屋でお金を貯めながら、国内外を3年半に渡り放浪。
帰国後、再度大学に入り直すも、ブルースと出会い、この春2度目の中退。
現在、シカゴへの渡航費用を稼ぎながら、ブルースに生きる。


<関連サイト>
【心太】 http://mypage.naver.co.jp/tokoroten/
【Peace Design】 http://www.asahi-net.or.jp/~WM4S-MYMT/PeaceDesign/


<イベント情報>
【第一回心太祭り】 (詳細は心太TOPまで)
2004年3月27日(土)前売り2200円 当日2500円 (with 1 drink)
下北沢ARTIST  http://www.c-artist.com/ 19時半−
出演:マブリ・上田假奈代・mue・森象(ワタナbシンゴ)

【どうして男と女は1000年前からいつもそうなの 蜻蛉日記】
2004年3月28日(日) 500円(+1drink order)
祖師ヶ谷大蔵caf? MURIWUI http://www.ne.jp/asahi/cafe/muriwui/ 18時半−
出演:[朗読]上田假奈代 [ギター演奏]ワタナbシンゴ

■ワタナbシンゴさんの詩を読んでみよう■■■■■■■■■

「まなざし」



じっと飲みほそう
ただ
じっと飲みほしていよう


空の向こうからきこえる
足音のざわめき 
積み重なるものたちの記憶
たえることなく かなしみを持ち
僕はあなたのまなざしになれない
世界の眼を閉じたまま
想い出の優しさを吐けるほど
ひとつの沈黙に染まるほど
得体の知れない痛みが
僕の言葉を奪うほど
僕は あなたのまなざしになれない

平和はいつも石に刻まれた手からこぼれ落ち
物語りもなく ひっそりと
立ち去ることを強制された
足元の下の人々を
スコールだけがかけぬけた


雨上がりの街角に
そっとたたずむ
その姿
あなたの僕を 僕のあなたを
おびていく   
  おびていくまなざしで
継いでいく 
  継いでいく子どもたちの
繋がっていく  
  繋がっていく笑い声と
しずけさに
還っていく
しずけさに
還っていく



ああ、 
今日も夕暮れ
まなざしに暮れゆく空の色

だから

僕はこうして ここに来て
ただ ただ
それを
じっと 
じっと飲みほしていよう




「まなざし」は写真と音楽とのコラボレート作品です。
以下のサイトアドレスですべての作品をご覧になれます。
http://www.freewebs.com/kinomikinomama/0006.html 
(キノミキノママHP)

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著作権は作者に帰属する/最終更新日2003.11.15/サイトデザイン・芳賀梨花子