0059 汐見ハル

めざめる

 

たぶん 海だった

もがくほどに喰らう水が 喉の奥に苦く

渇きのようにいつまでも癒えないまま 残る


なみだ が


涙が滲むほどに わずかで

いつも 零れ落ちなかったので

溺れてもがいてやっとで気づいた


涙の海に爪の先まで捕らえられ そうなっては

イキテハイケナイ と

たぶんそうなのだと 


でも 泳ぐ魚よりももっと深刻な度合いで

陸のことなんか思いつきもせず

ただひたすらにもがきもがいて


それにひきかえ

目覚めて後にあれは夢だったことを知ってゆくことの 呆然

安堵を伴いつつも涙を噛みしめる以上に後味が 悪く

そのときだけ 甘えたがりの赤ん坊みたいに泣きじゃくる

体裁もなく ただあの海に再び浸されることを願う ゆるりとした激情の刹那