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『教師の苦悩が癒される本』


2001/07
■『教師の苦悩が癒される本』  ― 人間関係再生のプログラム ―
    小島侑 著 学陽書房 (1600円+税)

 学校の中で子ども達がいじめなど、人間関係で悩み不登校になる例が多い。ところが、それは教師達も例外ではない。いじめや無視、仲間はずれなどで精神を害され休職や退職に追い込まれる場合も多い。

 著者は中学教師時代、職場内の人間関係(担任外し、いじめ、無視など)で深く精神を病み、心が壊れ、ついには無念の退職に追い込まれる。そして、人生も家庭も崩壊する。本書にはその著者が自らの手探りの自己回復の実践を通して「人間関係回復のプログラム」を開発し、悩む教師達にコンサルテーションを行い、回復させていく様が描かれている。

 子どものいじめと違って、教師間のいじめは一般にあまり具体的に伝わることは少ない。語ることはタブー視されてさえいる。本書はあえてそのタブーに挑戦し、その実態をリアルに描き出す。それほど著者の心の傷は深かったとも言える。例えばこうだ。「どれが正常かわからなくなることもたびたびでした。(中略)突然、自分の中から怒りが吹き出てきて、職員室に飛び込み、鉈で同僚教師の机をたたき割り、学校に火をつけてやりたい気持ちが出てくることもありました」

 これは決して人ごとではない。大阪の池田小学校の殺傷事件が世間を震撼させたが、恐ろしいことは学校の外部だけにあるのではない。また、生徒達だけに問題行動があるのではない。まかり間違えば宅間守のように教師自身が異常行動に走りかねない状況に追い込まれている場合があるということだ。
 生徒達顔負けの、教師同士による言葉のいじめや仲間外し、無視、その他の陰湿な行為が横行し、同僚の心を平然と踏みにじり崩壊させていく ― それが学校という現場で子ども達に「心の教育」を説く教師達によって行われていのだ。

 近年、子ども達に「生きる力」をつけることが叫ばれ、その元凶として家庭でのしつけ等のあり方が問題にされることが多くなっている。家庭で出来ないならば国家でという発想なのか、一律の奉仕活動の徹底化までが教育の課題にのっている。

 だが、子ども達を指導し教育する立場にある教師達の実態はどうなっているのか。「教師の不登校」という言われ方もするが、教師自身の心が解体していくような学校現場、教師間の人間関係はまともに取り上げられたことはな。だが、子ども達にとって大人社会の象徴であり人間としてのモデルでもある教師達が解体の危機にさらされているような学校で子ども達が健全に育ち得るだろうか。

 しかし、本書の真の目的はそのような学校教育の現場やそうあらしめた教師達への内部告発ではない。そのように身も心も壊れ、人間としての正常な感情を喪失してしまうほどの体験をした著者が、自己救済、自己回復に向けて取り組んだ様々な学びや研究を通して、一つの実践的な方法、PTSDからの回復のプログラムを確立し、それによって、著者と同じように学校という世界の中で傷つき苦しむ教師達に立ち直りの支援を提示しているということである。その意味で、本書の持つ役割はとても大きい。

 教師が教師としてのあり方を考える時に、そして教師が心の回復を求める時に、そしてまた、我が子を学校に送り出す時に本書を繙いてみたい。(A)



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