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引きこもりへの公的な対応を求めて


2000/09
■引きこもり親の会が約百二十人のデータをもとに行政に責任ある対応を要望

 昨年秋に結成された引きこもりの子どもを持つ埼玉県内約百八十家族で構成する「引きこもりKHJ親の会」(代表・奥山雅久さん)が、全国に約八十万人とも百万人とも言われる引きこもりの青少年への行政の責任ある対応や窓口の設置を求めて動き出した。
 親の会は八月九日、文部省と厚生省に対し、引きこもりへの公的な対応を求めて要望書を提出するとともに、引き続き埼玉県に対しても九月十四日、要望書を提出した。
 八月九日、親の会は衆院議員・上田清司氏(民主党)の仲立ちのもと、要望書を文部省中学校課と民間教育事業室、厚生省家庭福祉課に提出した。席上、上田衆院議員は「要望書の各項目について関係省庁の対応を文書で提出させたい。総務庁にも対策を求めたい」と話した。九月十四日には、埼玉県障害者福祉課の課長以下四名の職員が対応した。
 
■高校生時代が最多

 KHJ親の会は、埼玉県に要望書を提出するとともに、会員170名家族へのアンケート中、有効回答116家族、本人数120人(4軒に該当者2名、双子3組中2組2人とも該当者)の集計データも手渡した。
 集計結果によると
□男女比
 男性90人(75%) 女性30人(25%)
※男女比はほぼ、男性3女性1の割合。
※男子の方が引きこもりの率が高いのは、男子の方が社会的な圧力を心理的に感じているのか。そこにジェンダー・ギャップの問題があるのかもしれない。
□当人の兄弟姉妹位置
 長男74人(61・7%) 次男13人(10・8%) 三男 3人(2・5%)
 長女21人(17・5%) 次女 9人(7・5%) 三女 0人
  ただし、一人っ子16人  1家族に当人2人が4軒(双子3組のうち2組に2人)
※一人っ子の男女数は不明
※一人っ子を差し引いても、長男・長女の割合が非常に高い。親が初めての不慣れな子育てのためか、それとも長子・一人っ子の位置が関係しているのか。
□当人の現在年齢
 13歳3人  14歳4人  15歳4人  16歳4人 17歳8人  18歳7人  19歳5人  20歳10人
 21歳9人  22歳8人  23歳7人  24歳6人 25歳8人  26歳4人  27歳7人  28歳9人
 29歳2人  30歳4人  31歳3人  32歳4人 33歳1人  34歳1人  35歳1人  36歳1人 38歳1人
 18歳〜28歳=80人(67%)
※このデータはKHJ親の会の構成メンバーによるもので、ここからどこまで年齢別の比率として一般化できるかは分からない。
□引きこもり者当人の平均年齢 
 22歳9ヶ月(現時点)
□引きこもり年数(期間)(現時点、進行中)
 1年未満13人  1年 17人  2年 13人 3年  16人  4年 8人  5年 10人
 6年  7人  7年 7人  8年 5人 9年  4人  10年 11人  11年 2人
 12年  1人  13年     14年 2人 15年  2人  16年 1人  17年 1人
※一般的に引きこもり年数は3年半程度と言われているが、このデータからは5〜10年の比率もかなり高いのが読みとれる。
□引きこもり発生年齢(現在年齢―引きこもり年数)
 10歳1人  12歳6人  13歳5人  14歳6人 15歳12人  16歳11人  17歳22人  18歳15人
 19歳9人  20歳11人  21歳5人  22歳6人 23歳5人  24歳    25歳1人  26歳1人
 27歳1人  28歳    29歳    30歳1人 31歳1人  32歳    33歳1人
□年齢層(中学、高校、大学)別発生件数と割合
 12歳〜14歳(中学生時代) 17人(14・2%) 15歳〜17歳(高校生時代) 45人(37・5%)
 18歳〜20歳(高卒〜大人) 35人(29・2%) 21歳〜30歳(     ) 20人(16・7%)
 なお(10歳1人  31歳以上 2人)
※発生年数は15歳〜20歳までの思春期から成人にかけての時期に多く起きているのが分かる。思春期をうまく乗り切れず、結果として成人になること(社会化)に失敗したことが読みとれる。
※小中学生の不登校生は約13万人と言われている。しかし、それ以上に関しては、高校生の中退者は10万人とも言われているが、小中学生の不登校生がその後どうなったかを含めて、その年齢層の実態は把握されていない。引きこもりの総数を単純に80万人と仮定して右の比率を当てはめると、実に40万人という数に上る。就職できないアルバイトやフリーターの実態も含め、今後の調査が望まれる。
□引きこもり状況
 ◇現在引きこもりの当人の状況
  @部屋、家から出られない 25人(20・8%)  A夜間、昼少し出られる  61人(50・8%)
  B一人で外出できる 34人(28・3%)
 ◇家族への態度
  C責め続ける 28人(23・3%)  D今は比較的おとなしくなった73人(60・8%)
  E暴力なし 18人(15・0%)  F不明           1人
※引きこもりの状況はいろいろで一概に言えない。完全な閉じこもりや家族への暴力の場合は、深刻な問題がある。自己の空白感・焦燥感が当人のみならず家族をも危機に追い込むこともある。
□社会とのかかわり
 アルバイト歴のあるほとんどの当人は、社会に出たい気持ちで働きに出るが、人間関係に挫折しやすく、人間関係の挫折を確認するため短期のアルバイトをしたような結果となっている。
 ◇アルバイト歴
  ある  52人(43・3%)  ない  68人(56・7%)
 ◇通期のアルバイト期間(複数のアルバイト)
  1〜2週間 5人  1ヶ月 13人  3ヶ月位 9人  半年位 8人  1年位 10人  2年以上 7人
※アルバイトは本人にとっても家族にとっても社会参加の第一歩と考えているところがある。そのことで本人が自分に無理をしたり、家族の無言のプレッシャーを感じることもある。しかし、引きこもりの状態が完全に解決されないままアルバイトに出た場合、さらに自分の無力さを確認することになってしまうこともある。
□不登校、引きこもりの直接のきっかけ
 (実際には複合的背景があるが)複数回答
  いじめ 35件(27・3%)  裏切られ 10件(7・8%)  人間関係(教師・親等) 13件(10・2%)
  身内の死(ペットを含む) 6件(4・7%)  受験に失敗 21件(16・4%)
  身体的ケガ・病気 9件(7・0%) 不明(なんとなくを含む) 30件(23・4%)
  その他(チカンに遭って) 1件  恋愛と仕事で  2件  リストラ  1件
 このうち、「いじめ」「裏切られ」「人間関係」等、 いわゆる人間関係に属するもの45・3%。
※人間関係で引きこもりになる人は、プライドが高い子、完璧主義者に多いという。そして、引きこもりの場合も不登校の場合と同じく、「きっかけ」が必ずしも「原因」というわけではない。「不明」が多いことの一つはそこにある。
□薬使用もしくは経歴
 使 用 51人(42・5%) 不使用 64人(53・3%) 不 明 5人
 使用されている薬品名は、
 コンスタン、SSRI、ルボックス、デプロメール、セレメール、ソラナック、ドグマチール、トフラニール、セルシン、デパス、ロフビノール、ヘルパドール、他

※精神安定剤や催眠剤の類が多く、常用すると嗜癖性や不安感、倦怠感、頭重感、脱力感、胃腸障害などの副作用を引き起こすものが多い。
 ◇病理性
  強迫神経症がはっきりしている例 26人
  人格障害は判別しにくいが多数、対人恐怖症も多い。いずれも、引きこもりゆえ、また当人は親の言うことが聞けないため、病院に行かないケースが多いので、実際はもっと多数と思われる。
  アンケート用紙から、引きこもり問題には、強迫神経症と人格障害、対人恐怖症が多数内在している。
※この項目に関しては、専門の医師以外は判断しにくいところがある。薬物の過度の投与による副作用等によって逆に精神障害的な状態に陥っていくということもかなりあると話す関係者もいる。また、もともとは病理ではなかったものが長期の引きこもりの中でますます社会的な感覚を喪失して行き、次第に病理的な傾向を示していく場合も多いとも言われる。いずれにせよ、引きこもりと病気・病理との関連は、生育的な脳障害の問題も含めてまだまだ未知の部分が多いのが実状だ。
□相談に行った機関(複数回答)
 (アンケート用紙と各サークル会の記録+電話調  査で補充)
 便宜上、以下のように番号で分類する。
 対応に満足=@ 中位=A あまり役立たない= B 不満=C 回答基数=◆
 保健所 39件 @1 A12 B10 C11 ◆34
 病 院 78件 @8 A23 B22 C13 ◆66
 警 察 13件 @3 A2 B5 C3 ◆13
 県精神保健総合センター
     36件 @3 A8 B13 C10 ◆34
 市役所、県庁
     11件 @  A2 B5 C3 ◆10
 教育委員会
     10件 @1 A2 B3 C3 ◆9
 さわやか相談員
     2件 @  A  B  C  ◆
 フリースクール
     16件 @1 A3 B1 C3 ◆8
 民間機関4件 @  A  B  C  ◆
 教会  1件 @  A  B  C  ◆
 (相談に行っていない 13件)
 回答基準には入らないが、さわやか相談室や市役 所職員や民間カウンセラーに各1件ずつ親身の対応があったとの記述。
 しかし、基本的には引きこもり問題で、特に18歳 以上に関しては責任窓口がない現状に親が上記の様に、各機関をたらい回しに回っている姿がうかがえ、アンケート紙上にも多々記述されている。多くの専門家に、引きこもり問題は親だけで対応すればする程、当人は心の奥に引きこもってしまうので第三者の機関に任せるように言われている。
 引きこもりの問題に、責任窓口迥e機関の連携が 望まれています。
※不登校と違い、引きこもりの場合は比較的年齢の高い長期化している青少年が多いからであろうか、保健所や病院、警察、精神保健総合センターなどに相談に行ったケースが格段に多く、教育委員会やさわやか相談室を選んだケースは少ない。しかし、民間のフリースクール等に行った方が多いことからすると、教育行政に対する家族や本人の拒否的な心理や不信がそこにあるのかもしれない。
□父親の年齢
 40歳〜45歳 9人  46歳〜50歳 21人 51歳〜55歳 32人  56歳〜60歳 35人
 61歳以上  1人  離別・死亡 6人
 父親が51歳以上の家庭(70%)に長い引きこもり 者が多く、今後親が倒れたり亡くなったりした場 合、その時30歳以上になっている引きこもり当人は、はたして社会順化できるのか? 現在すでに当時の会だけでも30歳の当人が15人(12・5%)出始めている。
※いわゆる不登校生と引きこもりの若者との大きな相違は、不登校の場合は学校・教育との関連で考えられる場合が多いのに対して、引きこもりの場合は社会化・就業との関連で考えられる場合が多いということであろう。不登校の場合は主に18歳以下の未成年の問題、引きこもりの場合は社会人の問題と置き換えていいかも知れない。勿論、これは不登校から引きこもりに進行していく事例が多いことからも深く連動していることは確かなのだが。
 しかし、これは本人の問題にとどまらず、保護者・親あるいは家族の問題にまで波及していく。不登校生の親の場合は比較的若く仕事の上からも社会活動の中枢を担っている人たちが多い。それに比して長期の引きこもりや成人した引きこもりの子を持つ親の場合は親自身が高齢化していて子の行く末と同時に自らの老い先にも不安を抱えている場合が多い。51歳以上の父親が7割を占める現実は、もはや家族の努力の限界を超えていることを端的に示している。行政の責任ある対応・支援が不可欠である。

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 次代を担うべき若者たち80万人に、一家庭の対応を超えた「心の病 引きこもり」が発生しており、この問題を超えた多くの家庭では苦渋と閉塞状況に陥っています。
一刻も早く関係行政当局には、この引きこもり問題への責任窓口の開設と支援を得たく、弊会の会員のアンケート協力のもと、引きこもり問題の実態把握へ供するものです。
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※なお、KHJ親の会では、引きこもりの原因について種々言われている原因説についての調査等も行っている。例えば、高圧電線の住居の調査、出産時の陣痛緩和剤や陣痛促進剤の使用、鉗子の使用などの出生時の問題など、あるいはダイオキシン等環境ホルモン等の影響の有無なども調査している。
 引きこもりについて、そのきっかけは明らかになっても、その主要な原因となると専門家の間でもはっきりしていないのが現状だ。
 不登校から引きこもりへの進展など、引きこもりの発生のメカニズムは対応と解明の端緒についたに過ぎない。今後とも、引きこもりの問題はより正確なデータの収集をはじめ、取り組むべき課題は多い。

■不登校と引きこもりの連動

 引きこもりの調査の結果、不登校から引き続き引きこもりへと連動するケースが意外に多いのではないか、という感想を持った。逆に言えば、不登校からどれだけの割合で社会参加や社会復帰ができるようになっているのだろうかということである。
 教育機関も児童相談所等も18歳以降の人への対応は原則的に行っていない。小中高の学齢期を過ぎた子どもたちは、実質的に放置された状態にある。それが皮肉なことに度重なった引きこもりの少年をきっかけに社会現象としてクローズアップさせることになった。
 しかし、これはまだその端緒についたとも呼べない状態にある。しかも、これらの事件をきっかけに少年法の改正など、管理や規制、処罰の動きばかりが強まっているように、それらの事件を生み出す背景や引きこもりへの対応などは遅々として進んでいない。引きこもりの本人や家族に必要なのは規制や管理ではない。実効性のある関係諸機関の責任ある対応であり、家族への支援であろう。
 今回のデータをもとに関係諸機関はやおら動き出すことになる。その動向を見つめたい。

(注)のデータは「引きこもりKHJ親の会」の会員の120名から集めたデータです。
なお、※印のコメントと各グラフは「ニコラ」で付けました。(省略)


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