全日本視覚障害者ワープロ競技大会開催中止に至る経過説明


 「全日本視覚障害者ワープロ競技大会」は昭和38年に始まり、平成17年に第39回を開催するまでに至りました。40年という長きにわたり開催し続けることができましたのは、まさに皆様方のご協力のおかげであると、深く感謝しております。

 「たとえ視覚を失っても、文字を書くその手を失ったわけではない」という、当センターの創立者、故・松井新二郎の理念の下に、本競技大会は発足しました。発足当時は今のようにワープロなど無く、カナタイプライターによる競技会でした。当然「ひらがな」だけの競技会でしたが、それでも「点字だけではなく普通文字を書くことができる」という事実は、多くの視覚障害者に喜びと希望を与えたといえます。そしてこの競技大会を目標に練習をする人たちが増えていったことでは、「ブラインドタッチ・タイピング」の普及に大きく貢献したともいえるでしょう。

 その後、平成に入ってから「視覚障害者向けワープロソフト」の普及に伴い、当競技会は標記の「ワープロ競技会」へと移行しました。そのことは、念願であった「普通文字を書くことができる」という理念を、真の意味で達成させたといえましょう。移行当初はマスコミにも大きく取り上げられたことにより、視覚障害者のみならず、社会に対しても大きなインパクトを与えることとなりました。まさに、視覚障害者のコミュニケーション手段の「書く」という部分において、大きな第一歩を踏み出すことができました。

 現在では、パソコンの文字を音声化するソフト(スクリーンリーダ)が開発されたことにより、健常者と同じようにMS-WordやExcelを使いこなす視覚障害者が増えてきました。私どもは競技大会を目標としてスキルアップの努力をされている方々のために、毎回、時代に即応した形で競技会を運営し、その場を提供してまいりました。まさに「科学技術の進歩と共に歩む」を実践してきたといえましょう。

 一方、視覚障害者が事務職としての職域進出を可能とするにつれ、視覚障害者の文書処理技能の客観的評価の必要性から、日本商工会議所の「日本語文書処理技能検定試験」の受験機会を望む声が強まってまいりました。そこで、本競技大会と並行して、「日商日本語文書処理技能検定試験」を平成12年度より実施しました。それに伴い本競技大会も、ワープロ技能検定試験の試金石という位置付けに変遷してきた経緯があります。今回の競技大会中止も、この「検定試験」に一本化するという趣意も多分にあることをご理解いただきたく思います。

 社会のIT化が進む中、日本商工会議所も、技能検定試験を実務界の実態に即して「日商PC検定」と改称し、出題方法もネットワーク上での出題という形に、大きく変わりました。また資格取得には、ただ単にMS-WordやExcel等を事務処理に活用する技能だけでなく、若干の「システム管理者」的な知識も必要とする内容へと変わり、平成18年4月より開始されました。しかしながら現在の出題方法では、視覚障害者が受験することがほとんど不可能な状況にあります。そこで私どもでは、この「日商PC検定」を視覚障害者が受験できる仕様に改良すべく、日本商工会議所のご協力の下に鋭意努力をしているところです。今秋には、受験機会均等を実現すべく[日商PC検定試験]完全実施のご案内ができるよう準備を進めております。

 今でも、中途で視覚障害者になられた方々から、「目標となるこの競技大会を続けてほしい」という声が多く寄せられております。しかしながら、ネット試験会場として適しているか日商の認定を受ける必要があり、これまでのように競技大会と検定試験とを併せ実施することが困難となったことに加え、昨今の厳しい財政状況のなかで、施設も職員の補充ができない状況下にあり、競技会を運営するだけの体力が今現在は無くなっているのが現状です。そこで、私どもとしては本意ではございませんが、この競技大会を中止せざるを得なくなりました。今後、環境が整い、また新たなる財源ができれば、再び競技会を実施していきたいという思いを、職員一同、いまも強く持ち続けております。どうぞご理解を賜りますようお願い申し上げるとともに、長年にわたりご支援ご協力を賜りました関係各位に改めて御礼申し上げ、謹んでお知らせする次第です。

 なお、「日商PC検定試験」は、当センターを会場として実施可能にするよう目下鋭意努力しているところであります。本年12月2日を目途に進めているところであります。いずれ当センターのホームページに開示する予定です。
 今後とも当センターの事業運営にご協力をいただければ、このうえなく幸いに存じます。





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