ゾイドバトルストーリーとは?



ゾイドバトルストーリーとは、旧ゾイド発売当時から現在まで続くゾイドワールドの本筋ストーリーである。

現在、もっとも有名なゾイドストーリーといえばやはりアニメ版だろう。アニメ版ゾイドは既に2作品が公開され、現在アメリカで最新作が公開されている。しかしなんといっても本筋はゾイドの主力商品であるポップアップモデルと、それに直結したゾイドバトルストーリーであり、アニメ版ゾイド、またアニメ版からさらにスピンアウトしたコミックス版ゾイドの世界観も、すべてバトルストーリーが基となっている。
もっとも、アニメ版やカードゲームに登場したキャラクターやゾイドがバトルストーリーに登場するなど、各メディアで展開されるストーリーが相互に影響を与えているというのが実情だろう。

このコーナーではゾイドバトルストーリーの内容を簡単に紹介するに留めるが、その前に、前述のように現在もっともポピュラーなアニメ版ゾイドとの比較をしてみたい。
まず登場する勢力であるが、アニメではヘリック共和国とガイロス帝国を軸としてストーリーが展開した。バトルストーリーでも同様の勢力が登場するが、ひとつ付け加えておけば、後述のバトルストーリー1〜新バトルストーリーではガイロス帝国は暗黒帝国と呼称されていた。また当時の戦いはヘリック共和国とゼネバス帝国を中心として行われ、暗黒帝国は新バトルストーリーに至ってようやくその全貌を現す。そして公式ファンブック以降においてはアニメ版の設定を取り入れた物語展開が図られ、ヘリック共和国とガイロス帝国の激突が描かれることになる。
人物についていえば、前述のように数名のキャラクターが公式ファンブック以降のバトルストーリーに登場を果たしている。列記すると、共和国側がルイーズ大統領とハーマン、ハルフォード、帝国側がプロイツェン、ルドルフ、シュバルツ等である。またアニメ版で登場した新規デザインのゾイドたちもバトルストーリーで重要な役割を演じることになる。ブレードライガーやジェノザウラー等がそれである。
そしてアニメ版ゾイドでもっとも重要なキーとなったのが古代ゾイド人関連の設定だろう。バトルストーリーでは、古代ゾイド人は存在したものの、その末裔が生き延びているという事実は今のところ確認されていない。また古代ゾイド人と対になる存在であるオーガノイドに関しては、ゾイド用遺伝子工学ともいうべきオーガノイドシステム技術として登場する。このシステムを残したのが古代ゾイド人であり、その遺跡はアニメ版ゾイドの舞台ともなった西方大陸に散在している。またデスザウラーやデススティンガーはアニメ版に登場したようなゾイドではなく、あくまでも現代惑星Zi人が開発したゾイドである。
このように、公式ファンブック以降のバトルストーリーは多分にアニメ版とのリンクが計られている。アニメ版の放送を受けて構成されたストーリーなので当然といえば当然ではあるが、それでも両者の間に直接的なつながりはない。何よりバトルストーリーの世界にはバンもフィーネも存在しない。また/ゼロ以降のアニメに関しても登場することはない。こちらは世界設定がバトルストーリーおよびアニメ1作目よりもはるかな未来であるということもあるだろう。

さて、ゾイドバトルストーリーには大きく分けてふたつのシリーズが存在する。
ひとつがゾイド発売当初から開発休止に至るまでのシリーズであり、ゾイドバトルストーリー1〜4、新ゾイドバトルストーリーの5冊がムックとして刊行されている。このムックは現在絶版ながら、ゾイド20周年記念企画であるゾイドコアボックスにおいて完全復刊という形で復活を遂げた。
もうひとつがアニメ版ゾイド放映と連動して開始されたものであり、公式ファンブック1〜3がムックとして発売されている。こちらは現在でも入手可能である。また前述のゾイドコアボックスにおいて、「プロイツェンの反乱」と題するバトルストーリーが公開された。これはコロコロコミック誌上において連載されたディオラマストーリーを再編制したもので、公式と認めてよいものかどうかは議論の余地がないではないが、ここではこのムックもバトルストーリーの一環として扱うこととする。

それでは、各ムックごとの内容を簡単に紹介する。別掲の年表も参照されたい。

・ゾイドバトルストーリー(2030〜2038)
ZAC2030年のゾイドゴジュラス誕生から、ゴジュラスのライバルたるアイアンコングの登場、決戦用ゾイドであるウルトラザウルスとウルトラをめぐる帝国軍スパイ「エコー」と共和国軍の熾烈な戦いが描かれた。

・ゾイドバトルストーリー2(2039〜2044)
ゼネバス帝国軍の敗退と逆襲、そしてついに完成したデスザウラーによる共和国首都陥落までが描かれた。この巻から主人公が設定され、老練な軍人でありゼネバスの幼なじみでもあった共和国軍ヨハン・エリクソン大佐と、エリクソン大佐に兄を殺された帝国群の若きエース、トビー・ダンカン少尉の対決を軸にストーリーが展開した。

・ゾイドバトルストーリー3(2044〜2046)
首都を失った共和国軍の大反攻作戦を背景に、初期バトルストーリー通じての主人公であるヘリック大統領と、その親衛隊員でありながら誰も殺さないという信念の下に戦うローザ・ラウリ大尉、そして戦争で部下を失ったがゆえに戦争の早期終結を願い、そのためにヘリックを狙う帝国軍フランツ大尉の戦いが描かれた。

・ゾイドバトルストーリー4(2047〜2048)
これまでとは打って変わって、この巻で主役を務めるのはふたりの技術者である。帝国軍技術将校マイケル・ホバート少佐と共和国軍ハーバート・リー=チェスター教授のゾイド開発競争を描きつつ、戦争とは何か、技術とは何か、そして人間とは何かを語りかける構成となっており、マッドサンダーによる共和国首都奪回作戦を絡めた非常に読み応えのある内容となっている。

・新ゾイドバトルストーリー(2051〜2054)
この巻でついに暗黒帝国軍が本格的に参戦する。ゼネバス帝国を上回る力をもつ暗黒軍、そしてその象徴として暴威を揮うギルベイダーと、ギルベイダーを倒すべく奮戦する共和国軍R.S.クルーガ少尉の戦いが描かれた。この巻では珍しくクルーガ大尉のカウンターパートとなる暗黒軍側の主人公が設定されておらず、その分ギルベイダーの脅威や、クルーガの上官であり友人であり、そしてクルーガを守って散ったグラハム大尉らの魅力が描き出されている。

・公式ファンブック1(2099.6〜2099.10)
前作から45年、ガイロス帝国が再び共和国に宣戦布告。舞台を西方大陸に移し、帝国軍と共和国軍の全面戦争、そして帝国軍のデスザウラー復活作戦とそれを阻止して散った共和国軍高速部隊の奮戦が描かれた。この巻では明確な主人公は設定されていないが、アニメでは頭の固い軍人として登場したハルフォード中佐の戦い振りは必見である。

・公式ファンブック2(2100.1〜2100.10)
デスザウラー復活に利用された古代の超技術・オーガノイドシステムと、オーガノイドシステムを組み込まれて生まれた(アニメでお馴染みの)新型ゾイドたちの開発競争を背景に、帝国軍の若きテストパイロット、リッツ・ルンシュテッドと、共和国軍の至宝「レオマスター」のひとりアーサー・ボーグマン少佐の戦い、そして暴走した真オーガノイド・デススティンガーとの決戦が描かれた。この巻ではバトルストーリー4巻と同様、果てのない兵器開発競争を描きつつも、行き過ぎた技術の危険性や人間とゾイドとの関係論などが暗示されているといえよう。

・公式ファンブック3(2100.10〜2101.8)
この巻をもっていよいよプロイツェンの野望が本格的に始動する。秘密部隊鉄竜騎兵団と共和国軍快速部隊閃光師団との激突を描きつつ、「プロイツェンの反乱」およびネオゼネバス帝国の中央大陸征服に至る物語のオープニングといえる内容になっている。この巻の主人公は共和国軍レイ・グレック中尉と鉄竜騎兵団ヴォルフ・ムーロワ。アニメ/ゼロで登場したゾイドたちが初登場している。

・プロイツェンの反乱(2101.8〜2102.1)
この巻ではプロイツェン、ルドルフ、ハーマン、シュバルツといったアニメでお馴染みの面々がキーマンとなり、暗黒大陸における帝国軍と共和国軍の全面対決と、プロイツェンによるネオゼネバス帝国建設、そして鉄竜騎兵団の中央大陸征服までが描かれている。特にプロイツェンの、アニメとはまた違った、ある種の爽やかさすら感じさせる行動が魅力と言える。またこの巻においては、妄想戦記に登場したゾイドたちも出演を果たしている。


バトルストーリーの魅力はストーリーもさることながら、やはりなんと言ってもふんだんに使われているディオラマ写真であろう。特に旧バトルストーリー(バトルストーリー1〜4、新バトルストーリー)においては、1/72のポップアップキットのみならず食玩等の小スケールゾイドが巧妙に利用され、戦場の空間を演出するのに一役買っている。逆に公式ファンブック以降ではCGが多用されており、どちらも甲乙つけがたい味わいを持っていると言えよう。また旧バトルストーリーでは第二次世界大戦のテイストが豊富に盛り込まれ、独特な雰囲気を醸し出している。もちろん第二次世界大戦について知らなくとも十分に楽しめるが、知っていればそれだけ雰囲気を味わうのに役立つだろう。


アニメとはまた違う魅力を持ったゾイドバトルストーリー。アニメしか知らないというゾイドファンも、一度目を通してみては如何だろうか。特にポップアップキットの好きなファンはのめりこむこと請け合いである。






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