相談事例109の相談内容と回答(H13.8.1)

●相談文
 63歳の父の症例についての相談なのですが、現在、週3回の人工透析を受けている状態です。
●他人と話をしている途中で、急に「何の話をしているのか全く判らなくなり」頭の中が空白になってしまう。
●毎日何度も訪れているところへ行く途中に、「どこを通れば目的地に行けるのか判らなくなる」
●上記と同様に、「どこへ行こうとしていたのか判らなくなる」
------------以上、本人の申告------------
●「アレをアレしたら」「アレをアレしてくれる?」などと頻繁に代名詞のみでの話をする。
(「アレでは分からないのでキチンと説明して」と問いただしても説明できない)
------------以上、周りの見識------------
本人の性格は温厚で、「頭に血が上る」などということも殆どありません。

上記の症状が腎臓病からなのか、薬の副作用原因なのか、老化なのか、痴呆・アルツハイマー病の初期症状/予兆なのか?
また、家族としてどのような対応を心がければよいのかアドバイスを
いただけませんでしょうか?本人には「主治医に相談しなさい」と言っていますが、相談しては来ません。


●回答文
 はじめの症状は全く訳がわからなる全健忘症かとも思いましたが、話をしなけければならない、とか、あそこに行かなければならない とかの目的は分かっているようなので、自分の直前の記憶が抜ける近時記憶の障害でしょう。話が代名詞になるのはよくある症状ですが、物品の呼称を忘れる健忘失語といわれるもので軽度の記憶障害です。この場合は名前は思い出せなくても何に使う物品とか、手に取ると使用法はすぐに分かるものです。また、名前のヒントを言われるとすぐに思い出すこともあります。いずれも、記憶・記銘力の障害ですが、正常者にも見られる軽度の症状です。ただし、そうだからと言って、アルツハイマー型老年痴呆や、血管性痴呆の始まりであることも否定は出来ません。63歳で人工透析を受けておられる腎臓病が何の病気かは分かりませんが、かりに動脈硬化性の硬化腎であったとすると、脳血管にも動脈硬化による脳梗塞ができているかもしれませんね。お薬の副作用とありますが、肝腎の薬の名前が書いてないので何とも分かりません。 血圧は如何でしょうか。透析の日とそうでない日とでどのぐらい違いがあるでしょうか。高血圧、低血圧も関係します。症状がどんどん進行していくようならば、早いうちに神経内科を受診してください。そうでなければ、少なくとも透析の先生には相談しておくべきでしょう。家族の対応としては、あまり責め立てたりせず言葉のヒントなどを言ってあげましょう。