相談事例61の相談内容と回答(H13.5.21)

●相談文
 30歳で平成12年2月に出産しました。
 3月上旬に一般の健康診断を受けその際肝機能のALPとγ−GTPの値脂質の総コルステロールとHDL−Cの値が再検査となり胃部X線検査ではポリープが見つかりました。脂質に関しては、再検査で正常値でしたので問題は無いとの事。胃部は内視鏡検査をその際にポリープ2つを切除しポリ−プは陽性であることが解りました。しかし肝機能は更に精密検査を受けた結果ALPの値は正常に戻ったもののγ−GTPの値はまだ高く更に抗核抗体が陽性であると言われました。また肝臓に血管種があるとのことでした。消化器科に通院し、今後経過を見ていくことにはなっています。
 抗核抗体について以下のことを伺いたく思います。
1:なぜ抗核抗体が陽性になるのでしょうか。原因はありますか?
2:抗核抗体の値は改善することはないのでしょうか?
  改善するのであれば、その方法をお教え下さい。
3:平成12年2月に男子を出産しましたが切迫早産と低置胎盤のため3ヶ月の入院37週での出産でしたが、子ともが2098gと小さかったため未熟児センターへお世話になりました。
抗核抗体が陽性だと、未熟児が生まれやすいと聞きましたが本当でしょうか?
またそうして生まれた子供に影響はないのでしょうか?
また第2子を希望していますが、未熟児になる可能性が大きいのでしょうか、もしくは、子供は望まない方がよいのでしょうか?
4:抗核抗体が陽性の場合、日常生活で気をつけることはありますか?
よろしくおねがいします。


●回答文
【消化器科の立場から】
 抗核抗体は自己抗体と呼ばれる血液中の異常なタンパク質のひとつです。自己抗体と総称されるこの異常タンパク質は自分自身の組織を傷害することがあり、圧倒的に女性に多く認められます。抗核抗体はスクリーニング検査でよく測定されますが、健康な方でも陽性となることがありますので、他の自己抗体、たとえば抗燐脂質抗体を調べて頂いてみてはどうでしょうか。自己抗体にはそれぞれ面倒な名前がついていますが、発見のいきさつなどによるもので、言葉自体にはたいした意味はありません。抗核抗体も含めて多くの自己抗体が早産の原因のひとつにあげられています。この点については産婦人科の先生に尋ねましょう。 抗核抗体ができるのは体質的なもので、それを無くすることは現状では困難です。妊娠との関係も婦人科の先生に尋ねてみましょう。肝血管腫は超音波検査でしばしば発見されるようになりましたが、年1回くらいしらべて大きさが変わらぬことを超音波で確かめて貰うとよいでしよう。若い女性にみられる胃の小さいポリープは癌とは無関係のもので、数が増えたり消えたりしますが、放置してかまいません。肝機能の異常の原因は、自己免疫性肝炎でないことを確認すべきです。抗ミトコンドリア抗体と免疫グロブリンIgMを測定すると分かります。自己免疫性肝炎には有効な経口薬があります。主治医に相談して下さい。自己抗体がある方はしばしばアレルギー体質ですから、薬を処方されるときや造影剤を注射される場合があったら、その旨を医師に申告してください。
【産婦人科の立場から】
 一般に、抗核抗体や抗燐脂質抗体などの自己抗体を持っているひとは、流産や早産をしやすい傾向があるといわれています。したがって、今回の切迫早産・未熟児出産が抗核抗体陽性と関係がある可能性はありますが、そうだと断定することもできません。健康な人でも抗核抗体が陽性に出ることがあるからです。抗燐脂質抗体その他いろいろな自己抗体を調べてもらって、自己免疫性の早産体質なのかどうか、はっきりさせることが大切です。 抗核抗体以外に自己抗体を持っていないという結果でしたら、次の妊娠についてあまり心配することはないわけです。 自己抗体と関係のある早産で生れた赤ちゃんについては、自己抗体を持ち易い体質が遺伝するという程度のことではないかと思います。なお、何種類かある自己免疫疾患のうち、全身エリテマトーデスという病気だけは妊娠しないほうがよいとされているのですが、この病気では、全身のあちこちに紅斑と呼ばれる赤い斑点が出ますし、関節が痛んだり、貧血になったり、血漿板が減ったり、腎臓、心臓、神経などにいろいろな症状がでます。あなたにはこれらの症状はないものと思われますので、今後の妊娠をあきらめる必要はないでしょう。