相談事例52の相談内容と回答(H13.5.1)
●相談文
急激な頭痛によりコンピューター診断の結果、下記の判定でした。
「病院の精密検査の必要あり」
ただし、既に脳神経外科受診済みで、CT検査及び骨髄液採取をして、問題なく頭痛はあまり軽減されないまま帰宅しました。一日はあまりに激痛で、救急車で運ばれ、点滴をしましたが、その痛み止めもきかず、どうなることかと思いました。このような場合、他に考えられる病気は本当にないのでしょうか?たとえば内科的病気とか。他にやるとよい検査とかあればお教えください。
本当に心配です。お返事お待ちしております。
性別: | 女性 |
年齢: | 50〜59歳 |
今回の頭痛の部位: | 前のほう・ひたい・おでこ |
いつから始まったか: | 4日〜1週間前 |
頭部打撲歴: | 頭や顔を打ったことはない |
過去の経験と比較: | これまでに経験した事がないような頭痛 |
痛みの程度: | 我慢できないほどの激痛 |
痛みの性質: | ズキンズキンズキンと脈打つように続く |
始まりの様子: | 急激に始まり、その時がいちばん痛かった |
随伴症状: | 吐き気、気持ち悪くなった |
頭痛の治まるとき: | まだ多少痛い(重い)、すっきりしない |
憎悪するとき: | 咳、くしゃみでひびく |
| 便所などで力むとひびく |
一日の経過: | 一日中痛い |
朝目覚めたとき: | あまり痛くない |
短期的な経過: | だんだん軽くなっている |
最近継続している症状: | 食欲低下 |
| 早朝から目が覚めてしまう |
| 気分がすぐれない |
●回答文
問診表のお答えからは、やはり、も膜下出血がもっとも考えられます。そして、すでに病院を受診され、脳CT検査と脳脊髄液採取(骨髄液とありますが)を受けられ、問題なかったらしいですね。脳脊髄液採取まで行われた、と言うことは、病院の医師も真剣にくも膜下出血を疑われたからでしょう。幸いなことに、そうです、大変幸いなことに結果はくも膜下出血ではありませんでしたね。専門医としては、こうした経験は年に数回はあります。くも膜下出血そっくりな症状で来院され、検査が陰性であった経験です。相談者はすぐに十分な検査を受けられて良かったと思われます。ここまでの検査を受けられないまま、普通の頭痛として治療を受けられると、こうした検査をするタイミングを失ってしまいます。そうすると、いつまでも「あのときはくも膜下出血ではなかったのか。」という疑問が残り、生活上の精神的不安も生まれ、場合によっては脳血管撮影をしなければ決着がつかない羽目になります。
では、いまではどんな病気が考えられるのか。そこで次に考えるのは良性血管性頭痛、つまり、片頭痛です。よく聞くと、頭痛は突然起こったとは言っても、激痛になるまでに十数分ほどかかっていた、などと多少の時間差があり、本当の突然ではないこともあります。そして、50台の年齢では、これまでに多少とも頭痛持ちであった、低血圧症体質であった、ということ(既往歴)があるはずです。そのほか、考慮しなければならない診断としては、緑内障ですが、これは強い視力低下が必発ですから、まず考えられないでしょう。後頭部が強く痛んだときには、椎骨動脈の内膜解離もありますが、相談者の場合は前頭部のようですから、あまり考えられませんね。ほかには、下垂体卒中という病気もありますが、これはCTで分かりますから、心配ないでしょう。
ということで、特に他の科にかからなければ分からない病気とか検査はありませんので、今の病院、医師に十分相談されておかれれば良いと思われます。