相談事例27の相談内容と回答
(H13.3.6)
(H13.9.30)修正回答の追加

●相談文
 現在45歳の主婦です。昨年おりものが気になり婦人科で診察を受けました。おりものは異常なかったのですが、子宮内膜増殖症と診断され、一年に一度検査を受けるよう勧められ、今年別の病院で検査を受けました。子宮ガンは見つからなかったのですが、要生検とのことで、ソウハをして検査しました。結果異型ではないとのことで、しかし子宮をとるか、3ヶ月に一度検査していくか。二者択一で、なんか子宮摘出の方がいいようなことも言われました。10年ぐらいまえに子宮内膜症といわれ、6ヶ月鼻から薬を入れ治療しました。何か関係あるのでしょうか。増殖症になるとこわいものなのでしょうか。子宮摘出した方がいいのでしょうか。卵巣と関係あるのでしょうか。いろいろ教えてください。よろしくお願いします。


●回答文
 今年の医師は、「子宮内膜増殖症だから、子宮をとるか3ヶ月に1回検査をしていくか」と言ったのではなく、「子宮内膜が厚くなっていて、癌になりやすい状態だから、3ヶ月に1回検査を繰り返す必要がある。子宮をとってしまえば、そのわずらわしさがなくなるし癌の心配もなくなる」と言ったのではないでしょうか。ところがあなたは前の年に子宮内膜増殖症という診断を受けていたために、「子宮内膜が厚くなっていて、・・・」という説明を「子宮内膜増殖症だから、・・・」と解釈してしまったのではないかと思うのです。
 そこで先ず「子宮内膜増殖症」という病気から説明していきましょう。これは正式には「異所性子宮内膜増殖症」といって、本来子宮内膜が存在する子宮内膣の表面とは異なる場所(異所)に子宮内膜の組織が増殖する病気のことです。その「異所」としては、子宮の筋肉組織の中、子宮の外側の腹膜面、卵巣や卵管、腸の表面などがあります。一般の人には「異所性」という言葉はなじみがないので、それを省いて「子宮内膜増殖症」といったり、さらに「増殖」という言葉も省略して「子宮内膜症」といったりしているのです。つまり、あなたが10年ぐらい前にいわれた「子宮内膜症」と今回の「子宮内膜増殖症」とは同じ病気です。
 子宮内膜症の症状は、子宮の筋肉内にできた場合は月経のときにそこにも出血して腫れだんだん大きくなって子宮筋腫に似たこぶをつくり、生理痛が強くなりますし、子宮の外にできた場合も出血のために腫れたりまわりと癒着して、下腹痛を起したり不妊症の原因になったりします。また、卵巣にできると血液がたまって卵巣嚢腫のようになります。 さて、子宮内膜症の治療ですが、最初に行なうのは、あなたが10年前に受けた点鼻薬による治療で、これでかなりよくなります。この治療が無効で、卵巣嚢腫が大きくなってしまった場合は、手術で嚢腫の部分を(健康な卵巣の部分は残して)摘出しますし、子宮のこぶがだんだん大きくなって、強い鎮痛剤を使っても生理痛を抑えられなくなったら、子宮を摘出せざるを得なくなります。つまり、あなたが子宮内膜症で子宮をとらなくてはならないのは、こんな時だけなのです。
 したがって、今回子宮をとったほうがよいような説明があったのは、子宮内膜症のためではありません。今回そのような説明があったのは、最初にのべたような事情によるのではないかと思うのですが、検査の結果、前癌状態の異型細胞も見つからなかったのですから、癌を恐れるあまり、予防的に子宮をとってしまうというのは、ちょっと行き過ぎではないかと思います。 


●回答文の修正
 今年3月に「子宮内膜増殖症」についてのご相談を受けた時に、私が勘違いをして、病名について間違った回答をしてしまい、あなたを混乱させてしまったと思います。深くお詫び申し上げ、その部分を訂正させていただきます。
 前回の回答では「子宮内膜増殖症」という病名は、正式には「異所性子宮内膜増殖症」という病名の「異所性」という言葉が一般の人になじみがないので、それを省いたものだとしてしまいましたが、これが間違いです。「異所性子宮内膜増殖症」は、前回回答のとおり、本来子宮内膜が存在する子宮内腔の表面とは異なる場所に子宮内膜の組織が増殖する病気ですが、「子宮内膜増殖症」は本来の子宮内腔にある子宮内膜が異常に増殖したもので、子宮体癌(子宮内膜癌)になりやすい状態と考えられています。したがって、定期的に内膜細胞の検査をして、異型細胞がないかどうかをチェックし、癌の早期発見につとめようということになるわけです。
 この前もお答したとおり、この状態で、予防的に子宮を摘出するのは行き過ぎです。
 あなたが以前治療したことのある「子宮内膜症」は、「異所性子宮内膜増殖症」のことで、「異所性」と「増殖」とを省略した病名だということを説明しようとしているうちに、間違った説明になってしまいました。重ねてお詫び申し上げます。