(総合編 第6話)
「飲食物から感染するA型肝炎」

冬から春にかけてはA型肝炎が多発する季節です。A型肝炎に感染すると中高年の方は重症になることがあります。最近の日本では若年層で免疫をもつ人が減っており、重症患者が増加することが懸念されています。

ウイルス性肝炎は、現在A〜E型に分類されており、多いのはA,B,C型です。B・C型は血液を介した感染が主であるのに対し、A型は食品を介した感染が多いのが特徴になっています。

A型肝炎は、潜伏期間が2〜6週間、症状は発熱(38℃以上の熱が3,4日続く)・倦怠感から黄疸とすすみ、通常は1〜2ヶ月以内に治療します。一度かかれば終生免疫を獲得します。小児では症状が無いことが多く、出ても軽症ですみますが、大人ですと重症となる率が高まります。

東京都では、平成8年から9年1月にかけて都内で販売されている二枚貝19種類、東京湾内に生息する二枚貝11種類を調査しました。その結果、ハマグリ・アサリ・ウバガイ・ムール貝、シオフキ・バカガイ・コタマカイ・カキ・オオノカイからA型肝炎ウイルスを検出しました。

従来の研究結果からもカキ・シジミからの検出率の高さが指摘されています。

予防には加熱が最も効果的です。酢、レモン汁は効果がありません。60℃では1時間加熱しても消毒できません。最低100℃10分の条件を守るように調理してください。なお、カキフライ等揚げ物では、油の温度は140℃以上でも中身に熱が通ることが難しく時間も短すぎることが多いので、消毒することは出来ないものと考えて下さい。

漂白剤は、よい消毒作用があります。しかし、アルコールでは消毒できません。海外旅行をするときには、生水・氷・刺し身・生野菜・カットした果物等の軽食は避けましょう。長期滞在する場合には、A型肝炎ワクチンを打っておくとよいでしょう。

なお、A型肝炎ウイルスは患者の糞便中に存在します。患者に接触のある方は丁寧に手を洗って下さい。

 

(品川区荏原保健所長田村英子)

(品川区荏原保健所食品衛生監視員和田豊)

Copyright(c) 1998 TAMURA Eiko