(総合編 第1話)
「鶏卵とサルモネラ食中毒」

過去5年間に全国で発生した細菌性食中毒はサルモネラ菌によるものが最も多く、このサルモネラ菌は約2500種の型に分類されますが、その中の一つ、サルモネラ・エンテリティディス(以下SEと略す)によるものが8割前後をしめています。

◯ 鶏卵によるサルモネラ食中毒は何時頃から多くなったか

1998年頃からSEに汚染されていた卵による食中毒がイギリスで多発し、感染した鶏の卵の輸入で、数年後にはドイツ、スペインなどに続いて日本にもSEが持ち込まれたと考えられています。

◯ 鶏卵の汚染経路

卵のSE汚染には@鶏卵の卵巣、輸卵管等にSEが存在し、産卵時にはすでに卵内からSEの汚染を受けている場合 A産卵以降、卵殻表面に付着したSEが卵殻を通過して汚染する場合、の2つの経路があります。このうち汚染の多いのはAの方です。SE保菌鶏から卵内へのSE汚染は産卵されたすべての卵におこるのではないのです。SE保菌鶏の卵の1.5〜2%がSEに汚染されています。

◯鶏卵中のSEの汚染菌量

鶏卵中のSE菌数は、産卵後室温で7日以内ならば20個未満であり、この量なら食べても食中毒にはならないでしょう。(生食は新鮮な物を)

◯ 殻付き卵でのSEの増殖状況は、

  1. 8℃では卵黄内でSE菌増殖せず。
  2. 10℃では増殖してもその速度は極めておそい。
  3. 23℃では急速に増殖する。

以上の結果から、冷蔵(10℃以下)では、たとえ卵黄内に菌がいてもほとんど増殖しないです。

◯ 卵にひびが入ると、そして、古くなると

卵殻はクチクラ層と呼ばれる分泌物に覆われていますが、殻にひびが入っていたり、卵が古くなってクチクラ層が剥がれてくると、殻についていた菌が卵の内部に容易に侵入してしまいます。新鮮な鶏卵には、リゾチームという殺菌力がある酵素がふくまれしかも卵白のphは微生物が増殖しにくいアルカリ性です。しかし、時間の経過とともにこれらの機能が失われて、栄養価の高い卵黄の成分も卵白部分ににじみだしてきて細菌が増えやすくなるのです。

このような理由で汚染卵の菌数も20℃の室温保存した場合には、産卵21日以前

と比べ著しく増殖するのです。

◯ 鶏卵による食中毒防止対策

管理の良い店で、ひび割れのない新鮮なものを購入、冷蔵保存し、早めに使いきるようにしましょう。卵を割ってからの保存はしないようにします。調理の際は十分に加熱をしましょう。

 (品川区荏原保健所長田村英子)

(同食品衛生監視員佐々木智)

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