白状するが、わたしは恋愛モノは小説でも映画でも漫画でも基本的に見ない。
なんでかと言うと、「けっきょく結末が二つしかねーじゃん」と
かたくなに思いこんでいるからである。
ラストで結ばれたら、「あー、よかったね」であり、ラストで別れたら、
「あー、だめだったね」の二つしか感想がないではないか。
そんなのつまんないよ。
だもんで、少女漫画でまともに読んだのは小学生のとき読んだ
『はいからさんが通る』くらいである。
これは傑作で、『あさきゆめみし』よりも好き。
大正時代に照準を合わせた実にいい「浪漫」であったなあ。
そんなわたしなので、「ラブコメ」などは以ての外。
本棚を隅ずみまで見まわしたら、「ラブコメ」の称号に値するのは、
『めぞん一刻』くらいであった(おじさんなのでね、世代的にね、やっぱりね)。
ところが近年確実にはまった「ラブコメ」がある。それが今回ご紹介する
『すべてに射矢ガール』である。
作者はほとんど無名のロクニシコージ。連載デビュー作で、
ヤングマガジンに掲載されていた。5巻にて完結。
連載中からチェックはしていて、単行本をまとめ読みしたら
かなり面白かったので全巻買ってしまった。
物語はお約束の発端で、主人公の山田くんが転校してきて
偶然隣に坐った女の子と恋に落ちる、という
典型的なボーイ・ミーツ・ガールものなのだが、ヒロインの設定がすごい。
彼女、鳥井あすみちゃんは、
左のこめかみから右のこめかみまで「矢が貫通している」
のである。「だからなんだよ?」といいたくなりますね。
もちろんただ悲惨なわけではなくおおむねギャグの設定。
しかしながら、この矢を使った悲惨ギャグがなかなか秀逸で、
また、この矢のおかげであすみちゃんは自分にガチガチのコンプレックスを
いだいている(そりゃそうだ)。つまり彼女は、「射矢」ガールであり、
「すべてにいや」ガールなわけだ。
結局、やはりお約束どおり、山田くんとあすみちゃんはラストで
結ばれるわけだが、それは実はどーでもよく、その直前に
かなりとっておきの「問題解決」のシーンが挿入されており、
おそらくは最初から想定していたエピソードだと思うが、
これには「あっ」と言わされた。爆笑して、それからじんときた。
最終巻のコメントで、作者は「最初から女の子の成長譚を書くつもりで、
ラブコメと言われたときにはびっくりした」と述べている。
なに、読んでみれば確かに内容はラブコメなんだけど、
その根底に流れているものがわたしにはぐっときたらしい。
だって一歩間違えると、●●ネタの作品だよこれ。
絵柄もちょっと独特で、好き嫌いが分かれる作品だと思うが、
できればパラパラとめくっていただきたい。
最近では大きな本屋さんにもなかなかないのだが……
作者のロクニシさんは、これ以来とくに連載とか持っていない。
色いろ書けそうな人なのでもったいないなあ、と思う。がんばってください。
海外に輸出される日本漫画が多い昨今だが、なんでも、アメリカでは
「ラブコメ」はいまいちうけがよくないらしい。
恋愛にオープンで積極的な土地柄では、
「なんでこんなにウジウジモジモジしているのか」理解しづらいのだそうだ。
そういう話を聞くと、ラブコメって、日本のオタク文化独特のものなのかなあ、
と思ったりする。
(なんかラブラブ何度も書いててだんだんこっぱずかしくなってきました。
カナブンよりもごめんなさい)
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