久し振りなのに、2回めからいきなりディープなところに行って
すんません。さて、「女性に不人気な漫画家ベストテン」
などという企画があれば必ずや上位に食いこむに違いない漫画家、
どおくまんである。
と言うより、どおくまんなんて女の人が知ってるわけねーか。
さらに今の十代の子供じゃオヤジ週刊誌にしょーもない
ギャグ漫画を書いてるぐらいのイメージ しかねーだろーしな。
やれやれ。
しかし、かつてどおくまんは本当におもしろかったのだ。
あの1980年代前半における〈黄金時代の少年チャンピオン〉を
知っている人にとってはちょっと忘れられない存在のはずだ。
ツッパリ漫画の金字塔である『熱笑!!花沢高校』(秋田書店)は、
連載当初の 「弱虫がハッタリだけで成り上がろうとする」
シチェーションで 『カメレオン』その他に影響を与えた。
また、ちょっと知られていないが、
「あまりのスピードのために、手が何本にも見える」 という絵は
『北斗の拳』より先にこの漫画のケンカシーンで どおくまんが試みている。
『花高』はギャグ漫画としての出だしから、信じられないほど話が
膨れ上がり、最後には大阪中を巻きこんでミサイルやら、
マシンガンやら、ヘリやら、ホバークラフトが使用され、
数万人の不良が大戦争するラストにつながる。
まさに少年ジャンプもまっさおのワルノリであった。
女性に不人気な要因であり、イメージを決定づけた
『嗚呼!!花の応援団』(双葉社)も、連発される
お下劣下ネタナンセンスぶりは、今読むとあの時代の雰囲気を
よく伝えているし、じっさい爆笑できるところも多い。それに加えて、
よくできた「泣ける話」も少なからずあって、
ぼくは小学生のころ愛読していて、ほろほろ泣いたものだ。
さらに忘れてはならないのが、月刊少年チャンピオンで
十数年にわたって連載していた『暴力大将』(秋田書店)である。
これは第二次大戦以前から話が始まり、主人公の「力道剛」が
陰謀にはめられ、矯正院(当時の少年院です)に送られ、
さらにガダルカナルなどの戦地に送られるも、不屈の闘志で帰還し、
仲間を増やしながら持ちまえの根性で戦後の日本で成功していく、
という大河ドラマ的ストーリーである。
こう書いてみただけで分るように、『暴力大将』が「月刊少年誌」で
連載されていたという事実は今の目からすると、びっくりである。
昔の少年漫画はふところが広かったんだなぁ。
後半になって少々トーンダウンしているのは否めないが、
中盤の面白さは驚異的である。
戦前、戦中、戦後という時期を舞台にした漫画は案外すくない。
その中でも『暴力大将』は群を抜いた傑作である。
どおくまんは一篇だけスポーツ漫画も書いており、
これが陸上をテーマとした『怪人ヒイロ』(秋田書店)である。
どおくまん特有のはちゃめちゃな主人公が 活躍するのだが、
陸上のシーンはかなりの迫力があり、
小山ゆうの『スプリンター』(小学館)と匹敵する
陸上漫画の傑作であると、ぼくは思う。
後半になって野球漫画になってしまい、かなりつまらなくなるのが
悔やまれるが、やはり傑作である。
以上、どおくまんの代表作をざっとおさらいしてみた。
ツッパリ漫画(昔はヤンキー漫画のことをこう言いました)こそ、
どおくまんの本領である。硬派漫画のパイオニアというと、
本宮ひろ志 ばかりがもてはやされているが、
どおくまんも全くひけをとっていない。
吉田聡に与えた影響も大きく、絵がらみが一般的でないのを
差っ引いても、もう少しちゃんと再評価をされることを望みたいものだ。
一時期、徳間書店から愛蔵版が出ていたのに、
今ではさっぱり見かけないんだもの。
どおくまんは、不良漫画に一時代を築いた存在としても、
アクション漫画に新境地を開いた存在としても 、
殿堂入りしておかしくない漫画家である。
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