まえがきのまえがき

先日タケウチさんと、ある現場でいっしょになったときのことです。
タケウチさんはあぐらをかきながら、ぼくにこう言いました。
「タハラさんサー、あたしねー、今度(あたしの)ホームページを
立ち上げることにしたんだー」

「自分で作るんですか?」

「ううん、人にやってもらうの」

「それはよかったですね」

「だけどねー、これが書くこと全然ないのよー、だからさー、タハラさんも
なんか書いてくんない?ああ、いーのよ、内容はなんでもいーの」

ぼくは困ってしまって、
「あのですね、タケウチさん、ぼくも売れないとはいえいちおー
作家のはしくれですから、字をこつこつ書いてご飯を食べているんで、
だからタダで文章を書くのはどうかごかんべんを」

するとタケウチさんは、
「じゃあさ、ご飯食べさしたげるよ。しかもあたしの手料理を。
なに?それじゃ不満なわけ?あのねー、あたしのファンならさ、
あたしの手料理を食べられるとしたら一食10万は出しちゃうわよ。
つまりあんたのギャラは10万てことよ、だから何か書きなさい。書けこら」

タケウチさんはキャラに似合わずたいへん家庭的なご婦人なので、
作っていただいたビーフぬきのビーフスシチューやドレッシングが
ほとんどかかっていないしゃぶしゃぶサラダはとても美味しかったのです。
ぼくは「ご飯を食べさせてくれる人はみんないい人」と思っているので、
けっしていやいやながらじゃなく、たいへん喜んで連載を始めたいと思います。

ほんとのまえがき

というような事情からコミック・レヴューを始めようと思うわけだが、
このコラムは去年に某劇団のホームページでやっていたブック・レヴューの
姉妹篇だと思っていただきたい。あの連載はじつに人気かなく、
読んでいた人はほとんどいないらしいが、ぼくのなかで姉妹篇なのだから
誰がなんと言おうがそうなのである。

コミック・レヴューと言っても評論とか書評みたいに大げさなものではなく、
ぼくが「これはえらいことおもしろいのに、どーして評価されないのだろう」
と、常づね感じている漫画を重点的にとりあげる。
したがって、いわゆる漫画評論家が誉めちぎるような暴力的なのや
サイコなのやエロなのや、オタクたちが絶賛するようなただ絵がうまいだけの
漫画はほとんど出てこない。そういうのを期待する人は別に読まなくてよろしい。
三十歳を超えてまだ漫画が大好きなことに気づくと、近ごろでは
『漫画サンデー』やら『週間漫画 TIMES』やらがおもしろくって仕方がない。
そんなわけで「おっさんやおばさんがわくわくして読める」漫画が
きっとこのコラムには登場することになるだろう。

2000年6月某日   ヒロポン

menu