その他の天然ガス利用の宿

島道鉱泉 島道鉱泉全景・風呂ガス釜・囲炉裏


前述の柵口から5km程山に回り込んだところに島道鉱泉がある。道路地図には載っていたり、いなかったりする、大正14年築の木造2階建ての古風な一軒宿だ。島道鉱泉は鉾ケ岳・権現岳への登山口であり、作者が訪ねた時にも下山中の登山者の一団が風呂で汗を流していた。
ここは飲料水と鉱泉は裏山から、そして天然ガスは谷にパイプを渡して向かいの山から引き込んでいる。その山は位置関係からも柵口の採取地点方面であることが興味をひく。食事は山菜を中心とした山家の献立で、居心地もよい。誠に隠れた秘湯だと思う。
この鉱泉もやはり歴史があり、永きに亘り高田瞽女(ごぜ)の立ち寄り先でもあった。目の見えない不自由な身でありながら、厳しい師弟制度の元で各地を門づけして歩き、農閑期の集落の数少ない娯楽を提供し続けた瞽女。越後瞽女と共に、高田瞽女の哀しい歴史がある。「瞽女さん〜高田瞽女の心を求めて〜」杉山幸子著 川辺書林刊 ¥2,500-(カセットテープ付)に詳しいので参考にされたい。



荷頃鉱泉

長岡から榎峠を越えると栃尾だ。榎峠と聞くと聞いたようだと思う人がいるかもしれない。そう、ここは前述の東山油田の近くなのだ。以前は鉄道が通じていたが今は車で行くしかない。栃尾は油揚げがとみに有名。さらにここの諸橋酒造は日本酒「景虎」の醸造元だ。筆者は年末から2ケ月だけ出荷される純米酒の生酒が好きで、ここ数年愛飲している。甘めのこってりした酒だ。

宿は2軒あるのだが一軒は開店休業状態で知人しか泊めないとか聞いている。もう一軒の「長生館」は諸橋酒造の蔵の裏手にあり、回りは田んぼである。季節によっては蛙がやかましい程だ。鉱泉の真上の木から換気口を通じて、でかい毛虫(10cm以上はある)がおっこってくることがある。ここは特に意識しないで3回程利用したのだが、以前は横の川の中からガスをとって利用していたとの事だ。

おかみさんの話では以前、すぐ近くで油の試掘を行っていたことがあるそうで、その時の逸話。「油を掘っている時に放出されるガスは空気中で火をつけて燃やす。ガスが出たその日の夜、知事の家にある大きなガラス窓にその火が映り、知事宅が火事だというので消防に連絡して大騒ぎになった」とのこと。


天然ガス紀行総括

日本における石油・天然ガスの埋蔵場所は新潟・山形・秋田に集中している。企業として開発するには採算がとれないが、小規模の石油・ガスなら「どこでもある」というのが素直な印象である。
そもそもの発端となった牧村は以前一度行ったきりだが、昔は油田地帯だったので今でもガスぐらい出るだろう。民宿一軒位の使用量なら無限とも思われる天然ガスだが、やはり限りがあるらしく、たまたま発見されてから数百年使われた現代においてとうとう枯渇し、宿を閉めて歴史を閉じることになったようだ。(河原沢・地獄谷)

推測だが、住民が増えるにつれ、需要に対し供給の面で足りなくなる。そこで村には町から都市ガスが引かれる。(もしくはプロパンを買う)天然ガスを利用している家は絶対少数派になる。大量消費できない不安定さからもいつしか都市ガスに切り替える家がほとんどだろう。そして天然ガスを使う家は無くなったのではないか。(妙法寺)

そこに住む住民は昔から、そして今現在も、それを自然のものとして利用してきたわけだ。(柵口)使いたい時に大量に使えない不便さはあるが、自然の恵みとして大切に使用を続けてもらいたいと感じた。


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