GODARD 1
 

はなればなれに

最高にキュートなノワールもどきの青春映画
(キーワードは三角関係)

いやー、久々にゴダールの映画を満喫した。
本当に洒落た映画である。なんと日本初上映だし、カラビニエと気狂いピエロの間に撮られたという脂の乗りきった時期であるし、なによりアンナ・カリーナのイタヅラっぽい魅力爆発の映画なんである。
マディソン・ダンス(当時フランスで流行ったらしいダンスのステップ、
タランティーノのパルプフィクションに引用された。)
のシーンが何かと引き合いに出されるけれど、個人的には映画を通じて,自転車を運転している時の片腕運転のアンナ・カリーナのシーンに代表されるような思わずスキップ踏みたくなるような爽快感が最大の魅力だった。そう、疾走感のある映画であるな。

この映画はずばり、「青春」の映画と言うことだ。つまり、全ての行為が「ごっこ」で表現されてしまう限定された期間のことである。冒頭のワイアットアープごっこもそうだし、ルーブル美術館を最短で走り抜けるシーンもそう。
あとは、「三角関係ごっこ」である、ということだ。ルビッチの「幸福の設計」を下敷きにしたのかはともかく、ゴダールの映画で三角関係が描かれるのは珍しい事だ。正に、「三角関係」って青春そのものだから。

筋はブルジョアの叔母の家に何故か同居しているオディール(アンナカリーナ)と、その叔母の資産を強奪しようとしようとするさえない男2人の3人組みの犯罪物語である。そう、正にフイルムノワールもどき。一種のコメディとしてみてもいいかも。当然、計画は成功しないが、最悪の結末が待ちうけているわけでもない。

とにかく、そのまくいかないドタバタぶり(アンナカリーナと男2人の擬似恋愛関係においても)を楽しんでさえいればいい映画なのだ。
ゴダールも失敗作だといってるし、お気軽に楽しんだほうが勝ち。
冒頭の英会話学校のシーンのドタバタぶりなど、正にコメディそのものではないか!

とにかく、舞台がパリの癖してうらぶれているのがやたら嬉しかった。
大体、高校時代の貯まり場周辺はこんな風にうらぶれていたものだ。
矢切の渡し(?)みたいな場面が登場するのも嬉しい。なぜか、高校時代学校をサボってうろついていた横浜の関内や石川町を思い出してしまったりして。

ミッシェル・ルグランの映画音楽も素敵だし、何よりも「ミッシェル・ルグラン最後の映画音楽」のタイトルロールの大法螺には大笑いした。しかし、何故か、このシーンに限らず映画館ではあまり笑いがなかったのが残念だったけど。
 

ゴダールといえば、70年代の変な勘違いのせいで、封印されていたゴダールの映画が30年を掛けてやっとその封印を解き放たれているということだ。「中国女」のなんとPOPで楽しいこと!その魅力が今まで正確に語られた事はなかった。
(それはゴダールの写真に対して一様にPOP!という嬉しい反応が返ってくることでもわかることだ。)
こうして、次々にゴダールの映画が解き放たれるというのは、なんという幸福な事だろう!さあ、次は東風を見に行かなくては。

*なお、今回のプログラムは面白いのでちょっと高めだけど
 必読ですよ。永瀧達治氏の評論も読めるし。
 

(2001.02.25)
 
 

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