THE BAND


  VOL1.「ビッグピンク」の影響力について

最近、様々な音楽を聴いていて行き当たるバンドにあのザバンドがある。
一つは、来日前の予習用に買ったエルトンジョンの初期のアナログ、特に、三枚目とマッドマンアクロスウオーターなのだが、ジャケットデザインといい、音楽性といいこれはもろに「バンド」の影響を受けているのだ。「マッドマン」、「サード」ともブックレットはもろに開拓期のアメリカがモチーフだし、マッドマンにはそのものずばり、レボンという曲もある。エルトンジョンとザバンドの取り合わせというのは意外な感じだが、実はこうして繋がっていたのだな、というのが新鮮な発見だった。私が、エルトンを聴きだしたのは、「黄昏のレンガ路」以降なのである。キャプテンファンタスティックには、若干アメリカンロックの影響が見られるものの、他のエルトンのアルバムからは、そんな傾向は見られない。というわけで、エルトンにとっても、一時的な傾倒だったのかもしれないけれど。どちらにしても、当時にザバンドの影響力は、イギリスにおいて相当なものがあったはずだ。

もう一つは、「パブロック革命」という本(これはロックドキュメンタリーとしては最高に面白い本なので、お勧め)にある、ザバンドのイギリスのバンドブリンズレーシュワルツに対する影響および、時代にもたらした影響である。サイケデリックロック全盛の1968年というムーブメントの中で敢えて自身のルーツを探るような音楽性を志向した「ミュージックフロムビッグピンク」が、他のミュージシャンに与えた影響の大きさ。あくまで、68年という年の中でのマスターピースとしてしか見ていなかったが、もっと大きなものがあったのかも知れない。という事は、実はサイケデリックでラブアンドピースな時代というのはもう、68年の後半あたりから、駄目なものとして既に時代遅れのものになりつつあったかもしれない。これは、大きな発見だった。ただ、認識不足だったのかもしれないけれど、ラブアンドピースというのは本当に一時的な流行で、飽きられるのも意外に早かったムーブメントだったのかもしれない。この辺の事を、今後またいろいろと考えて行くと面白そうだなあ。髪を長く伸ばして、コミューンに入ってというヒッピー的な暮らしというのは意外と流行らなかったのかも。というより、そんな大きなムーブメントではもともとなかったのかもしれない。

その代わりに、流行ったのは「ルーツロック」への回帰だったわけだ。
この本を読むと、ロックシーンの大きな転換期には必ず、こうしたルーツロックへの回帰が一つの契機になっているという説がある。その大きなきっかけになったのが「ビッグピンク」だったわけだ。
パンクロックについては、よくそうした分析が語られるけれど、サイケデリックな時代におけるルールロックへの回帰現象についてはあまり語られなかった。
この流れはやがてスワンプ、サザンロックの隆盛につながり、イギリスにおいてはブリンズレーシュワルツによるパブロックの誕生につながっていくのだ。
(この本にも、ニックロウをはじめとする、ブリンズレーのメンバーのザバンドの敬愛ぶりが語られていてとても面白い)66年から、69年頃までの動きというのは本当に見逃せないものがある。
で、バンドのメンバーが実践したのが、ビッグピンクという家でがメンバー全員が生活しながら音楽を作っていくという方法なのだが、これをブリンズレーが真似をしたというのも面白い。
で、そこから生まれたのが、「地下室」というアルバムで正式なリリースの前は「グレートホワイトワンダー」という海賊盤として知られていた。(続く)

参考アルバム

MUSIC FROM BIG PINK/THE BAND

・いわずとしれたザバンドのデビューアルバム。
説明不要の名盤。実は「青い影」のプロコルハルムから影響を受けています。
リマスター盤が話題になりましたが、まだ聴けていません。ザバンドの録音の時の音量は
非常に小さかったそうで、同様にブリンズレーシュワルツも音量が小さなバンドだったらしいです。


 
 
 

MADMAN ACROSS THE WATER/ ELTON JOHN

・71年のアルバム。佳作が多いアルバムですが、私はとても気に入っています。
一〜三曲目までは本当に名曲。


 

(01.11.09)