デーモン
Demon / SPI
ショートコメント
●中世アルメニアを舞台に古文書と悪魔を召還する魔術を頼りに宝物を探す魔法使いたちの戦い
By using the Lamegeton and demons, magicians are hunting treasures in mediavile Armenia.
published designed players time
1979 James F. Dunnigan 2-4 1-2 hours
SPIのダニガン御大の異色作

 SPIのジム・ダニガン御大と言えばウォーゲーム界の基礎を築き上げた人物としての評価は不動のものです。
 しかし、彼は黎明期のシミュレーションゲーム界にあって、単にヘクスウォーゲームばかりをデザインしていた訳ではありません。
 彼の異色のデザインとして、後にAHから再出版された「アウトドアサバイバル」と、この「デーモン」があります。「アウトドアサバイバル」はタイトルの通り野外でのサバイバルを扱ったゲームで、この「デーモンズ」は悪魔を召還してその力を借りて宝探しをするゲームです。
 ゲームの出来栄えは今のドイツゲーム全盛の水準から見ると疑問を感じるところもあるかもしれませんが、1970年代にヘクスゲームの仕組をウォーゲーム以外にも拡張しようとした野心的な試みとして評価できると思います。
 こうした新しい野心的な試みに広く機会を与えたことがダニガンのもっとも偉大な功績だったのではないかと思います。その一方で、それがSPI社の経営的な危機に繋がったのかも知れませんが。
 良くも悪くもSPIは、偉大な先駆者であり、その影響を受けたデザイナーたちが次の時代に実り多い成果を挙げました。

独特のゲームシステム

 中世アルメニアを舞台に、プレイヤーは魔法使いとなって古文書に記された宝物を探しにやってきます。
ファイナル・コメント
 探検もののゲーム、宝探しのゲームであれば、近年のドイツゲームの中にプレイアビリティーやプレイバリューがもっと高いものがいくらでもあると思います。
 ですから、このゲームの評価が今となっては高くないのは無理もないことかも知れません。
 その一方でプレイしやすさを必ずしも志向していないこのゲームには、モチーフのガジェットをそのままの形で取り込んでいるところがあり、多少の資料的な価値があるかと思います。
 この方面に疎いので良くわかりませんが、デーモンたちや宝物のリストは、興味のある人には一定の価値があるのではないかと思います。
 題材は違いますが、ゲームのデザインのされ方という意味でAHの「ブラックベアード」が良く似ている気がします。プレイしたときの面白さより、その時代のガジェットが正しく盤上に反映されていることに力点があるのです。
 また、当時を知る古株のゲーマーにとっては、あのSPIで、あのダニガン御大が、こんな異色のゲームをデザインしていたということの価値が大きいかも知れません。
 いずれにせよコレクター向けのアイテムでしょう。
関連ゲーム
●アウトドアサバイバル
●秘宝の郷
●インフェルノ
●ブラックベアード
 ゲームは、ノンプレイヤーキャラクターである地元の有力者たちと、各魔法使いのプレイヤーターンに分かれています。
 魔法使いたちは、移動/召還フェイズに自身のコマを移動させるか、悪魔を召還することができます。その後の悪魔利用フェイズに悪魔を利用して宝物を探させたり、魔力で他の魔法使いや妨害してくる地元の有力者を攻撃することができます。
 魔法使い本人は極めて脆弱で、その力は召還した悪魔によって支えられています。悪魔には様々な階級があり、より強力な悪魔ほど召還が難しくなっています。
 地元の有力者という存在がこのゲームの独特のテイストで、左の画像の盤上各所に点在する青いユニットがそれです。彼らは単なる権力者ですが、通常の戦闘能力は魔法使いなど問題にしないくらい強く、宝物を首尾よく手に入れた魔法使いを捕まえて拷問し宝物を巻き上げようとしています。
 魔法使いたちは彼らに見つからないようにアルメニアに侵入して悪魔を召還して宝物を発見させます。しかし、その宝物を最終的に手に入れるには宝物のあるヘクスまで行かねばならず、権力者たちの注意を引いてしまうのです。
 これに対して魔法使いは悪魔の力を借りて地震を起こしたり嵐を呼んだり魅惑的な女性で魅了したりして権力者の妨害と戦うことができます。
 そうして宝物を集め、最後には無事に盤外に脱出するとゲームは終了になります。脱出に成功した魔法使いでもっとも宝物の価値が高いものがゲームに勝利します。
 画像の右側のマトリクスが宝物探索マトリクスになっています。
 宝物の数は限られており、また召還できる悪魔も限られていて使い捨てなのでゲームは確実に収束するようになっています。