フラグシップ 解き放たれたプロメテウス/コヨーテ立ち上がる
Flagship Prometheus Unchained / Coyote Stands / GMT Games
ショートコメント
●ノンコレクタブルのトレカライクの個性豊かな宇宙艦隊の激闘ゲームをあのヴェルセンがデザインした
Non-collectable cardgame which describes space fleet battles among various forces by Dan Verssen.
published designed players time
2002 Dan Verssen 2 1+ hours
ノンコレクタブルのトレカライクカードゲーム
 フラグシップは、GMTが2002年に発売したノンコレクタブルのカードゲームです。予告では「ノンコレクタブル」であることが強調され、トレカに際限なく資金を要求されるのに批判的だった層をターゲットにしたマーケティングをしていました。
 ゲームデザイナーは、「モダンネイバルバトル」シリーズや、「ホーネットリーダー」シリーズ、「ライズオブルフトヴァフェ」シリーズをデザインしたダン・ヴェルセンです。
 狙いは悪くないように思えましたし、GMTの広告もかなり力が入っていました。そして、後述しますがゲーム内容も悪くはありません。
 しかし、残念ながら商業的にはあまり成功しなかったようです。「解き放たれたプロメテウス」と、「コヨーテ立ち上がる」の2作、4艦隊が最初に発売された後、もう2作が予告されていました。しかし、この2作はキャンセルになってしまいました。
 ゲーム自体もあまり話題にならず、実際にプレイしている姿もあまり見掛けません。

ゲームシステム
 ヴェルセンのゲームに共通して言えることですが、比較的シンプルなゲームシステムに種々のガジェットを乗せています。シリーズ化することでカバーする対象の多様性を出し、その違いを出すのに必要な程度の細かさでシステムを設計しています。
 この「フラグシップ」もそうした作りで、トレカライクのゲームシステムになっています。
関連ゲーム
●マグブラスト
●スターフォーステラ
●サイレントデス
●スターウォリアー
●レネゲードレギオン:インターセプター
ファイナル・コメント
 わたし自身もそれほどこのゲームをプレイしていないのですが、内容的には悪くないと思います。
 ゲームシステムの難易度は適当なところで、トレカ経験者ならその場で説明してプレイできるでしょう。
 4つの艦隊の個性付けは明確になっており、勝つためにはその個性を理解して的確に運用していくことが必要です。
 プレイして1時間くらいで決着が付き、4勢力ありますから対戦のバリエーションもあります。
 ただ残念ながら商業的には成功せず、さらなる4勢力が出ずに終わってしまいました。バリエーションがもっとあった方が良いですから、これはとても残念なことです。
 その一方で、なぜ商業的に成功しなかったかを考えると、トレカライクのゲームの面白みとしてデック構築とコンボの考案という要素があり、その部分がこのゲームには結局のところ決定的に欠けているのでしょう。
 ノンコレクタブルのトレカが、需要がありそうでいながら、なかなか成功しない理由はそこにあるかも知れません。
 ゲーム内容的には、ブックキーピングに比重がありすぎる「ホーネットリーダー」シリーズや、キャンペーン志向で個々の戦闘はあっさりしている「ライズオブルフトヴァフェ」シリーズよりも面白いと思います。
 また、似たようなマーケティングの「スカラベロード」と比べても、とっつきが良く遊べると言う気がします。ただし、「スカラベロード」にはデック構築やコンボの面白さを取り入れようという工夫があるのに対して、「フラグシップ」はそこが欠落しているのです。
 結果からのセカンドゲスですが、トレカとの比較ではなく、ヴェルセンのSFもの新作ということで押した方が良かったのかも知れません。ゲームの商業的な成功は、必ずしも内容と一致しないという一例です。
 プレイヤーは、セットアップ時に自分の艦隊と艦隊司令官を指定されたポイントの範囲で選択します。
 それ以外の乗組員のカードやアクションカードでプレイングデックは構築され、こちらは艦隊ごとの規定のデックを常に使いデック構築の要素はありません。

 実際のプレイでは、マジックのアンタップに当るアンタスク、自軍の旗艦や司令官などから発生するコマンドポイントの取得、そのコマンドポイントを使ってのアクション、捨て札(任意の枚数捨てられる)、手札補充(7枚になるまで補充する、山札が尽きた場合はリシャッフル)して手番が相手に移ります。
 勝利条件は相手の旗艦を撃破することで、非常に明快です。

 艦隊は前列と後列に分けられ、相手の前列と自軍前列の間が距離1となり、直接攻撃やボーディング(接舷)攻撃ができます。どちらかが後列だと距離2となり、この距離ではミサイルなどの誘導兵器攻撃ができます。後列同士では原則として攻撃ができません。

艦隊ごとの個性と設定
 「解き放たれたプロメテウス」では、拡大する人類文明の権威的支配者であるハイゼンベルグ王朝と、これに対して辺境の農業惑星で異星人の先進文明を発見してその遺産を武器に弾圧に立ち上がるフリーマンとその追随者が戦います。
 ハイゼンベルグ王朝の艦船は無骨な鉄甲艦隊でノヴァミサイルという誘導ミサイルを主力とし、軍律の厳しさによる指揮統制が売りです。
 フリーマンとその追随者の利用する先進文明の遺産の艦船は、個々の艦の能力が極めて高く、またバランスも取れていることが特徴です。ただし、コストも高いため艦数は少なくなり少数精鋭となります。
 「コヨーテ立ち上がる」では、辺境のジャングル惑星に適合するために半獣人形態に転換したコヨーテ文明が主役となります。この辺境に、さらに外部から侵略してきたのが昆虫型エイリアンのキルキン群体です。「宇宙の戦士」のバグや、「ウォーハンマー40k」のティラニッドを思わせる集団意思を持つ大小の生体兵器の集合群体です。
 コヨーテ陣営は、母艦とその艦載機隊という構成です。高速で機動性に富む艦載機を主力とした独自の戦術を持っています。キルキン陣営は、生体兵器の群体であることを特徴とするホメオスタティックな修復能力と、ボーディング戦闘を圧倒的に得意としています。