マギノール
Maginor / Fantasy Flight Games
ショートコメント
●次の大魔法使いを選ぶ魔法評議会の選挙戦ゲーム
A kind of election game in which every wizard is trying to get the seat of Great Wizard in the wizard council.
published designed players time
2001 Reiner Knizia 3-4 60+ minutes
本質は選挙ゲーム
 このゲームはクニッツアの「ヴェガス」のリメイクなのだそうですが、元作品の方を知らないのでどこが違っているのかは良くわかりません。魔法の要素のほかにもいくつか重要な変更点があるようで、別のゲームとして議論しても良いくらいの差異があるらしいということです。
 このゲームの本質は選挙戦ゲームです。
 ショートコメントにも書いたように次の大魔法使いを選ぶための選挙が行われており、取りまとめの魔法使いが各地の魔法ギルドを順に回って票を集計していきます。プレイヤーたちは、こうした各地のギルドに選挙運動に回って、各ギルドの票を堅めて行きます。
 このとき重要なのが、この選挙のシステムがアメリカの大統領選挙と同じギルド単位の総取り方式だということです。
 ですから、いくら運動しても各ギルドごとの集計でそのギルドの1位にならないと票が得られません。
 大票田を争って破れると、他に労力が回らずに全局として大敗する危険性があります。逆に小票田でも小さな労力で1位になれればそれなりの成果で、これを積み上げる戦略もあります。
ファイナル・コメント
 選挙ゲームのエッセンスをクニッツア流に料理した小品で面白いと思います。
 ただし、選挙の醍醐味を味わうには3人以下は物足りなく、4人専用ゲームでしょう。逆になぜ5人でもプレイできるようにしなかったのかは疑問です。票田数が12個しかないので、5人以上だと票がばらけすぎて大票田が強くなりすぎるのかも知れません。

 システムの細部のところを細かく説明しませんでしたが、これは細部を説明すると返って誤解を招く気がしたからです。このゲームの票田上での争いを解決するには、魔法じゃんけんをやるのですが、ゲーム会のインストではこの部分を強調して「じゃんけんのゲーム」というような説明をされることがあるという話しを聴きました。
 上述したようにこのゲームの本質は選挙戦であって、大局観を見定めた上で自分が勝つために最善の票田へ活動していくゲームです。このときに直接攻撃の魔法じゃんけんが許されていて効きそうに見えるのでそういう説明になるのかも知れませんが、あくまで手段の一つに過ぎません。

 個人的には良いゲームで、選挙ゲームのエッセンスが盛り込まれている‥と思うのですが、上述のような誤解もあるようです。全局を見て駆け引きをするところの醍醐味をきちんと理解してもらわないと、「じゃんけんで負けたから負けたのだ‥(^_^;」というような感想を持たれてしまうと残念です。
 その意味では魔法がなく、直接戦闘(こちらの場合は論戦というルールになります)の効果も薄く、そのため大局観が重要な「キャンペーントレイル」を先ずプレイしてもらうのが良いかも知れません。
関連ゲーム
●キャンペーントレイル
●キャンディデイト
●ディーマッヒャー
 ですから、このゲームの本質は、GDWの「キャンペーントレイル」や、AHの「キャンディデイト」のような大統領選挙ゲームの面白さと共通しているのです。
 特に「キャンペーントレイル」あたりをプレイすると、このアメリカの大統領選挙のシステムがもたらす独特の駆け引きの醍醐味が、非常にゲームに向いたものだと言うことがわかります。この「マギノール」は、クニッツアが大統領選挙の醍醐味のエッセンスを抽出して、自分流にアレンジした小品だと言えます。

クニッツアの工夫、魔法のエッセンス

 とは言えそこはクニッツアですから、「キャンペーントレイル」とのゲーム的な重要な違いがたくさんあります。先ず第一に票田はプレイ中にもどんどん順番に決着が着いていきます。このため、確定票が順次見えてくるのです。
 これによって「だれそれが勝っているから、直接競合している次のギルドは絶対に渡せない」というような展開が見えてきます。次に、次点になると、票はもらえないのですが特殊な効果を持つ魔法の行使権が与えられます。これを使うことで後続の票田で展開を一気に有利にできるのです。ですから、序盤で二位を取って魔法を確保するという戦術もありえるのです。

 さらに、票田上での選挙活動効果を直接対決で奪うことができるルールがあって、これが良くも悪くもゲームを過激にしています。魔法と、この対決ルールがあるために、「キャンペーントレイル」あたりと比べると票田ごとの勝敗が動く要素が大きくなっており、票田の数が12個しかないにも関わらず複雑な局面が生じるようになっています。