スカラベロード
Scarab Lords / Fantasy Flight Games
ショートコメント
●ダークファラオ亡き後、ヘクメット川流域の支配を争う戦いを再現するトレカライクの独立カードゲーム。
After the death of dark pharaoh, 2 houses are fighting to control the land of Hkumet. Stand alone cardgame contains combo.
published designed players time
2002 Reiner Knizia 2 30+ minutes
クニッツアのトレカへの挑戦?

 「スカラベロード」は、2002年にFFGから発売されたクニッツアの二人対戦カードゲームです。
 独立したカードゲームで、トレーディングカードゲームではないのですが、内容を見るとトレーディングカードゲームの影響が色濃く出ています。言ってみれば、このゲームは鬼才クニッツアが「トレーディングカードゲームの魅力」を自分なりに消化して作ったトレーディングカードゲームではないカードゲームの習作なのです。
 その後、クニッツアはよりトレカ色を強めたブルームーンシリーズを今年(2004)になって発売しています。さらに、この「スカラベロード」にも、同じゲームシステムで別のハウス2つが対戦する互換性のある続編「ミノタウロスロード」が予告されています。

とっつきにくいゲームシステム

 このゲームを初めてプレイしたときには、とっつきにくいシステムだと思いました。手順は4つのフェイズに分かれているのですが、その内の3つはフェイズ0、フェイズ1、フェイズ2という数字でだけ区分されており、モチーフや機能を連想させないので非常にわかりにくいのです。
 最後のフェイズは争っている各流域の主権を判定する主権フェイズです。
ファイナル・コメント
 上述のように種々のカードの機能を見ると「マジック」の影響を色濃く感じます。
 ただ、クニッツア独特の処理も見受けられ、たとえば手番ごとのドローが保証されていません。経済アイコンの主権を得ることでドローができる他は、特殊効果を使うか手番全体をパスして手札をリフレッシュしなければなりません。つまり、ドローの確保もマネージメントの必要があるのです。
 鬼才クニッツアが作っただけあって、プレイしなれてくると色々なジレンマがゲーム中に仕掛けられていて面白くプレイできます。
 けれども、そこに至るまでが長く掛かります。トレカ的な複雑目のルールと、カードごとの固有テキストの問題は置くとしても、モチーフや機能がわかりにくい数字だけのフェイジングは余りに機能的で頭に入りにくいでしょう。また、ドローが保証されていないことも、多くのカードゲーム、トレカゲームには見られない特徴で最初は面食らうかと思います。
 もう少しとっつきやすく仕上げても良かったのではないかなと言う気がします。

 また、上級ルールでは1プレイ終わるごとに自身のデックから不要のカードを5枚まで捨てて白のデックからカードを補充してチューニングすることができます。ここでトレーディングカードゲームの最大の醍醐味、デック構築の面白さを限定的にではありますが取り入れているのです。
 白のデックには「マジック」で言うところの「アルマゲドン」や「ラスオブゴッド」に当るような強烈なカードが入っておりコンボのネタが含まれています。ただ、なかなかそこまでは遊びこめないかも知れません。
 トレカの醍醐味を知っているけれども、「もうそこまでは時間も投資もできない」という人に、もう一度あの面白さの片鱗を味わわせてくれるという位置付けでしょうか。
関連ゲーム
●マジックザギャザリング
●ミノタウロスロード
●ブルームーン
●フラグシップ
 左がプレイの画像です。両プレイヤーの間に置かれるゲームボードは、右半分と左半分とがそれぞれヘクメト川の上流域と下流域を現しています。
 さらに、それぞれの流域について、軍事、宗教、経済の3つのアイコンが描かれており、その流域の各分野を示しています。中央は両者の信仰する神カードを配置する場所になります。
 プレイでは、各流域の各アイコンのところに、カードの制約に従ってカードを配置していきます。このときに、カードには使用できるフェイズ番号が振られており、そのフェイズにしか使えません。さらに、フェイズ1、フェイズ2では、それぞれ1枚のカードしかプレイできません。フェイズ0では例外的に何枚でもプレイできることになっています。
 つまり、フェイズ0のカードは効果が速く威力が弱いカードになっています。フェイズ1とフェイズ2のカードはより強力ですが、1手番にそれぞれ1枚ずつしかプレイできないので計画的にプレイする必要があります。
 主権フェイズでは各流域の各アイコンごとに彼我の配置しているカードの戦力を比較し、相手を上回っているとそこの主権を獲得できます。そして、そのアイコンの効果を使うことができます。軍事アイコンの主権を得ると、相手の山札を1枚捨てさせることができ、宗教アイコンだと相手のインプレイのカードを呪って無効化することができます。経済アイコンだと山札から1枚カードを引くことができるという具合です。
 上流、下流のそれぞれで2アイコン以上ずつを支配し、両流域で同時に優勢になった状態を作ると勝利となります。別法として相手の山札が切れることでも勝利できます。
 カードの例を説明してゲームの雰囲気を伝えることにしましょう。
 プレイヤーはそれぞれ赤のデックと、青のデックを使用します。これ以外に白のカードがあるのですが、これは上級ルールでしか使用しません。
 ゲームの主力となるのはミニオンと呼ばれる手先のカードです。これは両ハウスに共通のものが多く、軍事アイコンにしか配置できない兵士、宗教アイコンにしか配置できない司祭、経済アイコンにしか配置できない商人などです。数値が大きいものは数値だけ、数値が小さいものにはトリッキーな特殊能力があります。この特殊能力のあたりがトレカライクなのです。
 さらに、各ハウスごとの固有のカードもあります。代表的なものは、ゴッドカードとリーダーカードです。ゴッドカードはアイコンではなくボード中央に配置され、「マジック」でいうところのエンチャントメントのような働きをします。つまり、継続的に場に影響を及ぼすのです。
 リーダーカードはミニオンカードのように各アイコンに配置しますが、ミニオンは同じところにいくつでも置けるのにリーダーは1アイコンに1枚だけという制約があります。これらのカードはハウスごとに独特でハウスの個性を形成します。
 ビルディングカードもミニオンカードと同じように使いますが、より強力です。その代わりに建設に時間が掛かるため、「マジック」でいうところのサモニングシックネスのようなタイムラグがあります。
 最後に1回使い捨ての特殊効果を発生するフェイトカードがあります。「マジック」で言うインスタントスペルに当ります。