ナイトメアハウス
Nightmare House / Ares 15 / SPI
ショートコメント
●アレス末期の異色作、本格的なゲームシステムを持つフルサイズのゴシックホラーボードゲーム
●魔の館に進入し物理界と霊界を股に掛けてエクソシズムを試みる冒険者たち
Unbelievably unique Gothic-Horror Boardgame which has full gamesystem and full compornent.
Adventurers should enter the haunted house and try to exorcise it between physical plane and astral plane.
published designed players time
2002 David Marshall 1-5 3+ hours
 プレイヤーは、霊界と物理界を繋いでいる場所から霊界に侵入することができ、自らのサイキックパワーの範囲で霊界の中で活動して部屋をエクソサイズしていくことができます。
 アストラルマップは7つの円と12本の軸から成っています。この軸をいくつ魔物がコントロール化しているかが魔物のパワーになっているので、プレイヤー側は部屋を一つずつ、さらに軸を一つずつエクソサイズして魔物のパワーを削いでいくことになります。
 魔物は同心円の中心の3つのいずれかに位置しているのですが、これは魔物プレイヤーが最初に選びます。中にいるほど魔物本体はエクソサイズされにくくなりますが、逆に魔物が物理界に影響を及ぼすことも難しくなります。
 魔物側は霊界のエネルギーを使ってホーントと呼ばれる様々な手管、手先を使ってプレイヤーを攻撃します。プレイヤーが霊界に侵入してきて能力以上のことを試みて失敗すると、霊界にトラップしてしまったり、その空になった物理的なボディに憑依して利用したりすることもできます。
 こうしてフィジカルマップとアストラルマップを股に掛けて両者は凌ぎを削っていきます。
 時刻が明け方に迫り、闇が一番濃くなる頃に魔物のパワーは強まります。そのときまでに魔物の本体に肉薄していれば、きっと最後の決戦を迎えることになるでしょう。
 果たしてプレイヤーたちは魔物を倒して新しい朝を迎えることができるでしょうか?
SPIが本気で作ったホラーボードゲーム!

 「ナイトメアハウス」は、アレスの15号の付録ゲームです。
 アレスは17号で打ち止めですから末期と呼んで良いでしょう。この時期のアレスは付録ゲームのサイズがフルマップ、200ユニットのフルサイズに拡張されており、またS&T誌ではできないような実験的な作品が多かったのでゲームデザイン論的にはすごく面白かった時期です。
 いわゆるイロモノめいたものも多いのですが、流通ゲームとして優れたシステムを持つ「スタートレーダー」や、アレス中最大規模のパラグラフゲームである「ダモクレスミッション」のような佳作もあり、一つ一つ個別に吟味してもらえば今もなお輝くものがあります。
 この「ナイトメアハウス」は、ゴシックホラーボードゲームと銘打たれ、この題材のゲームとしては例を見ないほど複雑なゲームシステムと豊富なガジェットを持つフルサイズゲームとして作りこまれています。
ファイナル・コメント
 マップとゲームの仕組を中心に説明しましたが、このゲームの凄みの一つにガジェットの豊富さがあります。
 ハウスの由来についても一講釈あり、プレイヤーが担当する冒険者もハウスと因縁を持つ12名の中から選ぶことができます。キャラによって物理的な戦闘に強かったり、霊能力を持っていたり、館の知識を事前に持っていたりします。
 館の中の発見チットや、魔物が操るホーントも、一つ一つに単なるパラメータだけでなく、個々の能書きが用意されています。ゲームの全体の作りはどこまでもボードゲームですが、この辺の周辺情報の豊富さはRPGにも通じます。
 冒険者側は1〜4人までプレイできるようになっています。
 面白いのはプレイヤーの末路として魔物を倒して勝者になる他に、魔物に憑依されて魔物の手先となって魔物と勝利条件を共にするというのがあることです。このほかに本当に死んでしまうというのもあります。
 妙な話しですが、最終決戦に至るまで生き残っている冒険者は、最後の決戦がどちらに転んでも勝てるということが起こったりします。勝てばエクソシストとして勝利し、負けても魔物の手先となって魔物と共に勝利できるのです。これはゲーム的にはちょっと妙なところで、勝敗にこだわってプレイするとおかしなシチュエーションという気がします。
 ゲームシステムの斬新さと、ガジェットの豊富さでとっつきやすいとは言いがたく、その一方で題材の都合上、リプレイアビリティが高いとは言いにくいのが難点です。けれども、ホラーボードゲームも本気で作るとここまでになるのか‥という意味では一見の価値があると思います。
関連ゲーム
●死霊の夜明け
●デーモン
●ブラックモーンメイナー
●ゾンビー
 題材が題材ですので、通常のヘクスウォーゲームから見るとかなり異質なゲームシステムになっています。しかし、その一方で単純なスゴロクにガジェットを付け加えただけのものではなく、この題材の特徴をカバーした本格的なゲームシステムを持っています。
 「ナイトメアハウス」で最も特徴的なのはそのマップです。
 フルマップを半分ずつに分けて、その半分は魔物に支配されたホーンテッドハウスの物理的なマップを表しています。
 左がそのマップです。ハウスは3階建てになっていて、そのほかに地下室、屋根裏部屋、塔などが存在しています。見て分かる通り、本当に建物の平面図になっていて、部屋と部屋の接続がわかるようになっています。
 プレイヤーの物理的な実体や、魔物が操るホーントの内、物理的な実体を持ち物理的な害を成すタイプのものはこのマップ上を移動していきます。各部屋には発見チットと呼ばれるものが配置されており、これを発見していくことでハウスの知識や、ハウスと戦うためための武器などが手に入っていきます。
 ゲームのプレイ時刻は夕方6時から翌朝5時までの12時間に設定されており、基本的に夜です。このため、屋敷内の照明のルールがあり、ヒューズボックスの位置も重要です。もちろん停電に備えてカンテラやキャンドルと言ったアイテムも用意されています。
 次の下の画像が、残り半分のマップ、アストラルマップです。
 これはもう一つの次元、霊界を表しています。
 建物の各部屋に対応するマーカーを、この同心円状のマップの各ポイントに配置することで、実際の魔物の霊力による支配がどのように各部屋に及んでいるかが示されます。
#15 ナイトメアハウス