ニューク
NUKE / New Earth Games
ショートコメント
●地球上最後のゲーム‥の副題を持つ最終核戦争政略マルチ
●核兵器と言う取り返しの付かない最終兵器の導入で収束性が高まったリスク系ゲームの秀作
Armageddon multi-players game which has subtitle "The last game on
Earth".
Another fine "Risk" type game which can come to an end by introducing unrecoverable final weapon "Nuclear Missile".
published |
designed |
players |
time |
1984 |
Christopher D. Cordry, Stephen T. Weeks |
3-4 |
2+ hours |
ニュークのゲームシステム
「ニューク」は、戦略核兵器による最終戦争を題材としたマルチプレイヤーズゲームです。副題は、「地球上最後のゲーム」です。最終戦争の後には誰も生き残らないというシニカルなニュアンスのタイトルです。
ニュークのゲームシステムは、「リスク」の系列に連なるシンプルなものです。
ゲームボードは、48のエリアに分かれており、そのそれぞれに対応するカードがあります。このエリアを示すカードをセットアップ時に各プレイヤーに6枚ずつ配ります。プレイヤーはこのエリアに1個ずつ自軍部隊を配置します。
ゲームはプレイヤーターンを順に回すことで進行します。自分のターンにすることは、大きく二つに分かれています。攻撃準備と、攻撃です。
ネガティブ・コメント
「ニューク」はリスク系のゲームの一つですが、核ミサイルという最終兵器の存在によって独特の存在となっています。取り返しが付かない破壊的な効果によりエリアがどんどん減るため、ゲームは終局に向かって最後は雪崩を打ちます。
このためマルチプレイヤーズゲームが陥りがちなステイルメイトは中盤で一時的に発現し、かつ冷戦さながらに重苦しくあるものの、必ずと言ってよいほど天秤は崩れて決着に向かうことになります。
「ニューク」の長所も短所もこの点に尽きると言って良いでしょう。
冷戦の真髄を味わうのが苦痛と思う人にとっては、極めて重苦しい辛いゲームです。その一方で決着が付いてくれるマルチを欲しいと思う方には非常にお薦めです。
いずれにせよ核戦争を扱ったゲームの中で、シンプルで本質を衝いたデザインとして秀逸であることは確かです。
教育的な意味で広くプレイして欲しいゲームという気がします。
残念なことはメジャーメーカーの出版ではなく、現在はもちろん発売当時でも入手容易ではなかったことです。
関連ゲーム
●サプレマシー
●リスク
●アルティメイタム
●ニュークリアウォー
●オメガウォー
ニュークのメッセージ
「ニューク」のメッセージは明快です。
核兵器の本質をついたシンプルなルールは、実際のプレイを通じてなにより雄弁に物語ってくれます。
核戦争に勝者はなく、誰も生き残ることはできないのです。
このゲームのメッセージと、そのシニカルさを痛感させてくれるのはターントラックです。ターントラックの最初のターンには、「1945-60」と表示されています。1ターンが示す期間は示す期間は、進行に連れて短くなっていきます。5ターン目は「1989-1993」ですが、6ターン目には「1994 JAN-JUL」となり、その次は「8/1」、さらに進むと「PM2:15」という具合に15分刻みになっていきます。地球滅亡へのファイナルカウントダウンなのです。
攻撃準備では新たなエリアカードを3枚引き、続いて増援ユニットを3つもらいます。その後、同じエリアの特定の条件の組み合わせである「トライアッド」を編成し、編成したトライアッドの数だけ核ミサイルを受け取ります。
そして攻撃です。攻撃は部隊を使って部隊を攻撃する通常攻撃と、核ミサイルでエリアをまるごと吹き飛ばす核攻撃に分かれています。
核ミサイルこそが「ニューク」の真髄ですので少し詳しく説明しましょう。トライアッドは、同じ大陸の3つのエリアの組み合わせで作ります。このときエリアには、その特徴によりP(人口密集地域)、T(技術集積地)、R(資源埋蔵地)の分類がされています。トライアッドにするには、3種類1枚ずつか、1種類3枚の組み合わせにしなければなりません。
このためプレイヤーは特定の大陸を地盤にして、その制圧を序盤で目指していくことになります。結果としてプレイヤーは、北米連合とか、アジア同盟とかいったような感じに成長していくことになります。
トライアッドには面白い制限があって、プレイヤーは一番トライアッド数の少ないプレイヤーより1個だけしか余分にトライアッドをもてません。つまり、核兵器の制限条約があるのです。このため全員が核ミサイルを生産できるようにならない限り、2個目のトライアッドを作って核ミサイル生産能力を倍増することはできません。3個目も同様です。ただし、全員が3個もつと、条約は有名無実化し制限解除となります。
こうして得られる核ミサイルですが極めて強力です。
攻撃に使うと、相手のエリアがまるごと吹き飛びます。そこにどれだけ通常部隊がいてもエリアごと蒸発します。そしてそのエリアは核汚染地区となり一切進入不可能になります。
防御では、核ミサイルを配置したエリアには通常部隊は攻撃ができなくなるという決定的なデフェンスとなります。もっとも発射してしまうと効果がなくなるわけですが。
そして核ミサイルで核ミサイルのあるエリアを攻撃すると、両者は互いにキャンセルしあいプレイから取り除かれます。
このルールは、核兵器の取り返しの付かない攻撃能力と、抑止力としての防御力を良く表しています。シンプルにして要点を押さえたルールと言って良いでしょう。
核兵器のキャンセル戦があるため、核ミサイル数で優位に立つことは重要です。そこで生きてくるのが先ほどの制限条約と、マルチであることによる強者牽制です。
ゲーム序盤は通常戦による大陸確保による拠点作り、中盤は牽制し合いながらの核軍備競争、そして誰かが核戦争の引鉄を引くと終盤に突入します。
互いに相手のトライアッドの要となるエリアを狙ってミサイルを撃ちあい、地球は荒廃を続けて行くことになります。優位を持つものは優位を守るために敵の残存核生産力を狙い、劣位な者は報復と挽回のために同じようにミサイルを撃ち続けます。
かくてゲームは地球最後のゲームと化していくのです。