ラグナロク
Ragnarok / SPI - Ares
ショートコメント
●北欧神話の独特のクライマックス、神々の黄昏をそのままゲームにした小品
●巨人族を連れて攻め入るロキの前に、神々はアズガルドを守り抜くことはできないのか?

Exotic episode of German-Religion, Ragnalok is presented as a playable board game.
Could Gods defend their Azguld against evil-god Loki followed by clans of Giants.
published designed players time
1981 Darryl Esakof 2 1-2 hours
 「ラグナロク」は、その北欧神話の中でも著名な独特のエピソード、神々の黄昏をシミュレーションしたハーフマップの雑誌付録ゲームです。
 北欧神話では神々の存在は絶対的なものではなく、初めにあった深淵、ギンヌンガガップはフロストジャイアントやフレームジャイアントの住む宇宙でした。神々は後から生まれた巨人の血を引く新たな一族で、巨人たちを倒して深淵に天体を作り現在の世界をあらしめたのです。
 神々の祖であり主神であるオーディンはアズガルドに建てたヴァルハラ宮殿に住まい、戦いがあればヴァルキューレと呼ばれる女戦士とベルゼルク狂戦士たちを率いて戦う存在でした。オーディンに次ぐ副神は軍神トールで、ブーメランのように投げても手元に戻ってくる鉄槌ミヨルニルの使い手です。また、美男神フレイヤは、神々の全軍が乗り込めるスキズブラズニルという軍船を擁しているのですが、不思議なことに普段はこの船は折り畳まれて懐に収められているというのです。
 こうした神々の中で異彩を放つ存在であるのが邪神ロキです。いたずらもののねじれた心を持つ神として描かれる彼は、度重なる悪行からついに神の土地を追われることとなったのでした。しかし、憎まれると同時に寵愛も受けていたロキは、命までは奪われることはなく、時間の果てにはついに神々の宿敵である巨人族と手を結び、巨人とともに神々の領土アズガルドを攻め滅ぼすためにやってくることになります。それが神々の黄昏、ラグナロクです。
 ロキとともに攻め上ってくるのは、ロキと巨人の間に生まれた異形の怪物、長子の怪力狼フェンリル、大蛇ヨルムガンド、そしてフロストジャイアントたちと、フレームジャイアントたちです。
名高い北欧神話独特のエピソード、神々の黄昏

 北欧神話は、ギリシャ神話やローマ神話ほどではありませんが、その独特の雰囲気と不思議な世界観で、異彩を放っており存在感があります。
 北欧神話の主神オーディンの名前は、それが北欧の主神であることを知っているかどうかは別として耳にしたことのない人はいないのではないでしょうか。また神々の住む地アズガルド、オーディンのヴァルハラ宮殿、人間の住む地ミッドガルド、巨人の国ヨツンヘイムと言った地名も、どこかしら聞き覚えがあるに違いありません。さらにトールのハンマー、ヘイムダールのギャルラホン、ヴァルキューレなども耳にされたことがあるのでは?
 北欧神話の登場役者たちは、どれも孤高の存在感と、極辺の地で繰り広げられる黄昏色に包まれていて魅力的です。その魅力ゆえに様々なファンタジー小説やゲーム、さらにはアニメなどでも引用されることから正体を知らずとも、どこかで聞き覚えのある名が多いものです。
神々の黄昏をボードゲームに再現した力作小品

 「ラグナロク」は、神々の黄昏のエピソードと、その登場役者たちのガジェットをたっぷりと取り込んだボードゲームです。
 ボードの一端には巨人たちが渡ってくるレインボーブリッジがあり、この橋はあまりに多くの巨人がいちどきに渡ろうとすると崩れてしまいます。また、フロストジャイアントとフレームジャイアントは一緒に渡ることができません。そして渡った入り口にはハイムダールが待ち構えていて、彼の鳴らすギャルラホンによって神々の部隊は動き出すことになります。
 その神々はボードの他端にあるアズガルドの門から出陣してきます。ロキ率いる巨人たちが此処を突破すると神々は敗れ去ることになります。神々の参戦はランダムで三々五々に登場してくることから、この登場次第で勝負は大きく左右されることになります。
 オーディンの金縛りや、トールの鉄槌、サーペントの丸呑み、宿敵同士の修整などガジェットも盛り込まれています。
 勝利条件は、巨人族側はアズガルドへの突破、神々側はこれを阻止して巨人を全滅することとなっており、正に終局の戦いと言うべき総力戦が繰り広げられ、いずれかが力尽きるまで戦われることになります。
 神々の黄昏のエピソードを、ボードゲームに良く再現した小品ながらも力の籠った一作と言って良いでしょう。
ネガティブ・コメント

 神々の黄昏というエピソードの再現という意味では頑張った力作だと思います。ただし、ゲーム的には単調でリプレイアビリティには欠けるかも知れません。巨人は正面から最短距離での突破を目指し、神々はその巨人たちを全滅させるまで抵抗し続けるという直線的な構図で、作戦の余地が薄いからです。
 ただし、雑誌の付録ゲームであり、珍しいエピソードを良く再現して読者に提示し、次号が来るまでの間、遊んでもらえれば良いという狙いだとすれば、非難するには当たらないかも知れません。

 もう一つ残念なのはカバーアートです。おそらく中央の三人は、オーディン、トール、フレイヤだと思うのですが、どうも北欧神話の主役たちにしては魅力的とは言いがたい描かれ方のように思います。
 もっと力強く、威風堂々としているイメージが個人的にはあります。そうでないと数に勝る巨人たちを単身、次々と打ち倒して‥というのは無理なような気がするのですが。
関連ゲーム

●ドラゴン・パス
●ノーマッド・ゴッズ
●神々の戦い
ラグナロク
虹の橋を渡って進入するロキ率いるフロストジャイアントの軍団
ヴィグリド平原で激突する巨人軍と神々軍