タイムラグ
Time Lag / Gameshop

一言で言えば‥‥

光速航行とワープはウラシマ効果によるタイムラグという要素を戦争に持ち込んだ
プレイアブルな小品ながらSFならではのアイデアがゲームの中核に据えられた佳作

Einstein effect introduces a new dimension on inter-stellar war.
strongly recommended as small game which have sence of wonder (essence of sci-fi)


プレイ人数 2人
プレイ時間 2〜3時間
ルール難度 ウォーゲーム入門編
デザイナー マイク・ヴェラ
入手状況 海外中古ゲームショップを当たられたし

ウラシマ効果とゲームシステム
タイムラグの表紙
タイムラグは、その名の通りSF宇宙戦争におけるタイムラグの問題を中心に据えたコンパクトなSFゲームです。
光速に近い速度で移動すると時間軸が変化していき、結果として静止座標の時間軸から見ると時間が遅くなり、ついにはほとんど止まってしまいます。アインシュタインの相対性理論から来るので、英語ではアインシュタイン効果と呼ぶようです。日本では、こうした座標系で生活して帰ってくると寓話の浦島太郎と同じ立場になることから、ウラシマ効果として良く知られています。

タイムラグでは、このウラシマ効果によって発現するタイムラグをゲームシステムの中心に据えています。
恒星間戦争で、目標の恒星系まで光速に近い速度で航行すると、宇宙船にとっては短時間しか経過しません。しかし、周りでは数十年が経過するので、宇宙船は技術的に時代遅れになって行きます。このタイムラグがゲームの主眼なのです。
このため、ゲームでは1ヘクス準光速で航行すると5年、1回ワープを試みると5年の割合で宇宙船は時代遅れになっていきます。戦闘では戦力の差を出すと同時に、こうした時代遅れの年数の差も計算します。両者を合計して戦闘結果表に当てはめるのです。ですから、相手より20戦力大きくても、20年時代遅れだと互角になってしまいます。

このゲームでは宇宙船の購入は基本的に戦力です。ですから、大きな戦力の船を買うのは大変です。ところが、それがあっという間に時代遅れになってしまいます。そうすると小さな戦力の新造艦が守っているところに突っ込むと互角になってしまったりするのです。ここらへんの感覚はとても面白く、SFゲームならではのアイデアがゲームのコアで生きています。
タイムラグのユニット
また、母星系を基準に時間経過を計り、これにより技術が革新されていきます。最初は低速の小戦力の宇宙船しか作れませんが、技術が進んでいくと高速の大戦力の宇宙船を作れるようになります。また、ワープの精度も上昇していきます。この技術革新により大小さまざま、技術水準がいろいろな船が戦場に入り乱れることが、前述したウラシマ効果と合わせていろいろと面白いシチュエーションを生み出してくれます。

ここらへんのシステムのバランスは、とても良い加減に設定されていて、プレイアブルでありながら独特の悩みと面白さを生み出しています。



タイムラグのプレイ感と難点
タイムラグのプレイ
右の図はタイムラグの実際のプレイの様子です。
恒星はいくつかでグループを成しています。グループ内の赤線のワープは比較的容易です。
しかし、異なる星系間となると、ヴィーコンとなる恒星間でしか実施できず、極めて限られてしまいます。このため、ヴィーコンとなる恒星系は重要で、必争点となります。
また、恒星グループ内をジャンプしては、隣のグループとの最短距離のところを準光速移動で渡っていく戦術も存在します。ただし、これをやるとウラシマ効果が激しく、艦が急速に陳腐化してしまうのが悩みの種ですが‥‥。

恒星グループごとに支配を毎ターン決め、そこから収入を得て次の世代の宇宙船を作っていきます。ここらへんの感じは、GDWのダークネビュラに近いですが、宇宙船しかありませんので部隊バリエーションや戦術の幅は狭くなります。その代わりプレイアビリティは高いですし、こちらには上述した独特のタイムラグの悩みがあります。

シークエンスの都合で毎ターンの後手である黄色陣営(ユニットの名称が読めない文字で書かれているのでこちらがエイリアン側のようです)が長期化してくると有利です。しかし白陣営はセットアップで重要なヴィーコン星系を占めており、序盤ではかなり優位にゲームを進められます。ここらへんでバランスが取ってあるのでしょう。

このゲームは、プレイアブルで、独特のアイデアが生きており、小品ながらなかなかの傑作です。
強いて難点を挙げるとすれば、デザイナーがルールを書き慣れていないのか、ルール構成が今ひとつで書いていて欲しいことがどこにも見つからなかったりするのが難点です。プレイアブルなゲームですので、合議してルールを決めながら、必要なら最初からやり直しても良いでしょう。

もう一つの難点は、艦毎にタイムラグを記録しなければならないことで、この作業はちょいと煩雑です。ただし、そこらへんはユニット数の設定が上手にできていて、プレイしきれなくならない程度の隻数に収まっています。また、艦船が技術レベルとともにインフレ的に高くなっていくことも、上手く隻数を制限しています。最強艦が出てくるあたりで丁度ゲームプレイも佳境に入るようになっている気がします。

ここらへん、テストプレイをして上手に様々なパラメーターのバランスを取ってあるのかなという気がします。
良くできた作品です。

関連ゲーム / 類似ゲーム


ウラシマ効果を中心に据えたSF小説には傑作が多いのですが、SFゲームとしてこの問題を扱ったものはあまり見かけません。

コンパクトなサイズの星間戦争ゲームとしては、GDWの「ダークネビュラ」や、メタゲーミングの「ホーリーウォー」、「ワープウォー」などが思い浮かびます。