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天空の城ラピュタ ティディス城塞
ツクダ

一言で言えば‥‥

宮崎アニメの傑作「天空の城ラピュタ」に材を取った入門ゲーム3点セット

空の海賊ドーラ一家が主役(?)の警戒網突破,飛行客船襲撃,シータ奪還

こんなゲーマーにお薦めしたい

天空の城ラピュタのゲームと聞いては中身を問わず黙ってられない貴方に

ルールの改造も視野に入れて取り組んで良いというゲーマーに

プレイ人数 警戒網突破と飛行客船襲撃は2人,シータ奪還は1人
プレイ時間 45分−2時間
ルール難度 初級ウォーゲーム
デザイナー 福田 誠
入手状況 絶版,入手困難

天空の城ラピュタの世界

ティディス城塞のボックス
「天空の城ラピュタ」は,「風の谷のナウシカ」で成功を収めた宮崎アニメの第2作です。前作がメッセージ性が高かったのに対して,ラピュタは思いっきりエンターテイメントを目指して作られた冒険活劇です。

ドラゴンの代わりに巨大な飛行船が,王子様の代わりに見習い技師の少年が出てくるファンタジー‥‥というのが製作者のコメントでした。いわゆるスチームパンクに数えても良いかも知れません。

かつて先進文明の巨大な破壊力を背景に世界を制したという天空の城ラピュタ。いまも天空のどこかに浮かぶと言われています。このラピュタの鍵である飛翔石を持つ少女シータが物語りのヒロインです。彼女を追って空飛ぶ海賊ドーラ一家と,軍の秘密機関が錯綜します。

ゲームは,映画で扱う直前の場面から始まります。シータを誘拐した軍の秘密機関の暗号を解読したドーラ一家が,飛翔石を狙って警戒網を突破してくるところから始まるのです。これが最初のゲーム「ドーラの警戒網突破ゲーム」です。

続いて首尾良く警戒網を突破したドーラ一家は,シータの乗っている飛行客船を襲撃します。これが映画の冒頭のシーンです。これが第二のゲーム「ドーラの飛行客船襲撃ゲーム」です。

この後,痛快な追跡劇の末に,残念ながらヒロインのシータは,特務機関の手に落ちてしまいます。シータと出会った主人公の少年パズーは,海賊ドーラ一家と行動をともにしてシータを難攻不落のティディス城塞から奪回することを試みます。これが最後のゲーム「パズーのシータ奪還ゲーム」です。

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ドーラの警戒網突破ゲーム
ドーラの警戒網突破
ドーラの警戒網突破ゲームは,いわゆるダブルブラインド方式のゲームです。つまり,両者の間に衝立を立てて,相手のコマの動きを見えないようにしてプレイする方式です。

画像の下側がドーラプレイヤーの使う側のマップです。愛機タイガーモスと,その所在を混乱させるためのダミーマーカーが盤の下端から侵入したところです。これが上端まで離脱すると勝利します。

上側(奥側)が軍プレイヤーのマップで,本当は間に衝立があって見えません。5機の黄色い警戒艇が哨戒しているのがわかります。両方のマップの同じ位置にある白いコマは雲を表しています。

このマップ上をドーラ側は進んでいき,一方の軍は警戒艇を移動してその場所を告げて探索します。もし遭遇すると左側の戦術マップに移して,戦闘/突破を解決します。

ドーラの飛行客船襲撃ゲーム
ドーラの飛行客船襲撃
飛行客船襲撃ゲームは,飛行客船のマップを使ってプレイします。まず軍プレイヤーが,黒メガネの諜報員たちやシータを一般の客に混ぜて裏返して配置します。

ドーラ一家はフラップターというホバーリングのできる羽ばたき機械で客船の窓やデッキに乗りつけて侵入してきます。そして客船の中で両軍入り乱れてシータを奪い合うのです。

画像では左端のテラスでシータをめぐってドーラとムスカが争っています。右側の廊下では黒メガネたちと海賊たちが押すな押すなのすったもんだを繰り広げています。左端と上端の窓際に置いてあるのが海賊のフラップターです。海賊はこれに乗って離脱しなければなりません。

パズーのシータ奪還ゲーム
パズーのシータ奪還ゲーム
パズーのシータ奪還ゲームは,ゲームタイトルでもあるティディス城塞へとドーラ一家とパズーが乗りこみます。

画像の右下にいる薄赤のユニットがパズーと海賊たちです。その正面にいるカードのコマが軍の飛行戦艦ゴリアテです。その奥がティディス城塞です。

ティディス城塞の塔の一つにシータと,シータの飛翔石で呼び覚まされたラピュタの番人ロボットがいます。それを大勢の軍の兵士が取り巻いています。

このゲームだけは,ソリテアゲームになっています。ゴリアテの行動や,ロボットの行動は,左下にあるカードで毎ターン,ランダムに決められます。そうして状況が変化していく中を,海賊は城塞の周囲の砲塔をかいくぐって兵士たちの取り巻く塔からシータの奪還を目指します。

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ティディス城塞の難点

このゲームは人気の高い原作を題材としただけに,普通はシミュレーションボードゲームを手にしない人にも手にとってもらえる可能性がありました。だからこそ,初心者にもわかりやすく,またプレイして面白いものに仕上げて欲しかったところです。しかし,残念ながらそうはなっていません。

たとえば,「ドーラの警戒網突破ゲーム」です。アイデアは悪くないと思います。ダブルブラインドというと難しそうですが,要はレーダーサーチ(バトルシップ)ですので,初心者でもできるでしょう。しかし,問題が3つあります。

第1に,ゲームの初期設定で重要な要素を,非常に雑に決めてしまうところです。具体的には,雲の有無と,警戒艇の数のそれぞれをサイコロで決めてしまいます。雲の数は,ダイスを二個振って,その差分です。雲のあるマスでは索敵ができないので,雲があると海賊はかなり楽になります。また警戒艇に至ってはダイスを振って出た目の数だけ登場します。これが1機と6機では全然,違ってしまいます。かなり乱暴に過ぎるでしょう。

第2に,両者が遭遇したときに戦術マップに移して戦闘/突破を解決するのですが,これがあまり面白くありません。海賊側は突破するのが基本戦略で,そのためには一直線に全速で進むのがしばしば最良となり,結局,その間に警戒艇の射撃が何回できるかというだけの問題になってしまいがちです。

第3に,ルールの書き方がファジィで良くわかりません。製作者はちゃんとしたイメージを持っていたのかも知れませんが,記述が十分でなくて良くわかりません。ウォーゲームのようにルールのパターン化したものと違って,このくらいのシンプルな抽象性の高いゲームだと,細かい部分でどういうシステムでもありえるので判断に困ることがいくつか出て来ました。初心者向けゲームとしては不親切でしょう。

「パズーのシータ奪還ゲーム」はカードを併用したソリテアゲームとして,後年のウェストエンドの「バトルフォーエンドア」あたりを彷彿とさせるところもあり注目すべきところがあります。けれども,実際にプレイしたときに展開の妙味を作り出せていません。特に対戦相手として納得の行かない部分が大きすぎます。砲塔は順に壊れていくだけ,兵士はわらわら現れてくるけれどもあまり役に立たず,ゴリアテは明後日の方へ向かって行ったりします。

着想が悪くないだけに,もっと頑張って欲しかった気がします。題材が題材なだけに,この程度のところで妥協してしまったのは残念というほかありません。

関連ゲーム / 類似ゲーム

天空の城ラピュタのゲームは,もう一つツクダから出ていました。ずばり「天空の城ラピュタ」というゲームです。

宮崎アニメのゲームとしては,ツクダからは
「風の谷のナウシカ」も出ていました。版権取得に関しては,ツクダはスターウォーズのゲームやスタートレックのゲームも出していましたので,非常にアクティブだったと思います。これにシンプルで面白いゲームを作れるコンテンツメイカーがいれば素晴らしい成果が残せたのではないかと思うのですが‥‥。

ツクダは一定の成果を残したと思いますが,やりようによってはこのホビーの帰趨を変えられるような良い題材をものにしていただけに,もっと頑張って欲しかった気がします。特に,この「天空の城ラピュタ」という題材では,それを強く感じます。

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