BQSF_GAME

司政官
ツクダホビー

一言で言えば‥‥

眉村卓の司政官シリーズをモチーフにしたオリジナル設定の多人数ゲーム

原住民,植民者,事業団,これらの利害を調整する司政官の葛藤

こんなゲーマーにお薦めしたい

司政官シリーズのファンで,実際の状況の片鱗を感じてみたい方に

時間が掛かるのを苦にせず,必要ならゲーム改造も楽しいという方に

プレイ人数 4人でしかできない
プレイ時間 シナリオ4−8時間,キャンペーンは20時間以上
ルール難度 上級マネージメントゲーム
デザイナー 有坂 純
入手状況 絶版になって久しい,押入死蔵品捜索か?

司政官の設定

司政官のボックス
薔薇色の海を持つ惑星ロゼの開発をめぐり,原住民,植民者,開発事業団のそれぞれの思惑が錯綜する。これを調整する立場の司政官の活躍やいかに。

眉村卓の「司政官シリーズ」は,眉村氏の唱えたインサイダーSF論の集大成とも言えるSFシリーズで,氏のライフワークと言ってもいいと思います。とかくSFではアウトローを描くことが多いのですが,社会組織の内側に位置するものの立場からSF的な状況における葛藤を描き出すのがインサイダーSFの思想です。

司政官シリーズでは,原住民のいる星系に対して地球の開発事業団が参入し,さらに一般の植民者が植民していくという状況を想定しています。原住民と協調社会を築けるかどうか,地球の利権を志向する軍産業構造体である開発事業団の暴走を押さえられるかどうか,異邦の地へと植民した人々の壊れやすい夢を守れるかどうか,司政官は非常に難しい調整役を務めます。

このゲーム「司政官」は一連の小説のモチーフを借りていますが,オリジナルの星系ロゼを設定した独立編となっています。この地でプレイヤーは,原住民,植民者,開発事業団,司政官のいずれかの立場でそれぞれの目的を目指します。

原住民や植民者は,自らの経済活動を拡大して発展することを目指します。開発事業団は,ロゼで採取される有用な資源の採掘,輸出の拡大を目指します。司政官は,各勢力のバランスの取れた発展を目指します。

BQSF_GAME

司政官のシステム
司政官のマップ
「司政官」は,かなり難しいゲームです。シミュレーションゲーム的な複雑なシステムを持っていて,しかも題材が独特であるため既成のシミュレーションゲームと類似していない独創性の高いシステムが用いられています。

原住民と植民者は,基本的には人口を増加して勢力圏を拡大し,これにより産業を発展させ,産業により新たな人口を養う基盤を作っていきます。システムとして面白いのは未開拓の状態では各エリアが養える人口はごく小さいのですが,産業の存在でこれが拡大していくところです。

開発事業団は,このロゼで取れる有用な資源を採掘し,星系外へ持ち出すことを目指しています。面白いのは,そのための採掘施設や輸送経路を設置できるのですが,これらを動かすためにはマンパワーが必要で原住民や植民者を雇用しなければなりません。こうしたものの常としてストやサボタージュを受けることがあり,これに対して軍を投入することもできます。ただし,それをやってしまうと反動が凄いですが‥‥。

司政官の目的は,こうした利害がいずれ衝突してくる三者の調整です。司政官プレイヤーは,誰も勝利せず,また誰もがそこそこに発展したときにのみ初めて勝者となります。他のプレイヤーが明確な目標を持っており,それを達成すると,そこで勝利してしまえるのと対照的です。ここらへんの司政官の役割の設定は,原作のイメージを汲んでいて良く考えられていると思います。

BQSF_GAME

司政官の難点

「司政官」は,率直に言ってあまり評判の良いゲームとは言えません。欠点はいくつでも上がります。

まず,4人丁度でしかプレイできないこと。ルールが複雑で各自のできることが違うため全員がきちんと予習してこないとプレイできないこと。コマが非常に多くてコンポーネント的にプレイしづらいこと。ルールの練りが悪くて,ルールブックに明らかな矛盾などが見うけられること。実際にプレイすると機能が不自然なシステムがあること。プレイのバランスが破綻しているように思われること。などなど‥‥。

わたしがプレイしたときの具体的な問題点としては,以下の2つが深刻なように感じました。

一つは,原住民,植民者の経済成長が加速度的に進んであっという間にコントロール困難な規模になってしまうこと。もう一つは,司政官が不当なまでに無力であることです。

この時には,随分と改良手段について熱く議論したのですが,喧喧諤諤で結局,再戦に漕ぎ着けられませんでした。

ただ,それでもわたしはこのゲームは評価すべきところがあると思います。だからこそ,ここでこうして紹介しているわけです。その評価すべき点というのは,以下の諸点です。

国産のオリジナルゲームであり,そのシステムが独創的でモノマネではない。
題材である小説「司政官」のエッセンスを再現しようという全体的な枠組はできている。
部分部分のシステムはもっともらしくて良さそうなものが少なくない。

ただ,全体として一つのゲームとして見たときには,かなりプレイしにくいですし,バランスも良くないような気がします。そういう意味では,もっとテストプレイして練りこんで欲しかったところです。今となってはそんなことを言っても仕方がありませんので,そこは自分でやるしかありません。

ある意味では,このゲームの志を汲んで生かすという作業自体が司政官的であるとも言えます。そういう意味で,喧喧諤諤とこのゲームのシステムについて語り合った日の記憶は思い出深いものがあります。プレイそのものは上手く運びませんでしたが,プレイと感想戦から得られたものは,モチーフに合致した見合うものだったように思います。

多少,時の風化に伴う思い出の美化効果が入っているかも知れませんが‥‥。

関連ゲーム / 類似ゲーム

小説「司政官」を扱ったゲームは,他にはないと思います。

また,独創的なゲームで,あまり類似したゲームというのも市販品では思い当たりません。

ただ,アマチュアの創作ゲーマーであるFULL-NELSONブランドでは,このゲームを下敷きにして「組織の内部の葛藤(個人の利益と組織全体の利益)」を題材として
「ザ会社」というゲームを作成しました。プレイヤー各自がそれぞれ持ち場立場で異なった仕事をして利害が必ずしも一致しないながらも組織全体としての務めを果たすというゲームです。

モチーフが普通の会社(メーカー)になってしまいSFゲームではありませんが,インサイダーの葛藤というエッセンスの再現という意味では近いものができあがっています。ルールもずっと簡単で,プレイしやすいゲームになっています。

トップへのボタン

BQSF_GAME