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クリムゾンスカイ
Crimson Skies / FASA

一言で言えば‥‥

歴史のイフ,合衆国は分裂し鉄道の代わりに飛行船の時代が来た

飛行商船隊,それを襲う空賊,取り締まる防空隊,空に生きる者の時代

こんなゲーマーにお薦めしたい

今までの空戦ボードゲームは難しすぎると思う方に

アニメ映画「紅の翼」の世界に浪漫を感じる方に

プレイ人数 2−6人
プレイ時間 2−4時間
ルール難度 初級ウォーゲーム
デザイナー ジョーダン ワイズマン
入手状況 新作,入手可能

クリムゾンスカイの設定

クリムゾンスカイのボックス
 「クリムゾンスカイ」は,1937年のアメリカ大陸を舞台にしています。しかし,その状況は我々が知る1937年とは,大きく様相を異にしています。

 アメリカは一次大戦での痛手からヨーロッパからの大分離を標榜しますが,これは同時に構成諸州の合衆国からの分離傾向をも同時に生み出しました。
 分離主義は単純に拡大したわけではありませんが,機会に応じて伸張し,ついに1929年の恐慌を機会に火を吹きます。1930年にテキサスが合衆国からの決別を宣言し,これに対してホワイトハウスが有効な対策を打ち出せないでいると続いてカリフォルニア,カロライナ,ユタが離反しました。
 現在では合衆国は,19の諸勢力に分かれており,その関係は隣接するもの同士では往々にして準戦争状態にあります。

 多数の国境線による分割のため,鉄道の時代は終わりを告げました。陸の国境を越えて友邦へと物資を貿易することのできる飛行船が変わって貿易の主力となりました。大空の時代が到来したのです。
 我々の知る歴史では,飛行船を推し進めたドイツは,アメリカがヘリウムを輸出禁止にしたために浮揚ガスとして水素を使用せざるを得なくなり,爆発事故でこの技術は頓挫しました。しかし,このクリムゾンスカイの世界では,アメリカ大陸で飛行船が発達し,安全なヘリウムガスを利用して,実用技術として大成したのです。もちろん高価なヘリウムに手が出なくて,水素を使っている貧乏商人もいるようですが‥‥。

 しかし,物資を満載した船の行き交うところには,それを狙う良からぬ心得のものもまたいます。海賊も,いや空賊と言うべきでしょう。そして,空賊のあるところ,賞金稼ぎもまた集います。諸勢力は,自衛と,積極的防衛のため,航空隊を組織しています。

 かくて,大空に名誉と技術,そして生活を賭けた者たちの物語が始まったのです。

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クリムゾンスカイの斬新な操縦システム
クリムゾンスカイのマノーバー
空戦,ドッグファイトのゲームと言うのは,ヒストリカルシミュレーションゲームを中心に,往年はかなり人気のあったジャンルです。近年は,コンピューターのフライトシミュレーターに押されて減ってしまいました。

ボードゲームの空戦ゲームでは,一般に操縦が難しいという共通の難点がありました。機体運動を,航空力学的に妥当なものにするために,様々な制約がルールで示され,プレイヤーはそれを集積して毎ターンの移動を計画しなければなりませんでした。この作業は,好きな人にとっては苦ではないのですが,航空力学のイメージが湧かない人にとっては,煩雑で間違えやすいものでした。そして,往々にしてゲームの途中でルール上不可能な移動をしていたことが発覚して,取り返しがつかなくなったりしたものです。

ところが,このクリムゾンスカイでは,こうした操縦システムをコロンブスの卵的にすっきりとさせてしまいました。具体的には,従来のゲームでは「このターンは,速度を上げつつ右へ旋回して,あのヘクスへ行きたいけれども,それにはまず加速能力のリミット一杯まで加速すると速度がこうなるから,その速度だと右旋回するまでに何ヘクス直進しなければいけなくて,そうすると目的より前へ進みすぎるから,一つ加速を制限しておいて‥‥」というような個別の運動,その運動に対する制約を順に考えていって目的のヘクスへ辿り着く手段があるかどうかを検証しなければなりませんでした。

ところが,クリムゾンスカイでは,マノーバーテンプレートを見て,機体が今いるヘクスから見て目的のヘクスにどんな記号が書いてあるかだけ見ればいいのです。右下の端の飛行機のイラストがあるところが出発へクスになります。そこから見て,たとえばまっすぐ5ヘクス飛んだとしましょう。そのヘクスには,「5S」と書かれていて,前方,右前方,左前方の3つの方向に▲が付いています。これは,このヘクスへ移動するには速度5が必要で,その際にはストレートな操縦だけが必要で,最終的にこのヘクスで取ることのできる機体方向が3つのいずれかであることを示しています。

次ぎに少し違ったところで,3L3と書かれたヘクスを見てみましょう。このヘクスに進むには速度3が必要なわけです。Lというのは,このヘクスへ辿り着くには左旋回系の操縦をする必要があり,このために右側の翼に負荷が掛かることを示しています。最後の3は,速度3,左旋回系でたどりつけるヘクス群の中での通し番号です。

このヘクスの▲は,右前方,左前方,左後方の3箇所についています。したがって,このヘクスで移動終了する場合には,これらの方向のいずれかを向くことができます。逆に言えば,▲のついていない方向へ向けては移動を終了することができないのです。ですから,目的のヘクスで目的の方向を向いて移動を終われるかどうかは,このマノーバーテンプレートを見れば一目瞭然です。個別運動を色々と工夫して考えたりする必要はないのです。

この3L3のヘクスの左前方の▲には,線が一本付属しています。これは,左旋回により機体に負荷が1レベル掛かることを示しています。左後方の▲には二本付属してい2レベルの負荷が掛かることがわかります。右前方の▲には4本付属しています。これは左下方へスライドしながらターンする操縦で実現するのでしょうが,機体にかなり負荷が掛かることになります。

こうして目的のヘクス,目的の方向へと向くのに,速度がどれだけ,機体負荷がどれだけ必要かわかると,後は機体の性能と相談すればいいのです。このやり方であれば,今までの空戦ゲームよりも操縦ミスは格段に少なくなり,初心者でも安心して操縦できるでしょう。

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製作者のこだわりを感じさせるコンポーネント
クリムゾンスカイの冊子
このゲームのボックスを開けて眺めたとき,なによりも製作者のこだわりを感じます。

ゲームボックスに入っている三冊の冊子は,それぞれルールブック,シナリオブック,機体データブックなのですが,これらはすべて「エアーアクションウィークリー」という架空アメリカの1937年の航空週刊誌の体裁を取っています。

このため,シナリオ集(中央)とは言いながら,当代の大空の英雄列伝とも言うべき読み物になっていて,それぞれに1937年風のモノクロの英雄のフォトがちゃんと付いています。

発行元のFASAは,RPGのメーカーとして実績のある会社ですから,ここらへんの世界を創出するための小道具の作りこみはさすがです。
クリムゾンスカイの戦闘
左は,飛行船をめぐる戦闘場面です。
航空機のコマは,厚紙打ちぬきの立体組み立てになっていて,機体によっては6ピースのものもあり,手が込んでいます。

ここらへんの小道具の作り込みに,製作者のこの世界に対する思い入れを感じます。

左上のプラスチックの穴明きシートは戦闘でダメージを記録するのに使うダメージテンプレートです。弾薬の種類ごとに大きさと形の異なる穴が開いています。

クリムゾンスカイの難点

ちなみに,このゲームは1998年のオリジン賞SF/Fボードゲーム部門を受賞しました。製作者の熱意の感じられる作りと,斬新なマノバーシステムによるプレイアブルな空戦ゲームという内容とを考え合わせれば,相応でしょう。

ただ,このゲームには難点もあります。それは,基本部分以外のルールや,シナリオ特別ルールなどのところになると,記述が少なすぎてプレイ上の判断に支障が出るようなところがあるのです。けれども,誇り高き大空の戦士たちであれば,きっとそこらへんは紳士淑女的に解決できることでしょう。

また,もう一つの難点は,航空機のコマを組み立ててしまうと,片付けるのに困ってしまいます。同時にこのゲームは,機体移動のプロットシートを大量に消費するので,これも合わせると最初の箱には収まりきらなくなってしまいます。購入を検討している方には,もしプレイするのに航空機を組み立てるつもりなら,一種のミニチュアゲームと思ってもらっておいた方が良いように思います。

関連ゲーム / 類似ゲーム

航空力学の働く大気圏内の空戦ドッグファイトのSFゲームと言うのは,ありそうな気がするのですが,思いつきません。

厳密には大気圏内ではないのではないかという気もしますが,マノーバー的に航空力学風のものとしては,パシフィックリムの
「スペースナチス フロムヘル」があります。

宇宙空間戦闘でも良ければ,ゲームの感覚としてはウェストエンドのスターウォーズ空戦ゲーム
「スターウォリアー」が近いかも知れません。

あと戦闘システムとしては,SJGの傑作,自動車決闘ゲーム
「カーウォーズ」が良く似ているような気がします。

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